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居候(ニート)の野望を追い求めて

「謁見の間に残された死んだような静寂は、

ナイフで切り裂けそうなくらいに濃密だった。

俺は頭の上の金の王冠の位置をパッと直し、

目の前の強大な人間の支配者たちを完全に冷静な、恐怖のない眼差しで真っ直ぐに見据えた。


「俺の中にまだあんたたちに対する敬意が残っているうちに、本題(メイン・トピック)

に話を戻そうじゃねぇか」


俺の声は滑らかだったが、暴走族の頭(リーダー)としての冷徹な重みを湛えており、

室内のざわめきを一瞬で完全に消し去った。


「これ以上、余計な揉め事(コンフリクト)

を起こす気はねぇんだ。何しろ、

俺は外交和平協定のためにここに来たんだからな」


勇者エゾは両拳を白くなるほど強烈に握り締め、その顔を純粋な怒りで激しく歪ませた。


「テメェ、さっきのあの侮辱を、

そのまま何事もなかったかのように不問に付すとでも思ってんのかよ!?」


「だから、それでお互い様(フェア)

だって言ってるんだろ」

俺は暢気に、完全に無関心な様子で肩をすくめてみせた。


「そこまでだ、エゾ」

皇帝レジナルド・フォン・ヴァレリウス七世の容赦のない冷徹な声が会話を強引に遮り、

それ以上の反論を完全に許さなかった。


エゾは激しい、

怒りに満ちた舌打ちを室内に響かせた。

「チッ」


あいつは俺に向かって激しい、屈辱に満ちた表情を送りながらも、不承不承といった様子で黄金の玉座の後ろへと引き下がった。だが、その目には未だ絶対的な殺意の炎が燃え盛っていた。皇帝レジナルドは上体を前方へと傾け、巨大な円卓のド真ん中に、古の付与魔術が施された大規模な大陸の地図をパッと広げた。


「これより、己の血を以て、

自国の領土へと署名(スタンプ)を刻んでもらう」


俺に迷いはなかった。指先を小さく突いて血の一滴を絞り出すと、魔王国のドス黒い国境のド真ん中へと真っ直ぐに署名(スタンプ)を刻んだ。大陸中の最高支配者たちも一人ずつその場に起立し、己の血をそれぞれの故郷の領土へと刻んでいった。


「次に、自らが和平を望む国家の領土へと、

その血の署名(スタンプ)を刻むがよい」皇帝レジナルドが次の指示を下した。


全ての支配者たちが一斉に立ち上がり、巨大な円卓の周囲を移動しながら、自らが和平条約を結びたいと願う他国の領土へと血の署名(スタンプ)をパパッと刻んでいった。今後の余計な頭痛の種を完全に排除し、平穏なニート生活を確実に手作業で構築したい俺は、当然の如く地図の上の全ての国家の領土へと血の署名(スタンプ)をパパッと刻み込んだ。だがしかし、俺のすぐ目の前では、魔王国に対する絶対的な政治的敵対行為が完全に無言のまま実行されていたのだ。大陸の三つの超大国――ヴァレリウス帝国、ケロスのエルフ王国、そして北の国の人間の王国は、魔王国の領土に対して血の署名(スタンプ)を刻むことを完全に拒絶していた。


だが、俺はその事実には一から十まで全く気付いていなかった。何しろ、俺の意識は円卓の完全に端っこの方で、ミクロのために小さな玩具の玉(ボール)をペロペロと転がして遊んでやることに完全に没頭していたからだ。隣にいたイナも完全にキャパシティをオーバーしており、国際平和の最高峰のサミットをただの家猫の遊び場(プレイグラウンド)に私物化している我が主の姿を、ドン引きの白目の顔で見つめることしかできなかった。この無言の裏切りにその場で明確に気付いたのは、吸血鬼のヴラド長老と、獣人族のアロン国王の二人だけだった。二人は静かに、すべてを察した視線を一瞬だけ交わし合ったが、完全に沈黙を維持することを選択した。


最後に皇帝レジナルドが起立し、公式の閉会の挨拶を述べて、集会は正式に終わりを告げた。諸国の支配者たちが席を立ち、巨大な円卓から離れ始めたその瞬間、俺はナスの両腕の中で長旅の寝汗をかいて眠っていたミクロを強引に引っ掴むと、調理済みの最高級の肉料理が山のように積み上げられたままの巨大な机のド真ん中へとパパッと投げ飛ばした。


