第2話
二週間後、悪化する怪奇現象を乗り越えた林田が除霊ツアーに参加した。
メールで指定された港に向かうと、既に十数人の男女が列を作っている。
彼らは全体的に大荷物を抱えていた。
(みんな除霊したい物を持ってきてるんだな……)
林田は自身のリュックサックに軽く触れる。
中には件の日本人形が入っていた。
その重みに林田は気味の悪さを感じる。
(これで解決できるといいけど……)
静かに祈りつつ、林田は参加者の列に並ぶ。
規定時刻になると、参加者は船に乗って移動を開始した。
このまま数時間ほどかけて島に向かう予定だった。
船の上で退屈だった林田は、ぼんやりと海を眺める。
スマートフォンは既に圏外で繋がらなかった。
出航から一時間が経過した頃、デッキの上で騒ぐ集団がいた。
それは大学生のグループだった。
一人が鞘から抜いた小刀を自慢している。
「こいつは妖刀でな。変な霊が憑いているらしいんだ。すごい切れ味なんだぜ」
「切れ味って、実際に試したのか?」
「ああ、野菜を切ってみたら、まな板と机ごと真っ二つだったよ。あまりにすごいから売ろうと思ったんだが、そういう時に限って事故が――」
語る大学生の指が滑り、妖刀が床に落下した。
切っ先は微かな抵抗もなくデッキに突き刺さり、そのままデッキの半ばまで埋まってしまった。
その光景を見た他の大学生達は歓声を上げる。
「うっは、すげえな」
「だろ? やっぱ除霊やめて、妖刀ネタで動画作ったらバズるかなぁ……」
笑う大学生は、デッキに刺さった妖刀を引き抜いて鞘に戻す。
次の瞬間、船体が大きく傾いた。
「ん?」
金属の擦れる音を鳴らしながら、船体が二つに割れてずれていく。
割れたのは、ちょうど妖刀が刺さっていた箇所だった。
どよめく参加者達はあっけなく海に落下した。
いきなり水中に放り出された林田はパニックになる。
(まさか、あの刀で船を斬るなんて……っ!)
水面まで上がった林田は、船体の残骸に掴まろうとする。
その時、近くにいた別の参加者が鮫に食われた。
広がる鮮血を見た林田は顔面蒼白になる。
(これも誰かの呪物が引き寄せたのか!?)
林田が驚く間にも、周囲では次々と参加者が鮫に喰い殺されていく。
やがて林田もリュックサックに噛み付かれて水中へと引きずり込まれた。
林田は必死にもがくも、どんどん水面が遠ざかっていく。
(い、息が……ッ!)
暗い海の中、林田の意識が途切れる。
一方、彼のリュックサックが不気味に蠢いていた。




