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第21話 世話好き、お師匠様

 僕には、年の離れた可愛いお師匠がいる。

 銀髪に長耳の可愛いらしい女の子エルフ。


 地球とは違う世界。

 ステラという異世界で出会ったお師匠。


 昔は、とある国の魔法大学で教師をしていたんだけど。


 今は、暗殺者をしながら、僕のお師匠兼メイドさんとして、白銀の館に暮らしていて。


 そして現在は、明日の高校の入学式がある僕の為に、制服の着付けチェックをしてもらっている最中なんだ。


えり元はOKね。ピシッとしているわね。それと、ボタンはしっかり止めないとダメよ。レン君」


「……い、いや、あの、お師匠」


「今日は学校の入学式なのでしょう? 大切な日だもの。ちゃとした格好で臨まないといけないわ」


「う、うん……そうだね。お師匠」


 目の前には、ロングスカートのメイド服を着た、楽しそうに僕の制服姿をながめるお師匠が居た。


「それにしても、地球にも学校というものがあったのね。それと髪型もポニーテールにしてるのね。なんだか、女の子みたいで可愛いわね」


「そ、そうかな? 真白が、〖兄さんのポニーテールが好きなんです〗って言っていたから伸ばしてるんだ………いや、そうじゃなくてっ!」


「ん〜? 何かしら? レン君」


 可愛いらしく首をかしげるお師匠、まるで隠し事をする為の演技にしか見えない。


「なんで地球に居るのさ? お師匠は地球には来れないんじゃなかったの?」


「ん〜?…………頑張ったら来れちゃったわ。私って凄いのね。自分でもビックリしちゃったもの」


 お師匠が可愛いね……いや、そうじゃなくて。


「どうやって来れたのさぁ、お師匠。地球には来れないんじゃなかったの?」


 そう、なぜかお師匠は異世界じゃなくて地球側にいるんだ。


「ん〜……白銀の館にいても暇だったから、色々と実験をしていたら来れちゃったわ。私って天才だったのね。うん、ネクタイも似合ってるわ。レン君」


 僕の制服のネクタイを綺麗に結び終えて、満足顔なお師匠。


「いや、そうじゃなくて……【世界渡り】を使って、こっちに来たの? お師匠」


〖それは、私の独断で決めさせて頂きました。マスター〗


 脳内にイヴさんの声が聞こえてきた。まさか、お師匠がここに居るのは……


「イヴさんのせい?」


〖はい、私が決めました。あの、真白とか言う実妹とマスターの甘々なやり取りが許せず。報復ほうふく処置として、エレンミア様には来て頂きました。エレンミア様は、私の敵ではありませんので〗


「敵ってなに? それじゃあ、真白はイヴさんにとっての敵なの?」


〖そうです。それがなにか?〗


 断言してるよ。

 僕の案内役さん、私欲まみれじゃないか。


「あら、案内役と話してるのかしら? レン君」


「え? う、うん。いきなり話しかけてきてさ。ブチギレてるよ。真白にね」


〖ブチギレてませんけど。なにか?〗


「そう……あんまり、案内役さんを責めないであげてね。この間、真白ちゃん達がさらわれたから、同じような事が起きないように護衛をしてほしいって、夢の中で頼まれたの」


「夢の中?……イヴさん。どういうこと?」


 お師匠の説明を、よく分かっていない僕はイヴさんに質問すると……


〖数週間前、天草快斗が引き起こした事件。白銀真白や白銀雪乃の拉致らちを危惧しての防衛です。同じようなことが起きないように、マスターの家族の護衛をエレンミア様にお願いしたのです。その方がマスターにとっても安心できると思いましたので〗


 この間の快斗の件? 

 ……あぁ、たしかにあの時は僕が居なかったから攫われたんだよね。真白も、母さんも。


「……それで、お師匠が地球に居るんだ」


〖はい、エレンミア様は万能な力を有しています。白銀の館で、ものすごく暇そうにしてましたので、喜んで引き受けてくれました〗


「喜んでって……暇だったの? お師匠」


「ええ、すごくすごく暇で死にそうだったわ。だから、地球に来て、愛弟子君とこうして居られるのは嬉しいの……はい、上着を着て、レン君」


「う、うん……お師匠」


 お師匠が、かいがいしく僕のお世話をしてくれる。


 しかも楽しそうに。

 なんだか僕、小さい子供になった気分だよ。


「それでね。案内役の力と私の魔法でオリジナルスキルを作って、地球に来れるようになったのよ」


「オリジナルスキル? そんなのある?」


「あるけど、まだ教えてはあげないわ。今のレン君では覚えられないもの。それよりも、はい! 順番完了。入学式、楽しんでくるのよ。私も陰ながら、愛弟子の晴れ舞台を見ていてあげるから」


 僕の両手を握って、優しい笑みを向けてくれるお師匠……あれ? 僕……今、心臓が……ドキッてした? 


