マトボッククリって何なのよ!
ついに雅樹とセルマはガウの街へと到着する。
セルマの父親、グロウと対面した雅樹は…
~第9話~
『まっまさ、雅樹ぃ~もうマツタケ嫌…』
『そろそろ休憩する?マツタケも十五本も見つかったし。他にもセルマのスキルのおかげで大漁だし。』
雅樹はキノコや野菜を大量に抱え、チラリとセルマを見た…
『雅樹は何でそんなに元気なのよ…荷物全部雅樹が担いでるし…』
『俺はまだまだ行けるけど、セルマは?』
『もう!無理だから!休憩を希望します!』
『そうだね。休憩を取らないとブラック企業になるからね。じゃあ4時間頑張ったから45分休憩!』
『一晩中歩いて歩いて、採取しまくったのに45分だけ?おかしくない?』
『労働6時間未満なら45分休憩も許される!』
『異議あり!弓の練習も含めると15時間ぶっ通しです!』
『弓の練習の対価だから。採取は。』
『鬼!鬼がいるよ~!』
セルマは涙声で訴える。
『ゴメン、さっきの橘って地球から召喚された転移者…もしかしたら俺の大切な家族の両親かもしれない…だから焦ってた。セルマの体力も限界まで無理させたし…』
『そんな理由があるなら早く言いなさいよ!アンタが金儲けに目が眩んだと思ったじゃない!』
セルマの優しさが渇いた心に染みる。
が…金儲けに目が眩んだのは紛れもない事実であったが絶対に口にしないと固く誓う雅樹であった。
『じゃあ、最速でガウの街まで行くしかないわよね?コレからは一気に行くわよ!もう採取は十分でしょ?』
『いや!採取は続けながらだ!セルマのスキルの成長の為にも!』
『結局変わらないって事ね…』
《でも、雅樹って不思議な人だな…自分の事は適当なのに人の事だとあんなに必死で…》
セルマの雅樹を見る目が少しだけ優しくなる。
それからは雅樹とセルマの怒濤の採取+移動が再開される。その間、雅樹の予想した通り、セルマのスキル《青果物管理》は凄まじい勢いで成長を遂げる。今では調理方法も閲覧可能になった。更に二次加工の際の原価率計算、粗利額からの売価設定まで…雅樹は素直にうらやましいと思うのであった。
昼過ぎにガウの街の入口に到達する。
あれから二人は更にマツタケをはじめとする山菜や野草、果物を集めていた。
セルマの案内でセルマの家まで案内された雅樹はセルマの家族と対面する。
『お父さん、ただいま!』
『おお!セルマお帰り!獲物はどうした?』
『コレ見て!』
雅樹が抱える大量の野菜やマツタケや果物を自慢気に父親に見せる。
『はぁ…こんな草なんかどうする…肉だよ肉!鹿や猪なら一匹で10万円は堅いんだぞ?こんな草なんか1万円位にしかならんぞ…』
明らかにガッカリする父親を見て雅樹は口を挟む。
『そうですか?今回セルマの見つけた野草、肉より高額になるかもしれませんよ?』
『お前…誰だ?』
『おっと、はじめまして英雅樹です。セルマに助けられてガウの街にやって来ました。』
『そうか…俺はグロウ。本当にそんな草なんか金になるのか?』
『確実にとは言えませんが俺の見立てではイケると。』
雅樹とグロウの間で静かに火花が散る。
『ほう…それなら結果を見せてくれるか?夢や理想だけじゃ飯は食えんからなぁ?』
小馬鹿にされた雅樹はすぐさま返事を返す。
『でしたら夜までには。セルマ、転移者の多い地区は何処だ?そこで仕掛ける。』
父親の言葉に涙目になっていたセルマは力強く前を向く。
『向こうの広場が転移者の地区。』
『ヨシ!行くぞ。ASAPだ!』
『了解!可及的速やか!』
小走りで広場にやって来た二人は簡易な路上販売を始める。
『セルマ、マツタケ以外の商品を正面から見て右から葉物、根菜、果物に並べて。』
『その並べ方意味って…』
『広場の動線が右から左へ流れてる。先ずは価格の低い葉物、コレを目玉にして安さを見せる。価格は80円前後で。続いて根菜。これは日持ちのする野菜だから多少値段を安くするだけで大丈夫!300円前後で。最後の果物、コレは嗜好品だから強気の価格。もちろんセルマのスキルのお墨付きだから高めで大丈夫。その間俺はマツタケの仕込みをする。』
そう言い残して雅樹は雑踏に消える。
雅樹が姿を消して30分程…
セルマは、英青果の手作りの看板を掲げる。
さあ商売の時間だ!
