諸王の会合
「壮麗な黒い馬車は帝国の首都の巨大な石門を滑らかに通過し、目が赤く輝く四頭の魔界の軍馬の鉄の蹄が、一寸の濁りもない石畳の通りに凄まじい音を立てて響き渡っていた。俺は動き続ける馬車の窓にぴったりと寄りかかり、人間の国の賑やかな、活気にあふれた街並みを完全に物深く見つめていた。すべての景色が、まるで精巧なファンタジーの挿絵がそのまま現実になったかのように美しく、魔王国のドス黒い黒曜石の建物とは完全に一から十まで大違いだった。
「まあ、この旅が上手くいくといいんだが。
それに、人間の国がどんな風になっているのか、
この目で一度見てみたいしな。
今まで一度も行ったことがないんだから」
俺は穏やかに、少しだけ興奮した声を漏らしながらボソッと呟いた。
「実質、かなり凄い場所じゃねぇか」
俺たちの束の間の観光は、馬車が宮廷の巨大な正面玄関へと到着した瞬間に終わりを告げた。俺の足が中庭の一寸の濁りもない地面に降り立ったその瞬間、頑丈な鎧に身を包んだ一人の帝国の近衛兵が即座に前へと進み出て、完璧な、直立不動の軍礼を捧げた。
「魔王国の気高き支配者様、ヴァレリウスの帝都へようこそおいでくださいました」
近衛兵の声は、
公式の規律に満ちて大音量で響き渡った。
「大陸の他の支配者様方は、
すでに最奥の聖域へと集結しております。どうぞ、私めがあなた様と使節団の皆様を、サミットの会場へと真っ直ぐにご案内させていただきます」
「あぁ、案内を頼む」
俺は心の冷静さを保とうと頷きながら言い返した。
その近衛兵は鋭く反転すると、黄金の装飾が施された巨大な廊下の奥へと俺たちを案内し始めた。その頃、ヴァレリウス神聖帝国の巨大な謁見の間の中では、重苦しい、息の詰まるような静寂が、室内に広がる巨大な円卓を完全に包み込んでいた。大陸中の名だたる六人の国家の支配者たちが、すでにその壮麗な椅子に腰掛けていた。
「皇帝陛下、並びに諸国の支配者様方に緊急の報告をいたします! 魔王が正式に城に到着し、
現在こちらへ向かっております!」
巨大な円卓の完全に端の方に座っていた人間の支配者の一人が、その瞬間机をドンと叩き、不快感に顔を歪ませた。
「あの魔王め、
我らをここまで待たせるとは何事だ!?
国際和平の集会をここまで私物化し、
虚飾の態度で臨むとは、一体何様のつもりだ!?」
どうやら、
諸国が首を長くして待っていた最後の居残りは、
完全に俺とミクロのことだったらしい。
黄金の玉座に威風堂々と腰掛けていた皇帝、レジナルド・フォン・ヴァレリウス七世は、ただ静かにその計算高い冷徹な目を細め、入室を許可する無言の顎クイを一つしただけだった。
謁見の間の巨大な観音開きの扉が、左右に重々しい音を立てて開かれた。俺が隣に優雅な佇まいのイナを連れ、背後にナスを従えて一歩足を踏み入れたその瞬間、室内にいた全ての支配者たちの鋭い視線が一斉に、暴力的なまでの質量で俺たちへと突き刺さった。世界中の最高権力者たちから放たれるその凄まじい社会的圧力の重さに、俺の全身からは一瞬で冷や汗がびしょ濡れにかき始め、心臓が肋骨の裏で激しく鐘を叩き始めた。
皇帝レジナルドの玉座のすぐ後ろには、周囲の空間を完全に圧し潰しそうな、凄まじい気配を放つ一人の男が直立していた。あいつは伝説的な付与魔術が施された一寸の汚れもない白い鎧をまとい、その全身からは、カケラほどの羞恥心もない絶対的な自信が漂っていた。
その男は不敵な笑みを浮かべると、
俺の存在を完全にスルーして、
隣にいる宰相の姿へとその目を向けた。
「あぁ、久しぶりだな、イナ」
あいつの声には、これでもかと見下したような、
暢気な声音が滲み出ていた。
「で、あんたたちの新しい魔王とやらはどこにいるんだ? まさか、ただの野良犬でも連れてきたわけじゃねぇだろうな?」
イナの目はその瞬間、激しい怒りの炎を宿して鋭く細められ、その優雅な表情は一瞬で氷のように冷たく凝固した。
「本当に……お久しぶりですね。
人類最強の勇者、エゾ」
俺は顔の表情を完全に消し去った白目の顔のまま、隣のイナに向かってボソッと囁いた。
「おい……あいつが、人類最強の勇者なのか?」
「はい、あの男にございます、エイン様」
イナは声音を引きつらせ、
その顎を固くしながら鋭く囁き返した。
俺は再びその伝説の戦士へと視線を戻したが、あまりの気分の悪さに胸がムカムカとしてきた。(うわぁ……あいつの全身から、これでもかってくらいの筋金入りの傲慢なオーラが漂ってやがる。自分が世界の中心だと勘違いしてる、あの死ぬほど鬱陶しいエリート気取りの奴らと完全に同じタイプだわ。)
この気まずい自己紹介をさっさと終わらせるために、俺は軽く右手を上げた。
「あー、一応……俺が新しい魔王だけど」
一瞬、室内が死んだような静寂に包まれた。だが次の瞬間、勇者エゾは天井を激しく振動させるほどの、爆発的な大爆笑を爆発させたのだ。
「一体何の冗談だそれは、イナ! ハハハハハハ!」エゾは完全に俺を嘲笑うように指を差し、その目から笑い泣きの涙をパパッと拭いながら叫んだ。
