スキルの修得
その壮麗な椅子に腰掛けていたのは、鉄の意志を持つ皇帝、レジナルド・フォン・ヴァレリウス七世。彼は表情を完全に消し去った冷徹な眼差しで、眼下の伝令を見下ろしていた。そのすぐ隣には、優雅でありながらも緊張した佇まいで皇后が座っていた。
「皇帝陛下! 国境の追跡魔導陣より、
緊急の報告がございます!」
斥候の声は、恐怖と焦燥で激しく震えていた。
「昨晩、魔力検知グリッドが天変地異レベルの異常電力を感知いたしました。ダークエルフの戦場跡に3000年以上もの長きにわたって停滞していた**魔素**が、完全に消滅いたしました!それだけではございません、国境内部の密偵により最悪の事実が確認されました……。魔族どもが、正式に新たな魔王を戴冠いたしました!」
広大な謁見の間全体が息を呑み、皇帝の激怒の命令を待った。だがしかし、皇帝レジナルドはゆっくりと黄金の玉座に深く寄りかかり、その唇に冷徹で、計算高い笑みを浮かべただけだった。
「そうか」
皇帝は完全に冷静な、しかし骨の髄まで凍りつかせるような絶対の自信を湛えた声で言葉を発した。
「魔族どもに、
彼らを支配する新たな支配者が現れたのは、
良いことではないか」
彼はすぐ隣に座っている妻へとゆっくりと顔を向け、その目を容赦のない鋭い細めた。
「何しろ、彼らの新たな支配者が、
先代のように余計な混乱
を起こさないことを願うばかりだ。
もし起こすというのであれば、先代と全く同じ運命を辿ることになるだけだからな」
皇后は無言で、厳かに深く頷いた。
言葉にされなかったその絶対的な脅威が、
帝宮の静まり返った空気の中に、
重々しく垂れ込めていた。」
「黒曜石の城壁の向こうから朝一の太陽がゆっくりと昇り、首都の静かな街並みを温かく照らし出していた。城の中にいる俺は、ついに一筋の希望の光を感じていた。俺の限界なきエネルギーは完璧に核へと抑え込まれ、ミクロの気配も完全にゼロにロックされた。これでようやく、俺の待ちに望んだニート生活が始まるはずだ。
「よし、ルーンちゃん」
俺は両手を伸ばしてストレッチをしながら、
恥ずかしがり屋の小さな魔族の少女と一緒に広い廊下を歩いた。
「書物庫へ案内してくれ。
もし自分の部屋を自動で掃除して、飯を勝せてに運んできてくれる魔法が見つかったら、
俺の人生は完全に大成功だ」
ルーンは分厚い魔導書を胸元にぎゅっと抱きしめ、その顔を一瞬で真っ赤に染め上げながら、
モジモジと俺の顔を盗み見た。
「あ、あの……はい、エイン様! 宮廷の書物庫には数千冊もの古の書物が並んでいます。お二人のその特殊なステータス画面を解明できる記録が、
きっと見つかるはずです」
俺たちが巨大な書物庫に足を踏み入れた瞬間、
その非現実的な垂直のスケールに俺の顎は外れかけた。巨大な本棚が影の中に溶け込むほど高くそびえ立ち、浮遊する石の台座を使わなければ上の本には手が届かない。
ルーンは慎重に俺を静かな奥の席へと導き、
絶対器や過去のスキル異常に関する、
埃の積もった書物を一生懸命に引っ張り出してくれた。彼女は数時間もの間、蚊の鳴くような声で古のテキストを読み上げてくれたが、ページをめくる時に俺たちの指先がうっかり触れるたびに、
顔をリンゴのように真っ赤にして縮こまっていた。
一方その頃、城の中庭では、
ナスが訓練の約束を完全なる、
恐るべき極限状態へと昇華させていた。
「集中してください、ミクロ様!」
ナスは総執事としての容赦のない規律を炸裂させ、フォーマルなスーツを寝汗のようにびっしょりと濡らしながら、
複雑な障害物コースの前に立っていた。
「最高支配者たるもの、洗練された戦闘スキルを所持していなければなりません!