「お師匠……」


「ん? 何かしら? レン君」


「い、いや。あの……お師匠、ありがとう」


「ううん、どういたしまして。愛弟子を導くのは師匠の役目よ」


 にっこり笑ってる。役目なんだ……役目か……本当にそれだけ?


『兄さん〜! 入学式に行く準備はできた? お母さんが早くリビングに来なさいって言ってるんだからね〜! 兄さんが早く来てくれないと真白も、ママに怒られるんだからね』


 真白の声だ……あれ? この状況。ちょっとマズいんじゃないの?


「ま、待って、真白。まだ準備が終わってないんだ」


『それなら、私が手伝ってあげます! 扉開けるからね。兄さ……』


「ま、待って! 今は、部屋に入って来ちゃ駄目なんだ。真白〜!」


 無情にも部屋の扉が開いた。

 そして、お師匠は相変わらず。僕と両手を握り合っている。それを扉を開けた真白は目撃して……


「兄さん。いったい何をしてるの?……早く、学園に行く……よ? あれ? 何で、エレンミアさんが兄さんの部屋に?」


 西蓮寺学園の制服を着た真白が登場。

 困惑している。そりゃあ、そうだよね。僕とお師匠が部屋の手を握り合っているんだからさ。


「おはよう。真白ちゃん。制服、とても似合っているわ」


「お、おはようございます。エレンミアさん……そうじゃなくてっ! なんで、エレンミアさんが兄さんの部家に? 兄さんも、兄さんで、なんで、朝からエレンミアさんとイチャイチャしてるの?」


「い、いや、真白……これには色々な理由があって……ね? お師匠」


「ええ、朝からレン君のお世話を全部やってあげられて、私は満足だわ」


 お師匠。真白が勘違いするような言い方はよくないよ。そんな言い方だと、真白が勘違いして……


「真白……これには色々と理由があってさ……お兄ちゃんの話を聞いて落ち着いて聞こう。真白、変な勘違いは駄目だよ」


「兄さん……」


「真白、分かってくれたのかい?」


「兄さんの浮気者───!」


「なんで、そうなるんだよ! 真白───!」


 この後、真白が落ち着いて僕達の話をちゃんと聞いてくれるまで、5分くらい取っ組み合った。


「それじゃあ、2人共。入学式楽しんできなさい。陰ながら見守っているわ。行ってらっしゃい」


 お師匠はそう言って、僕の部屋の扉を閉めた。異世界側に帰るのかな?


「制服の支度を手伝ってもらってたのなら最初から、そう言って下さい、兄さん。真白、勘違いしちゃったじゃないですか。全く、兄さんは」


「……真白が、僕の話を全然聞いてくれなかったからだろう。全く、真白は」


 久しぶりの兄妹喧嘩、高校生の入学式そうそうの朝に僕達は何をやってんだろう。


「あら〜! 2人共。制服、すごく似合ってるわね。素敵ね〜!」


 準礼装セミフォーマルを着た母さんが、僕達の姿を見て、嬉しいそうにしている。


「あ、ありがとう。母さん、聞いてよ。真白が理不尽に怒るんだ。最近、多くてさぁ……」


「な/// 兄さん! さっき、真白が怒ることをママに言っちゃ駄目なんだから〜!」


「まあまあ、青春してるわね〜! 2人共〜! 羨ましいわ〜!」



◇◇◇


 朝は、真白と仲良く兄妹喧嘩したりと忙しかったけど。着いたよ、僕達が新しく通う学園に。


「凄い大きね。真白……新校舎ってやつかな?」


「う、うん。真白が、前に学校受験に来た時よりも。豪華絢爛な造りになってる。ビックリだよ。流石、大金持ちの西蓮寺グループだね。お金のかけ方が普通じゃない」


 五階まである新築の校舎、校庭も広いし……遠くに見えるあれって、カフェテリアってやつかな? なんで、学園の中にあんなのがあるんだろう?


 これって、あれだね。高校生が通うって学校の規模っていうよりも大学規模の広さはあるよ、この学園。


「元の学校を買収した後、西蓮寺学園の会長に就任した扇って方が、使いきれない私財を投じて趣味で学園を増築したらしいわ。学園のパンフレットに書いてあるもの。凄いわよね〜!」


「そこの学生、そこはまだ改築ができていなくて、立ち入り禁止だよ。危ないから気をつけなさい」


「あら? ごめん。警備員さん……ムフフ。蓮〜! 真白ちゃん! お母さん。学生に間違えられちゃったわ。これって、私も入学して良いって事かしら?」


 母さんが周りを見ながら、ハシャイでいる。母さんは20代後半なのに、真白とほとんど見た目が変わらないから学生と勘違いされた? そんなことある?


