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第17話 義妹とメイド師匠


 夜の東京に異形の化物が闊歩かっぽしていた。


〖謎の怪物は現在、浅草一帯で暴れ回っているもよう……一般人の避難を急がれたし〗


〖日本政府より、特殊班を派遣中……その間、怪物は包囲しながら足止めを……〗


〖怪物は、一般人を執拗しつように狙っており、その行動には悪意があります。〗



【ルオオオオオオオオオオオオッ!!! ハハハ!! とんでもねえ力だ。これなら、クソ豚を殺して、真白を俺の物にできるじゃねえか!!! ハハハハハハ!!! ルオアアアアアアアア!!!………おお、そうだ。真白のまえでクソ豚を弄んでやろう。そうすれば、真白は恐怖で屈服して俺に惚れるに決まってるぜ! ハハハハハハ!!!】


 

 ……狂い始めた化物が向かい始めた先は、古い古民家であった。


【…………久しぶりの外だ。何人か一般人でも殺しながら、楽しんで行くか。俺は、人殺しが趣味だからな……白銀の奴を殺した時に目覚めてんだ。性癖ってやつだな。ギヒィ!】


 であったが、化物はあえて時間をかけて向かい始めた。人を傷付けながら。ゆっくりと――――


《東京タワー 天辺》


「どうすんの? 天草君をあんな異形に変えて、東京大パニックカーニバルの始まりやん。夏目ちゃん」


「データが欲しいんですよ。"BEAST・Core"のデータがね」


「それで、大量に人が死んでもええと? 相変わらずの性格破綻者のドブカスやね。夏目ちゃんは」


「……性格破綻した鬼龍院さんには言われたくありませんよ。鬼龍院さんには」


「はぁ!?………そやね。まぁ、君が引き起こした殺戮カーニバルを楽しませてもらうわ」


「多分、そうはならないとは思いますけどね」



 こうして、快楽の化物と化した天草快斗を見つめながら、異能者の2人は東京で始まった惨劇を静かに観察していた。 



◇◇◇


 お師匠が、白銀の館の庭園に住み始めて1日目。1日目で、エレンミアお師匠のお家が建ったよ。


【【【オオオオォォ……】】】


 お師匠が胸元から、黒色の水晶を取り出して、その水晶から人みたいな黒い影が出て来たんだ。


 その黒い影が木材とか色々とシロガネの森から集めてきて、小屋みたいな家を建てたんだ。


 勿論、僕やお師匠も一緒になって家を建てたけど……家って2時間位で建つものだっけ?


「……お師匠、凄いね。何? この黒い影」


「働く影という魔道具よ。暗殺者スキル系統と相性がすごく良いのよ」


「魔道具とスキルにも相性があるの? それって……むぐぅ!?」


 お師匠が右手の薬指で、僕の口元に手を置いた。これじゃあ、喋れないんだけど。


「そんな、いきなりは覚えさせないわ。時間をかけて1つずつ、ちゃんと覚えてほしいもの。それと、家を建てるのを手伝ってくれたから、レン君のスキルのレベリングもできたんじゃない? 確認してみなさい」


「う、うん。分かった……ステータス画面を開いてと」


 優しく微笑むお師匠。

 森であった時とは、本当に別人みたいだなぁ。


 それに僕に教える時のお師匠は、イキイキしてるんだよね。教えたがりというか……お世話好き?


【錬金術】必須スキル一覧

〈採取レベル7〉〈料理レベル7〉〈調合レベル6〉〈錬金基礎知識4〉〈家事レベル3〉〈合成3〉〈分解4〉〈抽出4〉〈溶解3〉〈栽培レベル5〉


【鍛冶】必須スキル一覧

〈瞑想レベル7〉〈金槌レベル5〉〈鍛練レベル8〉〈修繕レベル6〉〈採掘レベル5〉〈細工レベル6〉〈鍛冶知識3〉〈石工レベル7〉〈解体3〉〈整備レベル5〉


 ………………WHY?


