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第14話 スペインの公現祭に食べるパン

夏休みの終わりに近くなった日、家庭科室で豊心君が祭壇を見つめている。


「豊心君どうしたの?」


「なにかが足りない」


「なにかって?」


「訓示というか戒律というか」


「戒律?」


豊心君が真奈美さんにお願いをしている。


しばらく話し合いがあり、その後真奈美さんが許可をだしたようだ。


豊心君が喜んでいる。


「なにを頼んだの?」


「戒律だ」



3日後、部室に行くと豊心君が真奈美さんの使いと思われる人に指示を出している。


「もう少し右で。そう。そこ」


見ると額縁になにか書かれていた。


第一戒 パンを粗末にしてはならない。


第二戒 パンをまたいではならない。


第三戒 パンを焼く前には手を清めよ。


第四戒 パンは必ず両手で分けよ。


第五戒 最初の一切れは神に返せ。


第六戒 焦げたパンを捨ててはならない。


第七戒 パンを逆さに置いてはならない。


「これはなに?」


「パンの七戒だ」


「えっ?」


「言わばパンを愛する人の心得だ。友久も守るのだぞ」


「あの最後のパンを逆さにおいてはならないってのはどういう意味?」


「昔からそう決まっている」


「いや、意味わからない」


僕たちのやり取りを聞いていた真奈美さんが「そろそろ作りなさい」と豊心君に言う。


豊心君がパン作りを始めた。


強力粉に砂糖、塩にドライイーストといつもの材料に、卵、牛乳、バター、オレンジ果汁にオレンジの皮を混ぜてこね、ラップをし発酵させる。


その間に豊心君がこのパンの説明をする。


「スペインのクリスマスシーズンの大きな締めくくりが1月6日の公現祭。そして公現祭で食べるのがロスコン・デ・レジェスという甘いパンだ」


「なるほど。公現祭に食べる特別なパンなんだね」


「それで中には、小さな陶器人形と乾燥ソラマメが隠されていることも特徴だ。陶器人形が当たった人はロスコンについている王冠をかぶってその日は王様になれ、ソラマメが当たるとロスコン代金を持たなければいけないと言われている。まあ今回ソラマメは入れていないけどね」


「では陶器人形は入れてあるんだね」


「そうだ。誰に当たるかはわからない。あと本来はオレンジフラワーウォーターを使用するがオレンジ果汁で代用した」


「オレンジフラワーウォーターっての買えばよかったのに」と真奈美さん。


「忘れてました……」


「さきほど掛けた額縁外す?」


「それはご勘弁を」


そうしていると発酵が終わったのでガス抜きをして、リング状にしてオーブンで焼く。


その後はサワーチェリーやオレンジピールなどをトッピングして完成。


そして3等分にして運命の時間だ。


「あっ」と真奈美さんが声をあげる。


そして陶器の人形を取り出す。


知ってました。


こうなることを。


「私が王様ね」


いつもじゃんと僕は思った。


「では文化祭を成功させなさい」


あまりにも普通で逆にびっくりした。


来週から2学期が始まる。


そしてすぐに文化祭だ。

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