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第20話 蓮と真白


 小さい子供の僕が居る前で、父さんを殺した快斗は笑っていた。


 その後、父さんと快斗の関係を調べて、最初の頃は、快斗を恨もうともしたけど。止めたんだったね。


〖人のことをあまり悪く思ってはいけないよ〗


 父さんが口癖のように言っていた教え……


「父さん。父さんの教えなんとか守れたかな? 僕と真白はさ……」


 色々な人に悪意を振りまいた快斗、今は父さんが作った工場の中で倒れている。


 そして、そんな意識を失った快斗を、ただ、ボーッと見つめる僕。


 快斗に対して、これから大変そうだなと思いながら、地面に光る何かを見つけた。


「黒い水晶? 快斗の両手が黒く光った時と同じ色をしている。快斗が持ってたってことは、異能の力に関するアイテムかな?……危なそうだし。【英雄の宝箱】の中にでもいれとこうっと」


 【英雄の宝箱】のスキルを発動して、快斗が持っていたであろう。黒い水晶と使った武器をしまっていく。


「……これから、どうしようかな。快斗の姿、明らかに人間とは思えないんだけど。どこに連絡した方が良いんだろう? 警察……消防……異能者関係だから変態さんは……あり得ないね」


 悩み始める僕。ていうか、逆に僕がこんな所に居たら、捕まるんじゃないのかな? だんだん心配になってきた。


「このまま、海に流しちゃおうかな……なんちゃって」


 そんな時だった。工場の入り口から、真白の声が聞こえてきたのは。息を切らせて、僕の方へとやって来る。


「お兄ちゃん……生きてるのっ! お兄ちゃんっ!………ハァ……ハァ……ハァ……良かった生きててくれたんだね。兄さん」


「真白?……どうしたんだい? そんなに急いでさ」


「はい? 何を言ってるんですか。兄さんっ! 真白は、兄さんのことが本気で心配していたのに……なんで、そんなに落ち着いてるの!?」


 息を切らせて真白が、僕の前まで走って来た。


 その様子を落ち着いて見守る僕、なんでかな? 


 なんで、僕はこんなに落ち着いてるんだろう。ちょっと不思議だ。


 快斗を、ぶっ飛ばせたからかな?


「まぁ、快斗は倒せたよ。ほら……あそこで倒れている白い変態が、快斗だよ」


「白い変態?……何を言ってるの? 快斗さんは、クリーチャーみたいな化物だったじゃない。白い変態なんているわけないでしょう」


 あきれた顔で、僕へと抱き付く真白。


 なんで、信用してくれないんだろう。快斗と全身顔だらけ化物から、白い変態に生まれ変わったのにさ。


「そうそう。白い変態なんてもんは、おらん……ここに居るんは、実験体やで、黒い狼さんたち」


「!?……『神威』」


「え?……兄さん。なんで、人に攻撃……して? ……無傷?」


 いきなり僕達の後ろに現れた人に向かって、棍棒術の技、『神威』を放った。


 その人から放たれる殺意が、尋常じゃなかったから……その人は、僕と真白を殺そうとしていたんだ。


 だから、急いで対処したんだ。


「危機管理能力ヤバいなぁ、君……そりゃあ、このポンコツゴミカスじゃあ勝てんわな。なぁ? ポンコツゴミカス野郎!」


【ごがぁ!?………】


 茶髪に糸目の関西人?……その人が意識を失っている快斗の身体に蹴りを入れた。


「……貴方はいったい? 僕達を殺そうとしましたよね? 僕が放った技なんて、片手で防ぐなんて、何者なんですか?」


「この……ドブカスッ! 役にもたたん。くせに問題起こすなやぁっ! 腹立つわぁ」


【ゴギ……がああぁぁ!?】


 僕の話しなんて一切聞かず。快斗の身体に何発も何発も蹴りを入れている。


「兄さん……何なのあの人? 真白、怖いんだけど。あの白い人が快斗さん何だよね? 助けてあげた方が……良いのかな?」


 真白が目の前の光景を見て怯えている。快斗を助けるか……迷う。


 ……仕方ない、ここは僕が止めに入るしかないか。


「あ、あの! 快斗とは仲間なんですか? なんで、暴力なんて振るっているんです?」


「あん?……ごめんなぁ、あんた達の姿がボヤけて上手く見えんのや。何の異能なん? それ、面白いなぁ」


 黒狼のまところもの認識阻害のことを言っているのかな?