「なんか知らない間に各種スキルが、すごくレベリングしてるよ? お師匠」


「そう。それは良かったわ。錬金術を教えている時に、鍛冶の知識に応用できることも説明してたからよ。それと家を素材集めから建てるまでの行程をレン君は見たり手伝ってくれたから、全体的に上がったのね。すごいわ」


 可愛い笑顔で説明されちゃったよ。ふふんっ!とか、鼻を鳴らしてるしさ。


「いや、すごいのは分かったんだけどさ……こんなに色々なスキルが一気に上がるものなの?」


「木造の家って、色々な技術の集大成みたいなものなのよ。だから、それに付随して、スキルアップも行いやすいの。エルフの里だとよくやる訓練ね」


「そう……なんだ。それにしては、上がるの早すぎてるよね?」


「貴方の飲み込みが早いおかげね……(早すぎてビックリしているのは、私の方なのだけど。どこまで成長するか、だんだん研究したくなってきたから、どんどん効率良く教えてみようかしら)」


 お師匠は、色々とすごいね。このままいけば、もしかして、【錬金術】と【鍛冶】の初級スキルは簡単に取得できたりしてね。


「それでも、全部のスキル取得には、時間がかかるよね? お師匠……何してるの?」


 お師匠の両手から、オーラみたいなのが出てる。何だろう。あれ? 


「私、固有のスキル【時の結界】よ。今、建てた私の家の中と庭園内に広げたわ。これで、この中だけ時間の流れをゆるやかにしたの。この結界も似たようなものなのね。すぐに適応してくれたわ」


「……時間の流れを緩やかに? 僕、よく分からないよ」


「あら? ブラックウルフの巣でも、使っていたわよ。それで、空も歩けていたもの」


 お師匠のとんでも発言にフリーズしてるんだけど。僕のお師匠、もしかして物凄い人だったりする?


〖はい、こ異世界でも知らない人はいない程に有名です。だから、絶対に保護すべきと言ったのです。私のアドバイスは的確なのですよ。マスター〗


 イヴさんが自慢気に語ってるよ。ていうか、イヴさん起きてたんだ。静かにしてるから怒ってるのかと思ってたよ。


「この白銀の館の中は、優れた魔法結界なのね。他者の魔法にも直ぐに対応するなんて、ここを作り出した魔法使いは、凄いひとなのね。研究したくなってきたわ、時間がある時にでもやり始めようかしら」


 お師匠が庭園の周りをグルッと見渡しているね。悪戯いたずら好きの子供みたいにな目を輝かせているよ。


「え……っと? そんなに凄い場所なの? この中は」


「そうね。最高峰の結界魔法にまもられた鉄壁の時間結界という所かしら」


「鉄壁の時間結界……ここが?」


 たしかに、外からだと中の様子は見えないし。


 誰にもこの場所が特定されないように、シロガネの森の中を移動してるとか、イヴさんは前に言っていたもんね。


 それに違和感はあったね……この白銀の館って、たぶん時間の経過が異世界の外よりも遅いんだよね。


 そんなに凄い場所に、なんで僕なんかが来れたんだろう?


「少し休んだら、調合をやりながら、基本的な鍛冶もやっていきましょうか。レン君の場合、その方が効率良くレベリングできるわ」


「……え? いやいや、錬金術の必須スキルを上げ終わってから、鍛冶を覚えさせるんじゃなかったの? 話がさっきと違うよ。お師匠」


「ん~……ぶっちゃけ、錬金術も鍛冶も似たようなものだから、平行してスキルのレベリングはできるわ。それに私、物覚えが早い生徒には容赦しないのよ。どんどん覚えましょうね。レン君」


 笑顔、お師匠がもの凄い良い笑顔だよ。


 怖いんだけど……そして、持たされたのは、調合用の鍋と鍛冶用のトンカチ。どっから取り出したんだい、お師匠。


「あ、あの、お師匠。僕、ゆっくりと教えてもらいたいんだ。お師匠に教えてもらうのは凄く楽しいからさ」


「そうなのね。それじゃあ、休憩中は瞑想と家事をやりながらスキルのレベリングをしましょう。最高効率であげるわよ」


 良い笑顔。僕の話を一切聞いてないよ、この人。


「ひ、ひえぇぇ!! 結局、お師匠もイヴさんと同じでスパルタタイプなんじゃないか!」


「あぁ、それと。手に入れた素材はちゃんと庭園で育てましょか。その方が素材は手に入るし、栽培スキルも上げられるわ」


 教育に一辺の隙なしなんだけど。これじゃあ、休みなくスキルレベリングしていくよ~!


「白銀の館でお世話になるなら、こっちの服装の方が良いわね。フフフ、誰かにご奉仕なんて久しぶりよ。レン君ご主人様」


 それに、いつの間にか、お師匠がメイド服に着替えてるし。この人、変幻自在過ぎるんだけど?