「変なことを言わないでよ。ママ、皆見てるから騒がないで! 恥ずかしいでしょう」


「ハハハ、母さんは相変わらず。元気で、いつもテンションが高いね〜!」 


「本当にそう。ママは、いつもいつも騒ぎを……」


〖ピロリ〜ン! ママ大ちゅき〜! 真白は、ママに甘えた……〗


「あら、ごめんなさい。お友達から電話だわ……出てくるわね」


 母さんがポケットからスマホを取り出して、僕達から少し離れていく。


「電話の着信音?……なんで、真白の甘えた声が聞こえて……もがぁ!?……真白なに?」


「兄さん。それ以上、真白を追及しないでっ! マ、ママ!? なんで、その動画の音声を電話の着信音に設定してるの? 止めてって言ったのに、裏切り者〜!」


「ちょっと待って、真白ちゃん。お母さんは今、お友達とお電話中なのよ。止めなさい〜!」


 真白が母さんのスマホを、奪い取ろうと試みてる。僕たち一家、凄い目立ってるよ。


「おいおい、あの新入生の女の子達。双子姉妹かな? どっちも凄い可愛いな」


「同じクラスだったら話しかけてみるか? ワンチャン、連絡先聞けるかもしれないしな」


 そして、僕の近くを通った男の子達が、真白と母さんを見て、その容姿を褒めていた。


「まぁ……真白と母さんは、美人だもんね。モテて当たり前……双子姉妹ではないけどさ」


 その2人は親子です。なんて言ったら信じてくれなさそうだね。

 ボーッと、その様子を眺める僕……


「この僕が、異能者が集まる学園の生徒か。1ヶ月前の僕に言っても、信じてくれなさそうだよね」


 かなり痩せたしね。

 イヴさんの強制ダイエットで、無理矢理に肉体改造させられた。あの時は、本当に死ぬかと思ったよ。


 それに僕が肉を食べようとすると、イヴさんは大豆か豆腐を食べろって命令してくるしさ。そのせいで、全然太れないんだよ。僕。


「あ、あの? 君も新入生さんなんですか?」

「へ?……僕?」


「そうそう、背とか高いね。その金髪も綺麗だし。留学生さんなのかな?」


 青髪の活発そうな女の子とピンク色髪の優しそう女の子が話しかけてきた。


 どっちもすごく可愛い。

 こんな子達が、えない元デブの僕に何のようなのかな?


「あ……えっと、日本人だよ。それで、君達と同じ新入生……だね。白銀蓮っていいます。よろしく」


「声がすごく綺麗だね。私、蒼唯あおい六花りっかって言うんだ」


「ワ、ワタシは、桜ヶさくらがおか春花はるかって言います」


「は、はぁ、これは、ご丁寧な自己紹介をありがとうございます」


「い、いえ……どういたしまして、エヘヘ」


 桜ヶ丘さんって女の子は、すごく笑顔が可愛いね。


 しかし、あれだね。蒼唯さんと桜ヶ丘さんも、初対面なのにグイグイくるなぁ。


「えっと、ありがとう……」


「はい! 自己紹介も終わったし、これで私達はお友達だよ。イケメン君」


「イケメン君?……この僕がかい?」


「は、はい! すごくすごく……素敵でふ」


 ……WHY? 僕がイケメン? 何のことだい。違うよ、僕は痩せたけど心は太っている。


 再び太りたいと思っているフードファイターさ。


 あぁ、カロリーなんて、気にせずに大盛りのステーキやラーメンが食べたいな。


 しばらく大食い大会にも顔だしてないし……イヴさんに黙って参加しようかな。


 なんて、イヴさんには内緒で大食い計画を企んでいると。蒼唯さんが、遠くの方からやって来る女の子に手を振り始めた。


「あっ! 来た来た。愛花あいか〜! こっちこっち〜! すごいイケメンのナンパ成功させたよ〜!……春花が。一目惚れなんだって〜!」


「り、六花ちゃん。白銀君の前でなんてこと言うの? そ、そんなわけないでしょう!」


「え〜? 本当に?」


「そうだもんっ!」


 蒼唯さんと桜ヶ丘さんがじゃれ合ってる。

 

 少し離れた場所でも、真白達がまだじゃれ合ってる。


 ……それをボーッと眺めている僕の目の前には、黒髪で眼鏡の女の子が立ち止まった。 


「貴方は……まさか?……すごい偶然ね」


「あれ? 君は……愛花ちゃん?」


「うん。そうよ、久しぶりね。蓮……小学生振り」


 僕の顔を見て、微笑むその女の子。夏目愛花さんだった。


 桜が舞う入学式の日。僕は、小さい頃の幼馴染みと、運命的な再会を果たしたんだ。

 

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