「いえ……あの、それは……」


「ああ、言わんでええよ。普通、異能の力なんて人に話すもんやないし。目立つもんでもない……このポンコツゴミカス野郎みたいにな例外もおるけどなぁこれはゴミカスは、こっちで処理しとくから君たちは帰ってええで、ほな、さいなら」


「ちょっと! 快斗をどこに連れて行くんですか? そんな状態で、快斗は大丈夫なんですか?」


 何でだろう、ひき止めちゃった。さっきまで、快斗とは戦っていたのに。僕を真白の前で殺そうとしていたのにさ。


「ん? 君ら、この殺人犯と知り合いなん?

そうだとしたら、ドン引きなんやけど……どうなん?」



「え?……えっと……まぁ、知り合いというか……なんというか……」


 昔、いじめられてましたなんて、言いづらいなぁ。


「答えられんなら、その程度の関係性なんやろう。なら、こいつは俺が貰うで貴重な実験結果なんやからなぁ……」


「実験結果? 快斗に何をしたんですか……消えた?」


 透明になるみたいに消えちゃった。地面に倒れていた快斗と一緒。快斗は生きてたみたいだけど。どこに連れて行かれたんだろう?


「………兄さん。あのから……あの人からも快斗さんみたいな……人を殺したような雰囲気をまとってた。多分、あの人は快斗さんを……」


 身体を震わせて怯えてしまった、真白の身体を僕は抱き寄せて、落ち着かせる。


「真白……それ以上は考えない方が良いよ。今は、早く母さんの所に行こう。それで、さっさと家に帰るんだ。ね?」


「……兄さん……うん。帰ろう……私達のお家」

「うん……」


 僕と真白は工場を後にして、母さんの所に急いで向かったんだ。





◇◇◇


 ここは、東京港のコンテナ置き場。天草快斗はこの場所で、化物から人間へと姿を戻されていた。


【ゴギャアアアアアァアアア!?……止めろ……俺の力だぞ!……何しやがああああああ!?】


「アホ、この"外皮の力"は君に貸しただけや。しかし、試作品とはいえ、よくも負けてくれたなぁ? 君……弱すぎるで」


【ウルゼエエエェ!! 返せ、俺の力をカエゼエエエ!!】


「うるさいやっちゃな……黙れや。ドブカス」


【ごあぁ!?……俺の力が無くなった?……『硬化』の異能も?】


「……………」


 そんな2人のやり取りを静かに見つめる、眼鏡を掛けた制服姿の少女の名前は、夏目なつめ愛花あいか。異能者である。


「アホあるはボケ……ほな、俺は関西に戻るさかい。バイバイやな、夏目ちゃん」


「待って下さい。鬼龍院さん、その前に核はどこですか? さっきの分離作業で、快斗君と別れませんでしたか?」


「ん〜? 核?……ないなぁ。そのドブカスのことだから、核をどっかに隠したんちゃうん? なぁ? 人も平気で殺すような奴やもんな。別世界の誰かはん」