◇◇◇


 白銀の館の中に着いたけど……


「扉はやっぱり開かない。兄さんの案内役って、この仕業ね。兄さんは外にいるのかな?……外の様子は……」


 私は窓から庭園の方を見渡したんだけど……



「レン君のお馬鹿さん。私のメイド服がびしょ濡れよ。責任取ってくれるのかしら?」


「わぁ!! ごめんなさい。お師匠……てっ! なんで、メイド服が透けてるの? お師匠!!」


「何って……エルフの衣装が濡れれば透けるなんて、当たり前のことよ。伝統だもの」


「何の伝統なのさ。それは~!」


 兄さんが、銀髪エルフのすごい可愛い女の子とイチャイチャしてる? 


 それにエルフの女の子が着ているメイド服なんで、あんなに際どいメイド服なの? 兄さん!


「……………WHY? 兄さんが、すごくエッチな姿のメイドさんとたわむれてる?…………………ふー、落ち着いて私、病弱じゃなくなってきた私、落ち着いて………………ふー、大丈夫、私は赤ちゃんじゃないもん。白銀真白、兄さんの可愛い義妹なの……」


 プツンッ!……無理だった。口に出して自分を落ち着かせようとしたけど無理だったの。


 目の前の光景を見せられたら、いくら、病弱引きこもりの真白でもプッツンするんだよ。兄さん!


「兄さん――――!! 真白が、家からむかえに来てあげたのにっ! なんで、そんなエッチなメイドさんとイチャイチャしてるのかなあぁ!? 兄さん!!」


 真白は、もう赤ちゃんじゃないの、真白は一人の女の子として、怒ってしまったんだよ。兄さん!


 それにしても、本当に家の中の扉が開かないんだけど。あの案内役さん、どれだけ私が邪魔なのかな?



〖あれは………もう、お邪魔な実妹が戻って来てしまいましたか。今、見せられている光景にもイライラしていますのに、実妹さんまで来るなんて、私のストレスを天元突破させたいんですかね? マスターは……! いえ、これは逆にチャンスですね。マスターには、修羅場を味わってもらいましょう。フフフ〗


 脳内でイヴさんが笑ってる。怖いんだけどさ……いや、今は目の前のお師匠の光景のせいで恥ずかしい感情の方が勝ってるよ。


「……うん、良いわね。スキルレベリングほとんど完了だわ。短時間……と言っても時間換算だと一週間くらい濃密な時間を一緒に過ごしたのかしら? 私達は、ねえ? レン君」


 全身ずぶ濡れの、お師匠が僕のステータス画面と僕を交互に見てくる。


「お師匠。着替えてよ……なんで、下着着けてないのさ? それに、透けるメイド服なんて聞いたことがないよ」


「あら? 恥ずかしいの? 可愛いわね。私はお姉さんだから、全然恥ずかしくないわよ」


「……僕は思春期真っ盛りだから、すごく恥ずかしいんだよ! いいから、早く別の服に着替えてよ。風邪引くよ」


「別にエルフは体が多種族よりも丈夫だから平気よ。それよりも、レン君……短期間の間に、よくここまでスキルを練り上げたわ褒めてあげる」

「は? な?……ち、近っ!……ふぁ……」


 お師匠が僕へと近付いて来て、頭をでてくれる。なんだから、お師匠は頭を撫でるのがすごく慣れてる。


 それに、この感覚は……たしか母さんに甘やかされてる時の感覚……お母さんに……


「じゃなくてっ! お師匠、服を着替えてよ!」


「あら? 私のアロマは、レン君には、あまり効かなかったかしら?……着替えるのはいいけど。それよりも私が気になることを質問していいかしら? レン君」


「質問? 何かな?」


「ええ……白銀の館の中で、扉をガチャガチャやっている可愛い女の子は誰なのかしら?」


 白銀の館の中?……たしか、この異世界の白銀の館の中を出入りできるのは、僕が承認した人以外は入って来れないから……その人物は一人しかいないよね。


『兄さん!!! その可愛い女の子は、いったい誰なの!?』


 なんか、扉にへばり着いて僕を睨み付けているんだけど。何で?


