謎の通知音
雅樹とセルマ…ついに?いや、雅樹!最愛の妻、香奈はどうなる!
~第11話~
けたたましい雅樹のステータスの通知音が静寂を破る…
二人は慌てて離れ、互いに背中を向ける…
雅樹は両手で頭を覆い、俯く…
《あっ危なかった…セルマを女性として意識していた…今までこんな事はなかったのに…》
セルマは真っ赤になり、目を大きく見開いて、右手で唇を軽く触る…
《雅樹と…キス…部屋に来た時、雅樹…を…落とす。って思ってたけど…コレ、私が…恋に…堕ちちゃ…った…》
雅樹は両手で頭を抱えたまま激しく首を振る…
《何故だ?娘の由香と同じ年頃の子に…こんな感情は…どうしたんだ…もう二度と香奈には会えないと心が認めてしまったから…か?いや、違うだろ!セルマは俺を慰めてくれただけだ!俺が勝手にセルマに欲情しただけだ…》
セルマは身動きもせずに、ボーっとしながら考える…
《さっき…雅樹も…私を…求めて…くれた…》
雅樹は混乱する気持ちを無理矢理に静める為に声を絞り出す…
『さっきの…初めて聞く通知音だったね?何だろう?』
『そっそうね!あんな音初めてだったからビックリした~』
二人は声を上げるが内心は…
《さっきの通知音…助かった…》
《もう!さっきの音はなんなのよ!》
『とっとりあえずステータスオープン!』
開いたステータスをセルマと二人で覗き込む…
『『あっ…』』
慌てて少しだけ距離を空ける…
それまでは互いに気にする事のなかった距離だったのだが…
お互いに気まずくなる。
『称号?new!が付いてる…何々?称号《転移者 悲しみを背負う者》ん?初心者パックにもnew!が…』
《お楽しみの所申し訳ございません。称号獲得の条件が整いました。よって《転移者 悲しみを背負う者》獲得いたしました。マスターの心が限界まで悲しみに染まり、そこから前を向き、歩き出した者に贈られる称号です。効果は称号からご覧ください。それでは、お楽しみの続きをどうぞ》
『ったく!何なんだよ!お楽しみの所って!続きをどうぞ!って。初心者パックってこんな説明の仕方してなかったよな…?』
『称号って初めて聞いたよ…どんな効果?』
《転移者 悲しみを背負う者》
説明…人の為に傷つき、悲しみに暮れても前に進むことを選んだ者に贈られる。
効果…所有者が他者の為に傷つく事を恐れずに行動する時、守護を目的とする対象者にスキル効果2倍。使用者本人にもスキル効果2倍。更に所有者、対象者の熟練度獲得数が2倍。
『意味がよくわからないけど、守護って戦闘スキルかな?』
『雅樹に生まれた称号だから、戦闘ではなく純粋に守りたい相手って事じゃないかな?《私とか!》』
『そうかもな…何にせよ通知音の大きさにはビックリした…』
『そういえば初心者パックの《お楽しみの続き》…しちゃう?』
セルマは見とれる位にゾッとするキレイな笑顔を雅樹に向ける。まるで小悪魔のようだ…
『とっとにかく!考える事が増えた!セルマさっきは慰めてくれてありがとう!少し情報を整理するよ!それじゃ、また明日!お休み~』
雅樹はセルマに揶揄われていると思い、勘違いからヘンな気を起こしかねない事を感じて強制的に会話を打ち切る…
『ふ~ん?もう寝ちゃうんだね?じゃあ雅樹、また明日ね?お休み~』
セルマは嬉しそうに扉を開けようと…するとドアが少しだけ開いているのに気が付く…
《あれ?しっかりドアを閉めたハズ…何で?》
セルマは嫌な予感を覚える…
時は少しだけ戻り、セルマが意を決して雅樹の部屋のドアをノックする時…
グロウとファイスは自分達の部屋のドアをほんの少し開け、部屋の外の音を聞いていた…
二人の話し声は極々小さな、雅樹はもちろん、セルマにも届かない小声で話していた…
《グロウ!セルマが雅樹に突撃するわよ!》
《ファイス、趣味が悪すぎるぞ!》
《何言ってるのよ!あのセルマが自分から雅樹に仕掛けるのよ?》
《俺は止めに行くぞ?》
《フンッ!》
ドスッ…ゴッ…
ファイスの拳がグロウの腹部と右頬を打ち抜く…
見事なワン・ツー。左の拳でボディー、右の拳で頬を、音が出ない程度の力で打ち抜いた…
《おま!何するんだ!》
《ウルサい!黙って見てなさい!》
《ファイスやセルマはそれでイイかもしれないが…雅樹は違う!》
《奥さんの事でしょ?》
《そうだ…俺がもしも違う世界に、いきなり連れて行かれたら…ファイス、お前の事を考える…》
《・・・・・・》
《ファイスは生きている…なのに結婚を…って考えたら…》
《ちょっと、黙って!セルマが部屋に入ったわよ!》
《人の話を聞けよ!》
そう言いながら二人は自室のドアを開け、雅樹の部屋の前に音も立てずに並ぶ。
二人はそっとドアを開け、中の様子をうかがう。
雅樹の嗚咽が部屋に静かに響く…
『香奈、香奈…かな…』
その光景を見てセルマは静かに雅樹に近づき、そっと両手で雅樹の頭を優しく抱きしめ胸に抱く。
《良いわよ!セルマ、ナイスよ!》
《おい、雅樹の心が限界を迎えてるじゃねぇか!》
《だからこそセルマの優しさが効くのよ!》
セルマは雅樹の頭を抱きながら片手で優しく頭をなで続ける。
ドアの外の二人は雅樹とセルマをそっと見守る。
《なぁ、ファイス…俺は雅樹がセルマと結婚するのは大賛成だ…だがな…心が弱った雅樹をなし崩し的にってのは…違うと思うぞ?》
《そんな事は私も分かってるわよ…でも、母親なんだからセルマの幸せを願うし叶えてあげたいじゃない…》
《それは俺も同じだ…》
少し間を開けてグロウが再び口を開く。
《でもよ…今の雅樹をセルマが篭絡したら…雅樹の心は壊れて元には戻らなくなるって俺は思うぞ?》
《それは…》
《だろう?事ある毎に向こうの妻を裏切った…セルマもそんな雅樹を見る度に傷つく…》
雅樹の様子を見守ると小一時間は時間が過ぎていた…
その時、部屋の中では雅樹とセルマはゆっくり見つめ合いながら距離が近づく…
雅樹とセルマの唇が…
《ダメだ!二人には本当の意味で結ばれて欲しい!もう我慢ができん!止めるぞ!》
《仕方ないわねぇ~》
『まて!早まるな!』
グロウの叫びと時を同じくして…
ギュイン!ギュイン!ギュイン!
ピコン!ピコン!ピコン!
大音量の通知音がけたたましく鳴り響く…
それを合図にグロウとファイスはコッソリと自室に戻るのだった。ドアを閉め忘れて…
全てはグロウの妻、ファイスの掌の上で転がされていた雅樹。日本編の香奈によく似ています(笑)