【おええぇぇっ!! 身体がそこら中、痛ええぇよおお!! どうなってんだ? 鬼龍院、夏目えぇ!!】


 天草快斗は、人間の姿には戻った。だが、その代償に両腕を失ったため、地面へと這いつくばり暴れていた。


「……駄目ですね。話しも通じません」


「ん〜……不良案件やん。処分しよう、処分、殺傷処分」


「は? ちょっと待って下さい。私はそこまでしてくれなんて言っていません。それに彼は私の古くからの友人ですよっ!」


 夏目愛花が、鬼龍院の行動を必死に止めようとするが、そんなことを気にする素振りも見せず。


 鬼龍院は、天草快斗に止めを刺そうとする。


「アホ、夏目ちゃん。こいつ……身体の中に何か飼ってんの気づかんの?」


「快斗君の身体の中ですか?」


「そうそう。それが暴れ回る前に、殺そ殺そ……ほなな、ドブカス。これまでの人生お疲れちゃん。安らかに眠りや……『鬼殺し』。はい、さいなら、ささと自分の元いた場所に帰れや。ドブカス」


「テメエエェエ!! 鬼龍院っ! 覚え……て……ギィアアアア!?……」


 パンッという音とともに、天草快斗の身体は飛び散り。花火へと変化し夜空に飛散した。


「おーおー、ドブカスの心はどす黒ものやったけど、最後の身体を張った爆散はお見事なお手前やったな。ドブカス……夏目ちゃんも、そう思うやろう?」


「……異能の力を派手に使わないで下さいよ。鬼龍院さん」


「あん? ドブカスの心配はせえへんの? 君らは、てっきり恋人同士やと思ってドブカス殺したんやけど」


「……違いますよ。それに彼の『硬化』の異能の力なら、生き残ってそうですけどね」


 夏目愛花は、上空に飛び散る、天草快斗だった花火を見つめてそう告げた。


「まぁ、生き残ってても、ろくな人生は歩めんやろう。それよりも無かったな。核」


「……ですね。どうしましょう」


「せやなあ。俺はドブカスは大っ嫌いやったけど、夏目ちゃんは気に入ってるから力になってやりたいけどなぁ。ドブカスが核を隠したか……ん?……あぁ、そういえば、ドブカスと一緒に居た奴らがおったな」


「快斗君と一緒に居た人達……ですか?」


「そうそう。ドブカスをめっちゃ心配してたわ。そういえば、今、何時なんじや?」


 鬼龍院はポケットからスマホを取り出し、確認し始めた。


「うおっ! もう、こんな時間やん……すまんのう。夏目ちゃん。俺は関西に本気で帰るさかいなぁ、新しいドブカスに会ったらよろしくなぁ……ほな、これが本当のさいならや」


 鬼龍院は一瞬で姿を消し、関東から去って行った。


「待って下さいっ! 鬼龍院さん、まだお話の続きを……関西まで飛んで行きましたか。これまで生きていた快斗を心配していた人達? その人達が、私の実験結果を持っているということですか?……探して取り戻さないといけませんね。私の異能の力なのですから」


