第1話
フリーターの林田には一つ悩みがあった。
先日、友人から「一週間だけ預かってほしい」と渡された日本人形についてだ。
深夜にいきなり押しかけたその友人は、只ならぬ様子で日本人形を置いていくと、詳しい事情を話すことなくいなくなってしまった。
当初、面倒臭がりな林田は頼みを断るつもりだったが、現金五万円を一緒に渡されたので承諾した。
万年金欠の林田にとって、これほどの臨時収入は見逃せないチャンスなのだった。
たとえ友人が「人形こわい……」と呟いていたとしても、それは彼の知るところではなかった。
それから林田は、日本人形を部屋の一角に飾った。
一週間預かると言っても、特別何かをするわけではない。
定位置を決めて放置するだけである。
たったこれだけで五万円がもらえてしまった。
いつも通り生活する林田は上機嫌だった。
しかし一週間経っても友人は人形の回収に来ない。
連絡をしても反応はなかった。
別に人形は邪魔でもないので、林田は気にせず過ごしていた。
ところがそこからさらに数日後、事態は急変する。
次の林田が友人の顔を見たのは夕方のニュース番組だった。
そこで友人が関東地方の山中で死亡したことを知った。
さらに林田の周囲で怪奇現象が発生するようになった。
誰もいないのに自室の扉が開いたり、死角に何者かの気配や視線を感じるようになったのだ。
加えて居眠り運転する車に轢かれかけたり、電車のホーム端で転倒する等、命に関わるような目に遭うことが劇的に増えた。
林田は気味が悪くなり、なんとなく人形を捨てた。
しかしいつの間にか人形は部屋に戻ってくる。
いくら捨てても、どこかに売り払っても翌日には枕元にいた。
これによって林田は、人形には尋常ならざる力が宿っていると確信した。
いよいよ困り果てた林田は、インターネットに助けを求めた。
そして除霊島を見つけた。
除霊島とは霊や呪いといった邪悪なモノを祓う聖なる土地で、現在は除霊ツアーなるものまで実施していた。
林田はさっそくツアーに応募した。