『この小松菜、80円?コッチの人参は…280円?安いわ!』
《スキルの相場から少しだけ安くしただけなのに飛ぶように売れてる…》
『ありがとうございます!』
『この果物…中々手に入らないバナナよね?値段は…1500円?少し高いけど滅多に手に入らないから…買っちゃう!』
『ありがとうございます!』
《雅樹の言った通り、相場が1200円のバナナ、1500円でも売れてる…果物は必需品ではなく嗜好品…》
『セルマ、お待たせ!』
『雅樹、遅い!何してたの?』
『秘密兵器。木箱を買ってきた。』
『箱?何するの?しかもその後ろの板は?看板ならもうあるけど…?それに何で囲いがあるの?』
『この囲いは商談スペース。今からマツタケを木箱にキレイに入れる。蓋ももちろんある。そして、コレが秘密兵器!』
雅樹は板を掲げる。
『何々?地球ではマトボッククリ並みに手に入らない天然マツタケ?価格は要相談…なにこれ?』
雅樹はニヤリと笑うのだった。
『マトボッククリってのは俺のいた世界で一時期流行った架空の品物だ。文字の誤変換からネタとして、いつの間にか販売もされてた。ただし、いつも欠品、写真も未掲載と。』
『何それ?そんなんじゃ売れないじゃない。』
『いいんだよ。このネタがわかる転移者を探す為の看板だから。ちなみにこれはPOPと言う。セルマが商品に付けた値札をプライスカードって言うんだ。』
そうこうするうちに転移者と思わしき客もチラホラと…
『兄さんも転移者?マトボッククリって久しぶりに聞いたよ(笑)マツタケかぁ、懐かしいなぁ。見せてくれるか?』
『もちろん…ではこの囲いの中へ…』
『おお!この囲いも秘密の商談っぽくてますますマトボッククリっぽいな!しかも日本でよく見る化粧箱に入ったマツタケ!で…イクラ?』
『イクラだと思います?』
『マトボッククリよりは安いよな(笑)』
『もちろんです(笑)今なら15000円ジャスト!ココでは消費税もありませんから!』
『久しぶりに地球のネタで笑わせてもらったから買ってくよ。』
『ありがとうございます!』
『兄さんまだこの街にいるの?』
『実は森に放り込まれまして、今日初めてこの街にたどりついたんですよ~』
『森?いきなり?』
『ええ…酷い目に遭いました。』
『そりゃぁ大変だったね~わかった!また寄るよ。』
『お待ちしてます!』
雅樹は地球の都市伝説マトボッククリを引き合いに出して日本人の転移者をあぶり出す。マツタケの価値は日本人が一番わかるはずと踏んだのだ。
その後日本のスーパーで鍛えた営業トークで相場よりも高く価格を設定し、接客により価格を安く思わせる事に成功する。
一方的でセルマは大量の、お客さんをさばくのに必死になっていた。
『ありがとうございます!3800円です!』
『パパイヤですか?コレから2日後辺りが食べ頃です!今なら1個3000円です!』
《コレ、狩猟で肉屋に肉を卸すよりも楽しい!》
手が空いたスキに売上を数える。
23万円…
商売の楽しさを知り始めたセルマに笑顔が溢れた。
一方的で雅樹も負けてはいなかった。
『ふぅ…マツタケ十三本売れたぞ。あの後強行軍で追加で二十本見つかったからまだまだ売れる!セルマには悪いが、あのオヤジ…見返してやるからな…』
雅樹はマツタケのサイズや形で売価を変える。
等級でお客さんに買いやすい価格を何種類か付ける。
『マトボッククリのポスターも俺の狙い通り機能してるし、マツタケも等級や大きさなどで値段は変えられるから値切られても他のマツタケを出せばそれで逃げられる。』
更に雅樹はセルマには秘密の仕込みがあった。
転移者、特に日本人をターゲットにすることで瞬の両親かもしれない、橘夫妻の情報が手に入るかもしれないと…
雅樹の予想を超える転移者が囲いの中の商談スペースに入っては出ていく。
売上をゲットする事も大切だが、この世界の事、政治、経済、生きる為の情報収集も忘れない。
マツタケも残りわずかとなる。
『よし、これで35万円近くになった!セルマはどれだけ稼げたのだろう…』
雅樹はセルマの様子が気になり、英青果店に戻る。
英青果店には商品がほとんど残っていなかった。
『雅樹、凄いでしょ!ほぼ完売!さっきは23万円売上があったから、これから精算するよ!』
ニコニコとセルマの嬉しそうな顔を眺めながら雅樹は…
『いい笑顔だな…セルマは笑顔が似合う…』
『何?何か言った?』
不意に言葉にしてしまった雅樹は慌てて応えた。
『何でも無い。それで今日の売上はイクラだ?』
大量の硬貨を重ねて金額を確かめるセルマはドヤ顔で答える。
『なんと!38万3200円です!』
そこにはドヤ!と聞こえるようなキメ顔のセルマがいた。
『ククク…俺の売上は34万8000円だ!これでセルマのオヤジさんを驚かせてやれるな!』
『雅樹、悪い顔してるよ?』
『そうか?セルマの顔も腹黒い笑顔だぞ?』
二人は悪い顔をして笑い合う。
この後、店の閉店、片付けをして、
セルマの父親の待つ家にむかう。
雅樹とセルマの息が合ってきました!
この後、どんなザマァが…




