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第13話 義兄妹生活


 ここはシロガネの森、ブラックウルフの巣。

 

 今は、西国からのやって来た、流れ者の銀髪エルフの住みかとなっていた。


 そのエルフの身体中には、無数の擦り傷があり、服はボロボロだった。


「このエリアは本当にモンスターが少ないのね。ここなら少しは休めるわ。そして、早く体の傷と呪いも治さなくちゃ……復讐を成し遂げないと。姉さんの仇がすぐ近くに居るんだから」


 とある方角をジーッと見つめている。


「少し離れた場所に、リゲル王国の兵士達とソフィーリアが居て……あの森の可笑しな違和感があった場所。あそこは、ただの小さな原っぱにしか見えなかったけど。何かのあるわよね。きっと……」



◇◇◇


 朝食を食べ終わった。

 兄さんは、すごく苦味のあるサラダを頑張って完食して凄い。


 私はオムレツしか食べきれなかったのに。


「え? 私、この家から出れないの?」


「そうなんだよ。僕が【錬金術】か【鍛冶】のスキルを使えるようにならないと、真白を外には出してあげられないんだ。まぁ、外は危険なモンスターが居るから、イヴさんの判断は正しいと思うよ」


「……兄さん。イヴさんって誰? 女の子? また、女の子をたぶらかしたの?」


 さっきから兄さんの口から出る女の子の名前、聞き出さなくちゃ。


「誑かしてない! 誑かしてないよ。イヴさんは、異世界での僕の案内役の人だよ。声は聞はこえてくるけど、まだ一回も会ったことがない人なんだ」


「…………まだ一回も会ったことない? 嘘だね? 兄さん」


「いや、本当だってば! 真白」


 怪しい怪しい怪しいの三拍子!だけど……私に対しては、絶対に嘘をつかせないから、本当かも。


「でも、少し驚いたよ。この異世界って場所でも、スキルってあるんだね。やっぱり、魔法とかもあるの?」


「いや、それがまだ分からないんだ。僕も、この異世界に来たのは数回しかないからね」


「……嘘は言っていないね。目が泳いでないもん」


 兄さんは、昔から分かりやすく。なにか困ったことや隠し事があると直ぐに顔に出るもの。


「だから、僕は、真白に嘘をつかない……ていうか、つけないじゃないか。昔から真白は、僕に対して……」


「何かな? 兄さん。可愛い義妹になにか文句があるのかな? 兄さん」


「……何もありません」


 兄さんは、私に優しい。私のこんな冗談にちゃんと乗ってくれるもの。


「だよね~?……こんな病気がちの可愛い義妹に文句なんてないよね?」


「……真白。自分で自分を可愛いとか、お笑いのネタで言ってるの? ごめん! ツボっちゃったよ。アハハハ!!」


「ちょっと! 兄さん。なんで、いきなり笑うの?」


 異世界に来ても、変わらない兄妹のやり取り。あぁ、しゅき……兄さんとの、このやり取り。兄さん、すごく優しいよぉ……独占したいなぁ。


「料理していたのも、【錬金術】を使えるようになるための初歩、〈採集〉や〈料理〉のスキルを上げてたんだ」


「そうそう。こっちの異世界だと、そうするのが一番効率的なんだってさ。だから真白が寝ている間に、シロガネの森周辺で採集してたんだ」


 兄さん1人で、危険そうな外に行っていたの?


 危険過ぎるよ……それに兄さんって、戦闘なんてできたの?


「そうなんだね……あれ? でも地球にそんなスキルあったかな? あっちだと戦う系のスキルしかなかったよね?」


「そこら辺は、僕には分からないかな。とりあえず、僕は地球に帰るためにスキルツリーを早く成長させないといけないんだ」


 悲しそうな顔をしてる。


 地球に帰れないって本当のことなんだね。


 ごめんね、兄さん。すごく疑ってたよ。てっきり女の子と密会してたのかと思った。


 私、相変わらず。

 兄さん周りの女の子チェック厳しいなぁ……私は兄さんに過保護だし心配だからね。仕方ないよね。


「スキルツリーって……たしか、自分にあった系統を一生かけて成長させるものだよね? そんなもの2つも成長させるの? 何十年ってかかるよね? そのイヴって人。お馬鹿さんなのかな?」


 地球じゃあ、どんなスキルでもレベルを1つ上げるだけでも、5年はかかるのに。それを2つ? それにスキル自体が使えないってことは、上級スキル……イヴって人は、兄さんを地球に帰還させない気だ。


「真白……え? 『肌も真っ白と脳内まで、白いんじゃないですか? マスターを甘く見すぎですよ。私の計算なら、1年間くらいでどちらも取得させられますから、さっさと地球に帰りなさい。脳内ピンク頭さん』……だってさ。真白」