私のお手本をご覧ください!」
ナスは標準的な戦士のスキルを実演するため、圧縮された魔力の電撃を猛烈な勢いで周囲に裂させた。だが、中庭の端にあるシルクのクッションの上にちょこんと座っていたミクロは、立ち上がる気配すら一ミリも見せなかった。あの駄猫はただ、いつも通り暢気に、気の抜けたあくびを一つしただけだった。すると、あいつの『死魔力の捕食』の特性が自動的に、まるで掃除機のように発動し、ナスの放った凄まじい衝撃波をまるごとパパッと完璧に喰らい尽くしてしまったのだ。
ナスは完全に硬直した。次の瞬間、
その目に純粋な心酔の涙が溢れ出た。
「す、素晴らしい! 姿勢を一つ崩すことすらなしに、最適化された戦闘スキルを喰らい尽くすとは……。ミクロ様の才能、
まさに限界なき至高の領域です!」
静まり返った書物庫の奥深くでは、
ルーンが突然「ひゃぅっ」と小さな声をあげ、古の石板を小さな指で指し示した。
「エ、エイン様! これを見てください!
スキルがゼロで生まれた者は、『完全な空白』
の絶対器を持っていると書かれています。
あなたは弱いのではなく
……適切な触媒さえ見つければ、自分の好きなカスタムスキルをゼロから手作業で完全に創造できるんです!」
「実を言うと、
俺は近接戦闘とか素手での格闘の方が得意なんだ」
俺は自分の両手を見つめ、それから目の前の恥ずかしがり屋の少女を振り返ってボソッと呟いた。
「どんなスキルを使えばいいか、
何かおすすめはあるか?」
ルーンは瞬きをし、俺の言葉を頭の中で整理するようにその目を少しだけ丸くした。
「そ、そうなんですか? それなら、
身体強化スキルが役に立つかもしれません」
「身体強化スキル?」俺は首を傾げた。
「はい、それは誰もが使える基本的なスキルで、
特に獣人族の方々が普段よく使っているものです。ですが、高レベルの身体強化スキルとなると……」
「じゃあ、ルーンちゃん、俺に教えてくれないか?」俺は微笑みながら右手を伸ばし、彼女の小さな頭を優しくポンポンと撫でた。
「は、はい……! よろこんで、エイン様!」
ルーンは恥ずかしそうに小さな声をあげ、頭を撫でられたことで小さなツノまで真っ赤に染め上げながらも、胸元の巨大な魔導書をぎゅっと抱きしめて力強く頷いた。
だが、俺たちのこの束の間の平穏な時間は、
大陸の反対側で起きている巨大な政治的動向から完全に隔離されていた。強固な防壁に囲まれたヴァレリウス神聖帝国の巨大な謁見の間。
そこには帝国の最高幹部や戦略家たちが集まり、
不気味な静寂を保っていた。
皇帝レジナルド・フォン・ヴァレリウス七世は黄金の玉座に威風堂々と腰掛け、
その計算高い鉄の意志を目に宿しながら、
眼下の廷臣たちを見下ろしていた。
「魔族どもが新たな魔王を戴冠させた以上、
我らの根本的な戦略を変更せねばならん」
皇帝レジナルドの声が、
容赦のない絶対的な威厳と共に響き渡った。
「軽率な侵略は行わん。代わりに、
外交という名の鎖で奴らを縛り付けるのだ」
皇帝が顎で指示を出すと、隣の宰相が帝国の正式な刻印が押された何本もの羊皮紙の巻物を掲げた。
「近日中に、世界中のあらゆる種族、
そしてすべての間の国々へ向け、
大規模な外交和平協定の公式招待状を送付する」
皇帝は冷徹な、計算高い笑みを浮かべた。
「この協定には、我が帝国の厳格な要件を課す。
もし数日以内に、異なる五つの国家の最高支配者たちがこの招待に正式に同意すれば、
国際和平サミットは公式に開催される。
あの新たな魔王とやらが、我が帝国の用意したステージに上がる度胸を持っているか、
あるいは全世界の前でその無力を晒すか、
じっくりと見定めさせてもらおう」」
皆さん、こんにちは!
この二人組の旅もついに第十二話まで来ました。
彼らにとって本当の試練の冒険は、
まさにここから始まります!
私の作品をここまで読み進め、
そして応援してくださっている皆さんに、
心から感謝の気持ちを伝えたいです。
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