あの駄猫は眉一つ動かさなかった。その四本の足が高級木材に着地した瞬間、あいつは目の前にあった魔獣のロースト肉に猛烈な勢いで喰らい付き、飢えた獣のように肉の塊をパパッと平らげ始めたのだ。猫がバイキングを猛烈に喰い散らかしている間、俺は獣人族のあの山のような巨体の戦士が出口に向かって歩き出すのを見付けた。俺は前へと一歩踏み出し、軽く咳払いをした。


「あー、その、すみません、獣人族の国王様」


アロン国王はその巨体をゆっくりと振り戻し、

その傷だらけの顔に野獣のような豪快な笑みをパッと浮かべた。


「おぉ、魔王(マオ)か!

俺のことはアロンと呼んでくれ」


「じゃあ、こっちもエインでいいよ」


俺は暢気に顎を引いた。


「それで、アロン、俺に何か用(ビジネス)か、

エインくん?」


俺は少しだけ上体を傾け、周囲に聞こえないようにその声を蚊の鳴くような低い囁き声へと落とした。


「いや、そのな……あんたが高レベルの身体強化スキルを使いこなしてるって噂を聞いたんだ」


アロンは毛古い眉をピクッと上げ、その低い聲音をさらに落とした。


「あぁ? それが一体どうしたんだ?」


「実を言うと、

俺はまだ攻撃系のスキルを一つも持ってねぇし、

遠距離の魔法攻撃(ロング・レンジ・マジック)

すら一から十まで全く使えねぇんだ」


俺は首の後ろをさすりながら、

力のない苦笑いを浮かべて正直に白状した。


「だから、もし良ければ、近いうちにあんたの国に遊びに行かせてくれないか? そこで、あんたから身体強化スキルの正しい使い方を直接手作業で教わりたいんだ(特訓したいんだ)」


一瞬の間、アロン国王はその場で完全に硬直した。だが次の瞬間、あいつは帝宮の天井を激しく振動させるほどの、凄まじい地鳴りのような大爆笑を爆発させたのだ。


「信じられん! ハハハハハハ!

新しい最高魔王様が、

攻撃魔法を一つも使えんだと!?」


「シーッ! 声がデカすぎるんだよ、ふざけんな!」俺は本気で焦って、周囲の近衛兵たちが不気味にこちらを凝視してくるのを目を限界まで丸くしながら両手をぶんぶんと振り回してあいつを黙らせようとした。


「あぁ、悪い悪い、俺の落ち度だ!」


アロンは目から笑い泣きの涙をパパッと拭いながら、喉の奥でクスクスと笑い続けた。


「だけどよ、マジで笑いが止らねぇんだ。

この俺が魔王様に身体強化の基本を教える

(特訓する)なんて、

最高に滑稽な喜劇じゃねぇか! あぁ、

お前ならいつでも獣の国(けもののくに)

へ歓迎するぞ、エインくん。何しろ、

俺はお前に激しい興味を抱いたからな」


「そっちもお互い様(フェア)だ。

獣人族ならいつでも魔王国へ歓迎するぞ」


俺の唇にも、

冷徹で不敵な笑みがパパッと浮かんだ。


「それじゃあ、今後の協力関係(ワーキング)

を楽しみにしてるわ」


「あぁ、そっちもお互い様(フェア)だ。

それじゃあ、お前が我が国へ遊びに(特訓に)

来るのを首を長くして待ってるぞ!」


アロンは豪快に咆哮し、

力強く頷くとそのまま去っていった。


俺は心の中でホッと一安心の溜め息を漏らし、

部屋のド真ん中を振り返った。


「よし、ミクロ、もう外に出るぞ。

この首都の街並みを少しだけ探索

(エクスプロール)しようじゃねぇか」


ナスが即座に前へと進み出、あの黒猫をその両腕の中に慎重に抱きかかえた。ミクロの胃袋は、純粋な暴飲暴食のせいで視覚的に限界までパンパンに膨らんでおり、その四肢は執事の腕の外へとなす術もなくダランと垂れ下がっていた。