「……真白だよ。僕の義妹の女の子」


「まぁ、そうなのね……義妹なの?」


「うん、義妹。僕の可愛い妹で……怒ると僕に厳しい義妹だよ」


 あぁ、なんで怒ってるか知らないけど。死んだよ、僕……




 扉が開きません。たった一枚の扉が私と兄さんの再開を邪魔してるの。


「あの、イヴって人。絶対に性格腹黒だよね? なんで、そんな人が兄さんのパートナーをしているのかな?」


 扉が開かない。兄さんとずぶ濡れのハレンチメイドさんが目の前に立っているのに……


『あら? 近くで見ると本当に可愛い女の子なのね。セラスのお人形さんみたいだわ』


『うん。昔、芸能界にスカウトされたことがあるからね。真白は可愛いよ……可愛いいんだけど、真白らしくないね。扉をガチャガチャやるなんてさ』


『ペットと同じね。定期的にお外に出して遊ばせてあげないと、ストレスが溜まってしまうもの』


『真白がペット?……ブフッ!』


 扉の向こうで、兄さんとエッチなメイドさんが私の話で盛り上がってる。全部丸聞こえなんだからね。兄さん!!


「つっ/// 私の黒歴史を、ゼロ距離で人に教えるなんて、兄さんは、もうっ! 地球に帰ったらいっぱいお仕置きするんだからね」


 それにしても、本当に扉が開かない。なんで、そっち側から開けてくれないの? 兄さん。


『……扉、開けなくていいの? 怒ってるわよ。妹さん』


『怒ってるから開けたくないんだよね。確実にお仕置きされる未来が待ってるからさ……(女の子の服をらして、恥ずかしい思いをさせたなんて知られたんだから、お仕置きされるに決まってるよ。最近の真白は、活発になったし、きっとキツイお仕置きが待っているんだ。どうにか回避しなくちゃ)』


 ジーッと、私を見つめる兄さん……こういう時の兄さんの顔は、私からどうやって逃げるかを考えている時の顔。


 たぶん、ここを素直に開かないのも。私に怒られたくないからなんだよね?


『可哀想だし。開けてあげたらどうかしら? 私は貴方との約束で、白銀の館の中には入れないのだし【錬金術】と【鍛冶】の初級スキルを完全取得するには、家事をしながら、錬金術と鍛冶のことが書かれた本を読むしかないわよ。それがあるのが、白銀の館の中なんでしょう?』


『うん。そうなんだけどね。それをやると僕が真白にお仕置きを……』


『もう! 師匠の目の前で、みっともない所を見せないの』


『あっ! ちょっと待って、たぶん、お師匠じゃあ、扉を開けられないと思うんだけど……』


 ガチャッ!と扉が開いた?


「……簡単に開いたし、私も白銀の館に入れてしまったわ。レン君」


「嘘?……お師匠が普通に入れて……扉が開いちゃった?……死んだよ。僕」


「はい、覚悟して下さいね。兄さん……」


 私の前で、茫然ぼうぜんと立ち尽くす、兄さん……お仕置きの始まりだよ。


「……こんにちは、妹さん、私の名前は、エレンミア・アグラリエン。レン君の師匠になりました」


 ずぶ濡れ姿のエッチなメイドエルフさんが、白銀の館の中に入って来たの。


 丁寧に自己紹介までしてくれて、すごく品の良い人に見えた。


 こ、こんな綺麗で可愛い人に挨拶されたら、人見知りの真白の頭の中は、真っ白になるんだけど、どうしよう~!


「へ? あ、いう、?……へっと……私は真白って……言いマシュ」


「マシュマロさん? 可愛いお名前なのね」


「ち、違いマシュ!」


「お師匠、真白は人見知りだからさ。お師匠みたいな人が苦手なんだよ」


「あら? そうなのね。可愛いらしいわね。真白さん」


 に、兄さん。余計なことを言って、真白に恥をかかせたね!許しません。


「ち、違いマシュ! 私は、ママや兄さん以外の人が苦手なだけの引きこもりなだけです!」


 そして、私は自分から墓穴を掘った発言を、エッチなメイドエルフさんに言っちゃったの。私のお馬鹿さん! なにしてるの。もう!



【錬金術】必須スキル一覧

〈採取レベル10〉〈料理レベル10〉〈調合レベル10〉〈錬金基礎知識レベル7〉〈家事レベル8〉〈合成10〉〈分解レベル10〉〈抽出レベル10〉〈溶解レベル10〉〈栽培レベル10〉


【鍛冶】必須スキル一覧

〈瞑想レベル9〉〈金槌レベル10〉〈鍛練レベル10〉〈修繕レベル10〉〈採掘レベル10〉〈細工レベル10〉〈鍛冶知識レベル7〉〈石工レベル10〉〈解体レベル10〉〈整備レベル10〉


全スキルステータスに異能『技巧』の能力補正及び、大賢者エレンミア・アグラリエンの異能『叡智』の能力補正あり。

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