「なっ! な、な、な………」


七草粥ななくさがゆかい? あれ、美味しいよね。お肉入ってないから」


「なんですか! その言い草はあぁぁ!!」


 久しぶりに怒りのスイッチが入っちゃいました。あのイヴって人。私の宿敵と認識したんだから。



「え? 1度料理しただけで、〈料理レベル3〉に上がったの?」


「うん。後、何回かやれば、また簡単に上がるんだって」


「………だからスキルって、そんな簡単にレベルは上がらないんだよ。兄さん」


 あり得ない。

 私だって、防御系統のスキルを持っているけど。レベルを1から3に上げるまで、10年はかかってるのに。


 あれ? でも待って、兄さんのスキルが上がるようになったのって、つい最近……異世界に来てからだよね?


 それじゃあ、もしかして……私もこの異世界なら、もしかして?


「……私も、この異世界なら、すぐにスキルが上がるのかな? 兄さん」


「え?……『そんなわけありません、努力しなさい脳内ピンクさん。まぁ、私は貴女のスキルレベルを早く上げる方法は知っていますが。教えるわけもないので諦めて下さいね。脳内ピンクさん』……だってさ、真白」


「……なんて言い草なの。どれだけ私を敵視してるの? 兄さんの案内役さんは」


 ……あれ? 脳内ピンクさん呼ばわりはされたけど。


 スキルレベルを早く上げる方法は否定されなかった。


 とういう事は、やっぱり地球よりもこっちの異世界の方がスキルレベルは上げやすいってことだよね?


「……真白? あれ? 機嫌悪くなっちゃったかい?」


「…………ううん、大丈夫だよ。兄さん、そんな脳内アナウンサーには、真白が負けるわけないからね」


「イヴさんが、脳内アナウンサー……ブフッ!……え? 『今、私を笑ったので、取得するスキルを増やします』だって!? いや、そんなことしなくていいんだよ。イヴさん」


 兄さんが、異能の力が発現したのが一週間前くらいだよね。


 私のために発現してくれたって言ってくれてたから、嬉しくてよく覚えてるよ。兄さん。


 ……そんな短期間で、多分兄さんは快斗さんを倒せるくらいに強くなったんだよね?


 だったら、この異世界にいれば私も兄さんくらいに自分を良くすることができるかな?


 家で引き込もって、ずっと兄さんの足手まといになっていた。この私が……


「兄さん!」


「は、はい! 何かな? 真白」


「私も、兄さんと一緒に修行したいです。この異世界で、兄さんと一緒に強くなりたいの!」


「真白が強く?……いや、真白は、もともと凄い異能の力を持ってるじゃないか。あんな凄い……」


「それでも強くなりたいの。スキルのレベルを上げて、兄さんの役に立ちたいんだよ? ねぇ? 良いでしょう。お兄ちゃん!」


「ちょっ、真白。なんで、いきなり抱き付いてくるんだよ……あっ……え? 堪忍袋の緒が切れた? 強制送還するの?」


 フフフ、どうですか? 兄さん、真白のマシュマロアタックは? 


 これをやられたら、兄さんは、私のお願いを聞かないわけにはいかないよね?



「兄さん、お願いします! 真白も一緒に異世界で修行を……」 


「あら? 真白ちゃん。お休みの日なのに? お家の手伝いを……お嫁修業をしたいのね? 良いわよ~! 喜んで教えてあげるわ。将来役に立つもんね~! 大好きなお兄ちゃんのためにも、ウフフ」


「へ?……あれ? お母さんに抱き付いてるの?……さっきまで、異世界に居て。私は兄さんに抱き付いてたのに? どうして?」


 異世界から、いきなり実家に移動してる? もう少しで中学校を卒業する私がお母さんに?……どうしよう、すごく恥ずかしい。


「あらあら~? お兄ちゃんが今、居ないからって甘えたのかしら~? 真白ちゃんは、珍しいわね。良い子良い子ね~!」


「ち、違うのお母さ……はふぅ」


「2人きりの時は、ママって呼んで良いのよ。真白ちゃん。蓮なんて、お母さんと2人きりの時なんて、私が蓮ちゃん、連がママンって言い合ってるんだもの」


 ……とんでもない家庭事情を暴露しちゃったね、


 お母さん。兄さん、後で再会したら、お母さんとの仲を根掘り葉掘り聞いてあげるんだからね。


「あ、あの、お母さ……ママ、あのね?」


「なあに? 真白ちゃん。良い子良い子~!」


「ふあわぁ……ママ!!大しゅき~!」


 私は、そこで考えるのを止めたの。お母さんの…ううん。ママの母性に屈伏くっぷくして、1人の真っ白な赤ちゃんになったの。


 ……真白はね。その1日を、ずっとママに甘えて過ごしたの。すごくすごく癒されちゃった。


 あれ? ママ、私の様子をスマホで撮影してるの?……まぁ、良いかな。今、私、ママに甘える赤ちゃんだもん。


 後で、お兄ちゃんが帰ってきたら、お兄ちゃんにも甘えちゃうんだから!





