第18話 オリジナルパン
「まずは緑色の方からだね。具材はなにがいいと思う?」と店主が聞く。
「そうですね。アスパラガス、ブロッコリー、ほうれん草とか」と僕が言う。
「ほうれん草はダメだな。焼くと縮むし、友久は刺したいんだろう?ほうれん草は刺すのは無理だ」と豊心君。
「ではほうれん草をやめてカリフラワーにしますか?」と僕が言う。
「カリフラワーなら芽キャベツはどうだい? 半分に切って乗せる感じでどうかな?」と店主が言う。
「それでいいと思います」
フォカッチャの生地を作っている間に、野菜を下茹でする。
そしてフォカッチャに卵を塗りつやをだして3種類の野菜を生地に押し込むように置いていく。
焼き上がると、食べられるミニチュア畑が完成した。
3人で完成したパンを眺める。
「これはガーデン・フォカッチャのようでもあるが違うな。ガーデン・フォカッチャは、野菜を平面的に配置して、花や植物の絵を作る。しかしこれは立体的だ」と豊心君。
なるほど、似たようなのはすでにあったのかと僕は思った。
「見た目はすごく良いね。ただ……」と店主が言う。
「ただ?」
「食べづらそうだ」
言われてみるとそうだ。
特にアスパラガス。
これは食べにくそうである。
僕はがっくりと項垂れる。
「でも発想は悪くない。面白いと思う。では次は天使の輪だね」
そう言って生地をこねて輪っかにしている。
それをオーブンで焼きだした。
焼いている間に店主が豊心君に聞く。
「君はどうだい?」
「そうだな。すぐに浮かんだのはプチパンだ。例えば6個ぐらい作りカップに入れて提供。中身を全部違う味にする。チーズや生クリームに卵フィリングにチョコレートなど。生地の配合は……」
「それもいいねえ」
「女性客は、一度にたくさん食べるより、少しずつ色んな味を楽しみたいという人も多いんだ。カップに入れることで手軽に持ち運べるのもポイントだ」
僕はさすが豊心君と感心した。
「ただそれだと何が入っているか中身がわからない」と店主。
「それでいいじゃないですか。食べるまでの楽しみですよ。中身は定期的に変えてもいい。ただアレルギー表示だけは忘れずに」
店主は先ほど言われた配合でパン生地を作り出している。
そうしていると、オーブンの中のパンが焼き上がり、2つのリングパンが出来た。
片方にはすでにチーズが乗せてあり、溶けだしている。
もう片方にはカスタードクリームを塗るのだろう。
冷ましている間に、プチパンをオーブンへ。
「しかし2人ともすぐに思い浮かぶなんてすごいな」
「俺は経験があるからな。しかし彼はひょっとしたら、そういうのがあるのかもしれない」
僕は豊心君に褒められたのに驚いた。
天使の輪が2つ出来た。
「天使の輪というには見栄えがもう1つだな」と豊心君。
「そうだね。ただチーズとクリームを塗っただけって感じだね」と店主。
またもや僕は項垂れた。
一方プチパンの方は良い感じである。
持ちやすさ、見た目の良さ、そしてワクワク感がある。
これで決まりだろう。
「名前を考えてくれないか」と店主が豊心君に聞く。
「六つの恵み、六つの祝祭、六つの至福。好きなのでどうぞ」
名前は六つの至福に決まった。
その後は真奈美さんが店主と話し合っている。
「おめでとう豊心君」
しかし豊心君は不満げであった。