「人間だと!? どこにでもいるただの普通の人間が、あんたたちの最高魔王だって言うのか!? 魔族の国はついに化け物の弾切れでも起こしたのか、それとも国境の辺りで適当な農民でも拾ってきたのかよ!?」
勇者はカケラほどの理性もなく笑い続けていたが、俺はわざわざ反応する気力すら起きなかった。
ただ完全に死んだ魚の目で、
あいつをドン引きの顔で見つめた。
「まぁ、それは否定しねぇけど」
巨大な円卓の中ほどに腰掛けていた、鋭い爪と野獣のような特徴を持つ巨体の男が、その太い腕を組んだ。獣人族の国王はその計算高い目を細め、地鳴りのような低い聲音を室内に響かせながら、嘲笑う戦士を睨みつけた。
「勇者よ、物事を表面だけで軽率に判断するものではない。本物の戦士というものは、最も恐るべき化け物ほど、最も脆く見える器の裏に隠すものだと知っているものだ」
「あぁ、悪い悪い、俺の落ち度だ!」
勇者エゾは素っ気なく手を振りながら、喉の奥でクスクスと笑い続けた。
「だけどよ、マジで笑いが止らねぇんだ。
最高に滑稽な喜劇じゃねぇか」
「そこまでだ」
皇帝レジナルドの容赦のない冷徹な声が、
一瞬にして勇者の笑い声を完全に叩き潰し、
謁見の間に絶対的な規律を戻した。
「席に着くがよい、魔王。
これ以上集会を遅らせるわけにはいかん」
俺は心の中でホッと一安心の溜め息を漏らし、
俺たちのために用意されていた黒曜石の高級な空席へと足を向けた。さっさと席に座って、
空気のように気配を消そうとしたその時だった。
俺のズボンが座席のベルベットに触れるよりも早く、ナスの両腕の中で、長旅の寝汗をかいていたミクロが突然ガバッと目を覚ました。そしてあの駄猫は、外交円卓のド真ん中にこれでもかと贅沢に並べられていた、調理済みの最高級の肉料理や異世界の飯の匂いを、その鼻先でパパッと完璧に嗅ぎ付けたのだ。
国家の最高外交など一ミリも気にする様子もなく、あの黒猫は突如としてナスの腕の中からひょいと前方へ飛び跳ねた。トォン!
ミクロは巨大な円卓のド真ん中へと完璧に着地すると、金の皿を暢気に踏みつけ、目の前にあった巨大な魔獣のロースト肉に猛烈な勢いで喰らい付き、飢えた獣のように肉の塊をパパッと引きちぎって平らげ始めたのだ。
俺の顎は完全に、大理石の床に激突する勢いで外れかけた。俺の顔は一瞬で、完全なる大恐慌へと変貌した。(おいおいおい、嘘だろこれ!? 世界最強の支配者たちが集まる超緊張状態の国際サミットのド真ん中で、うちの猫が野良のアライグマみたいにバイキングを私物化して巨大な机の上を喰い散らかしてんじゃねぇよ! 飯が始まる前に国家反逆罪で処刑されちまうわ!!)
室内にいた全ての国家の支配者たちが、その目の前のあまりにも不条理な光景に、目を限界まで丸くして完全に硬直した。
「ミクロ! ダメだろそれ!!」
俺はパニックの声をあげて猛烈に突進した。
あいつの丸っこい胴体を力ずくで引っ掴んで、
喰い散らかされていた皿から強引に引き離すと、
後ろで待機していたナスの両腕へとパパッと投げ返した。
俺はすぐさま巨大な円卓の方を振り返り、シャツの襟元を冷や汗でびしょ濡れにしながら、猛烈な勢いで頭を下げた。
「あ、あの、皆さん本当に申し訳ありません!
俺の相棒の不調法な振る舞い、心からお詫び申し上げます! その、こいつはただ……飯のことになると見境がなくなっちまうだけで!!」
獣人族の国王は、ナスの腕の中で小さな金の王冠を載せている猫を凝視し、その毛深い眉を深遠な困惑に歪ませた。
「一体全体、その猫は何なのだ? なぜ、
最高峰の国際集会の場に、
そのようなただの家猫を連れてきたというのだ?」
俺は首の後ろをさすりながら、完全に壊れた俺たちの現実をなんとか説明しようと、力のない苦笑いを浮かべた。
「あー、その、実を言うと……俺たち二人で、
一つの魔王んです」
勇者エゾは一瞬だけ完全に硬直したが、次の瞬間、先ほどよりもさらに巨大な、爆発的な笑い声をあげ、皇帝の玉座の背もたれをドンドンと叩いた。
「腹が痛ぇ! ハハハハハハ! おい、
もう勘弁してくれ、これ以上その滑稽な戯言には付き合いきれん! ハハハハ! 人間と強欲な飼い猫が、魔族の国の最高支配者だと!? 大陸の歴史上、最も最高に笑える冗談じゃねぇか!!」
「エゾ。そこまでだ」
皇帝レジナルドの容赦のない、絶対的な威厳に満ちた声が鉄槌のように室内に響き渡り、一瞬にして勇者の笑い声を完全に消し去った。皇帝は鋭い、計算高い冷徹な眼差しで室内全体を凝視した。
「これより、正式に本題を開始する。外交和平協定の具体的な条件についての協議を始めるぞ」
俺は頭の上の王冠の重みを感じながら、黒曜石の椅子へとぐったりと崩れ落ち、諸国の支配者たちが地図を広げ始めるを見つめながら、長い、長い絶望の溜め息を漏らすのだった。(この次元ごと丸ごと返品してぇわ……。俺の平穏な暮らしは、始まる前に完全に墓場に埋められちまったよ。)」
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