「おい……マジで言ってんのかよ」

俺は死んだ魚の目で、

完全に超然としている猫を凝視した。


「テメェ、自分の足でまともに直立することすらできねぇじゃねぇか」


俺は再び巨大な机の上へと視線を戻し、その瞬間完全に硬直した。ものの十分前には最高級のロースト肉や異世界の飯が山のように積み上げられていたはずの高級な円卓は、あいつが一瞬で喰い散らかしたせいで、カケラほどの残飯もないただの綺麗な空き皿の山へと変貌していたのだ。俺は深い溜め息を漏らした。


「まぁ、いいか。

テメェが完全に満足できたならな」


俺たちがついに宮廷の巨大な石の門の外へと足を踏み出し、昼下がりの鋭い空気の中に飛び出した瞬間、俺はその胸から死ぬほど重たい溜め息を大きく漏らした。


「あぁ……やっと終わった。これでようやく、

俺の待ちに望んだ寝床(ベッド)

へとバタンと倒れ込めるわ」


「あの……エイン様」

イナが俺のすぐ隣から、

その高貴な佇まいからは想像もつかないほど小さな聲音で静かに言葉を挟んできた。

大理石の階段をゆっくりと下りながら、

彼女はその目を伏せていた。


「ん? どうしたんだ?」

俺は隣の宰相の顔を盗み見た。


「あ、あの、先ほどの集会でのことです……」

イナの美しい目がゆっくりと上げられ、

その奥には深遠な、

感情に満ちた絶対的な熱い光が宿っていた。


「人間どもが、私たちの国を好きなように侮辱

(インサルト)

するのを……ただ黙って見ていずに、

真っ向から叩き潰してくださり、

本当にありがとうございました」


「いや、気にするなよ。

そんなのただのちっぽけな私事

(スモールシング)だろ」


「いいえ、

それは決してちっぽけな事ではございません」

イナは力強く言い返した。


俺は青い空を見上げ、

喉の奥でクスクスと軽く笑った。


「まぁ、あんまり深く考えるなよ。一国の頭

(リーダー)ってのは、自分の領民を今後の頭痛の種から守るためにそれくらいのことは当然こなすもんだろ。それに、あんたたちが俺たちをここで不自由なくニート(居候)させてくれることに対する、当然のお互い様(フェア)の対価だわ」


「あなた様はニート(居候)

などではございません、エイン様」

イナは深く、尋常ではない敬意に満ちた語調(トーン)で力強く頷いた。


「その通りです、エイン様」

ナスが後ろから真剣な表情で会話に介入した。


「ミクロ様も、我らの主(ロード)としての役割(ロール)をしっかりと全任されております!」


「役割(ロール)を……?」

俺はナスの両腕の中で小さな金の王冠を横に傾けたまま、暢気にスースーと寝汗をかいて爆睡している猫の丸っこい胴体を死んだ魚の目で見つめた。

(あいつ、ただ国際サミットの最高級の飯を一人で丸ごと私物化して喰らい尽くしただけだぞ。)


「これより先、私は全身全霊を捧げて、

あなた様に生涯お仕えいたします」

イナは腰から深く、優雅な一礼を捧げた。


「私もです!」

ナスも執事としての真剣な眼差しを向けながら地鳴りのような声を響かせた。


「私は即座に自身の戦闘力(パラメータ)

をさらに鍛え上げ、ミクロ様をあらゆる現実

(トラブル)

から死守することをここに誓います!」


「まぁ、なんでもいいや。

今後の活躍を楽しみにしてるわ」

俺は両手を伸ばしてストレッチをしながら微笑んだ。中庭の石畳の向こうから、漆黒の軍馬たちの激しい鉄の蹄の音がガタガタと響き渡る。


俺たちの目の前に壮麗な黒い馬車がパッと到着したその瞬間、俺は心の中から純粋な安心感を実感していた。あの外交の罠は完璧に生き延び、獣の国との新たな協力関係(ワーキング)の手作業の基盤も構築できた。俺の平穏な引きこもり生活の夢は、

未だ完全に墓場に埋められちゃいねぇ。」

読者の皆様、お久しぶりです!ここ数日、

体調を崩してしまっていたのですが、

無事に回復いたしました。

更新が遅くなってしまい大変申し訳ありません。


今回は新しいエピソードの更新をお届けします。

楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!

もしよろしければ、この作品をブックマーク

(お気に入り登録)していただけると、

今後の執筆の大きな励みになります。

最後まで読んでくださり、

本当にありがとうございます。

皆様の応援に心から感謝いたします。


それでは、また次回の更新でお会いしましょう!

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