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



◇◇◇


 真白が、イヴさんの判断で実家に強制送還されたよ。


 さようなら、真白。良い休日をね。


 そして、僕は現在、家を出で庭園で素材採取に精を出してるんだ。陽射ひざしあたたかくて気持ちいいよ。


「へ~、【世界渡り】って、家の中ならどこでも飛ばせるんだ。意外に地球だと不便だね。【世界渡り】ってスキル」


 てっきり、どこでもドアみたいなスキルかと思ったけど。そうでもなかった。


〖それと、マスターの家族か、心を許した相手しか、異世界へは行けません。不純な心や邪悪な心を異世界に渡らせるわけにはいけませんので、ある程度の厳しいルールにしています〗


 しています? ということは、イヴさんは地球や異世界のバランス調整の役割がある、女神様的な存在なのかな?


 ……あんまり深く聞くと、お仕置きされそうだし。


 めとこう、長生きしたいしね。真白と一緒にさ。


 それに、イヴさんとは良好な関係でいたいしね。イヴさんは一回怒ったら、なかなか機嫌も直らないしさ。


「えっと……現状のスキルでも確認しようかな。【鑑定】発動っと……」


 普段見ているステータスメニューをスライドさせる、すると【錬金術】と【鍛冶】スキルに必須のスキル一覧が表示されるんだよね。便利だよね~!



【錬金術】必須スキル一覧

〈採取〉〈料理〉〈調合〉〈錬金基礎知識〉〈家事〉〈合成〉〈分解〉〈抽出〉〈溶解〉〈栽培〉



【鍛冶】必須スキル一覧

〈瞑想〉〈金槌〉〈鍛練〉〈修繕〉〈採掘〉〈細工〉〈鍛冶知識〉〈石工〉〈解体〉〈整備〉


 

 ……………………WHY? 何これ? 多くない?



「何これぇぇ?!! イヴさん!!」


〖はい、スキル【錬金術】【鍛冶】の初級で覚えなければいけない必須スキル一覧になります。頑張って覚えて下さい。マスター〗


「いやいや、多いって! 覚えるスキル多すぎるって」


〖これでも、必要最低限のスキルだけを表記しています。中級、上級、特級、神級になれば更に必須スキルが増えていくので、この程度のスキルを覚えるだけで驚かないで下さい。マスター〗


 何をさらっととんでもないことを言ってるんだろう。僕の案内役さんは……いけるのかい? この大量のスキルのレベリングなんてさ?


「……えっと、朝に採取と料理をしたからスキル〈採取レベル3〉〈料理レベル3〉か、これは早いね。【錬金術】を取得した方が、地球に早く帰れるよね? イヴさん」


〖はい。マスターが、スキル【錬金術】と【鍛冶】を取得すれば地球へと帰還できます〗


「なんでさ。なんで、さっきよりもスキルの取得難易度上がってるのさ?」


〖…………嫌がらせです。マスターは、先ほどまで、実の妹さんとイチャイチャしてましたので、実妹とのイチャイチャなんて、あり得ません。ふんっ!〗


 いや、真白は義妹なんだけどさ、イヴさん。


 変に説明したら。今度は中級も覚えないと地球に返しませんとか言われそうだし、止めとこう。


「仕方ない、終わらせられる所から終わらせていこう……まず、錬金術は、採取、料理、家事、栽培のスキルをカンストさせて。鍛冶は、瞑想、鍛練、採掘、解体をカンストかな?……流石に、スキル取得の説明はしてくれるんでしょう? イヴさん」


〖はい! お任せ下さい、マスター! 長いスキル取得生活の開幕です〗


「すごく機嫌が良いね……学校は別に行かなくても、卒業式だけ出ればいいか。でも、それだと真白が1人きりに……」


 ………真白を1人にするわけにはいかないね。


 切り替えないと……ここは、もう異世界だしね。いつもみたいに切り替えて集中する。


「うん……それじゃあ、急いで取得しようかな。必須スキルを……素材、集め始めるね。イヴさん」


〖マスターの雰囲気が変わりましたね。そんなに私と時を過ごせるのが嬉しいんですね。良かった……それでしたら、そろそろ天界を降りて、マスターに会いに行くのもありかもしれませんね。フフフ〗

 


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