 その後、東京港を後にした夏目愛花は、失った核を探し出すための人探しを開始した。




◇◇◇


 快斗との戦いも終わって、家に帰って来たけど。家の前には警察の人達が居て、壊れた車の撤去をしてくれていたんだ。


 捕まっていた人達も、廃工場から一緒に連れて来たんだ。


 それで、誰が助け出してくれたのかを警察に聞かれんだけど。


「…………疲れた」


 捕まってた皆で通りすがりの人が助けてくれたって伝えたら、警察関係者は納得してなかったけど。


 そこは流石、お母さん。なんとか、警察関係者を説得して納得させたみたい。どうやったかは知らないけどね。


 そして現在、僕と真白は、2人きりで僕の部屋に居る。


 そして、真白はウエディングドレスを着たままなんだ。僕は黒いフードを被ったままだし、何のコスプレ大会だろうね。これ。


「兄さん、お母さんは?」


「元気すぎて、ハイになってるよ。身体の傷もすっかり治って、心も若返ったとか言ってた。僕が真白に渡した回復薬のお陰かな?」


「回復薬?……そういえば、快斗さんに人質にされていた人達も、あれを飲んで傷もすぐに治ってたけど。万能薬か何かなの? 兄さんが作った回復薬って」


「あれで、まだ効き目が薄いらしいからね。そのうち、手足が無くなっても、生えてくるような回復薬を作ってみようかな。【錬金術】を極めてさ。なんちゃって」


 錬金術は面白いね。お師匠に教わってて、ハマっちゃったよ。


「手足が無くなってもって……あんまり危険なことはしないでね。兄さん、今回の快斗さんの時みたいに」


「今回?……別に快斗なんて、簡単に倒せたじゃないか。危ないことなんて何かあったかい?」


「……何それ? 兄さんらしからぬ、言い方だね…………それよりも、兄さんって、あんなに強かったんだね。ずっと真白に隠していたの?」


「……いや、そういうわけじゃないんだけど」


 真白が両頬を膨らませて怒ってる。僕が強くなったことを隠していたのが、そんなにご立腹だったのかな?


「理由をちゃんと聞かせてほしいかも……真白に包み隠さず話しなさい。兄さん」


「えっと……その……真白を守りたかったからかな。快斗から真白を守りたかったから、強くなりたかったんだ。僕」


「……兄さんが、私を守りたいから?……何それ? 兄さんらしい返答だね。そうなんだ。ふ〜ん……真白って、そんなに兄さんに大切な存在なんだね」


 右頬を指でかきながら照れているのかな? 真白は……


「……そうだね。真白は僕にとって、この世で一番大切な人だよ」


 僕は素直な気持ちをそのまま伝える。


「ふぇ/// 兄さんっ! それって、もしかして……真白のことを……兄さんは」


「うん。この世で一番大切な妹だよ。真白はね。」


「……はい? 一番大切な妹?」


「そうだよ、だって真白は僕の家族だもん。家族は大切に……ま、真白?……なんで、異能の力なんて使ってるんだい? 待って、真白。真白のその力は、こんな狭い部屋で発動させちゃ駄目なタイプで……真白、僕の話を聞いて……」


「兄さんの……兄さんのお馬鹿さん!!」


「 何してるんだい。真白! 僕の部屋が吹き飛んで……うわあぁぁ!!」


 こうして、快斗が再び引き起こした事件は、なんとか解決したんだけど。


 その後、真白への態度が悪かった僕は真白に数時間、色々なお仕置きを受ける羽目になったんだ。


「兄さんの部屋が直るまで、兄さんは真白の部屋で暮らすんだからね。分かった? 兄さん!」


「なんで、こんなことになるだい。とほほ」


「……ちゃんと反省してますか? 兄さん」

「してる、してるじゃないか。こうやって真白の膝に乗って良い子良い子されてるじゃないか」


 真白が、そうしないと許しません何て言うから。


「むぅ……全然反省していませんね。兄さん……目をつぶりなさい」


「目? なんで目なんてつぶ……うわぁ! なんで、いきなり僕の目を両手でふさぐんだ。真し……」


 真白の両手が僕の視界を塞いだ。


 そして、その次の瞬間。真白の顔近づいて来て。一瞬だけ僕の唇に、柔らかい何かがれた気がしたんだ。


「真白……今、感触……今のって?」


 僕は、あわてて真白の膝の上から脱出して、真白の顔を見つめた。


「兄さん……」


 真白の顔が、じゅくした林檎よりも赤かった。


 普段は雪化粧のように白いのに、その時だけは真っ赤だった。


「真白、今のは、まさかキ……んむぅ!?」


「フフフ。この先は、まだまだ禁句ですよ。兄さん……これからの真白のことを、もっと理解したら教えてあげます。だから、まだまだ真白は……可愛い兄さんの妹でいさせてね。お兄ちゃん」


「真白……うん、そうだね。真白は、まだまだ、僕の可愛いくて大切な妹だよ。真白」


 僕と真白は大切な兄妹として、お互いに優しく抱きしめ合った。






第一章 〖英雄誕生編〗終わり。



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