第16話 取材
文化祭が終わってしばらく経ったあと、真奈美さんが新聞のようなものを見せてきた。
○○区報。
東京の○○区の広報新聞みたいだ。
僕がページをめくると、僕らの高校の文化祭のことが載っていた。
「○○高校の文化祭は盛況のうちに終わった。各部活やクラスの出し物は個性豊かで、どこも賑やかだった。筆者が特に注目したのはパン研究会である」
「……あ」
「どうしたの?」
「文化祭の時、僕たちを見ていた人がいましたよね」
「いたわね」
「もしかして……」
「そういうこと」
記事を見ていく。
「パン研究会はわずか3人で文化祭に挑んだのである」
「うん?3人?」
「パンは調理実習室で作り出来立てを販売。しかも筆者が聞いたことのない珍しい外国のパンを販売していたのだ。そして2日間列は途絶えることが無く、お客様の笑顔が溢れていた。代表者の真奈美さんのインタビューを紹介する」
「真奈美さんが代表者?」
「今回、3人だけでパンを作って販売することは、私たちにとってチャレンジでした。しかし、皆の意識が高く、成功させたいという意欲によって成し遂げたのです」
「どういうことだ?」
「筆者は3人の努力と素晴らしい熱意を感じました。このような若者の活躍は、この街で働く人々にも刺激になるでしょう」
「真奈美さんこれ、どういうことですか?」
「書いてある通りじゃない」
「いやいやいや」
「私たちは成功した。記事にもなった。こんな素晴らしいことはないじゃない」
「だけどさあ」
これまで豊心君は一言も発していない。
怒っているんだろうと思って見てみると、有名店のパンの袋を片手に、パンを食べていた。
だめだ。
この男はすでに買収されていた。
「もういいです。これで」
と僕は諦めた。
「話はこれで終わりじゃないのよ」
「というと?」
「この記事を見た商店街のパン屋が、新商品を共同開発しないかと言ってきたの」
「本当か」と豊心君が食いついた。
「引き受ける、でいいわね?」
「もちろんだ」と豊心君。
「では、連絡をしておくわ。今から商品を考えておくことね」
豊心君はガッツポーズをしている。
「豊心君。どうするの?」と僕が聞く。
「まだ、相手の話を聞いていないからわからない。既存のパンなのか、それともオリジナルなのか。俺としてはオリジナルを作ってみたいがな」
「オリジナルってそう簡単にできるの? 分量とか重要なんじゃないの?」
「まあそうだな。今から考えるか。行くぞ友久」
そう言って、さっそく案をノートに書きだしている。
僕は既存のパンにしてもオリジナルにしても楽しみだと思った。
一体どんなパンになるのだろう。




