第3話
林田が目を開けた時、彼は砂浜に倒れていた。
上体を起こした林田は、己の状態を目にしてぎょっとする。
彼の全身には漆黒の長い髪が幾重にも絡み付いていた。
そして腰元には例の日本人形がいる。
「うおっ!?」
林田は悲鳴を上げて引き剥がそうとするが、髪は複雑に絡み合って離せそうにない。
しばらく格闘した末、息を切らした林田はあきらめる。
そして現状について考察した。
(サメに襲われたのに生きている……まさか、こいつが……?)
林田は恐る恐る人形の頭を撫でておく。
人形は何も反応を示さなかった。
立ち上がった林田は周囲を見回す。
砂浜に他のツアー参加者の姿はない。
ただし、彼らの呪物が漂着して散乱していた。
中には船体を真っ二つにした妖刀もある。
それらの呪物から漂う禍々しい空気に、林田は顔を顰めて後ずさった。
(……離れた方がよさそうだ)
林田は砂浜から森の中へと踏み込んだ。
絡み付いた人形は剥がせないのでそのままだ。
闇雲に森の中を進んでいると、前方の茂みが激しく揺れる。
そこから奇声を上げて現れたのは、仮面を着けた大男だった。
手には木の槍を持ち、猛然と林田に突進してくる。
「うわああああああぁぁぁっ!?」
林田は逃げようとするも、その前に人形の髪が伸びて大男を捕らえた。
そこからコンマ数秒の早業で樹木を利用した首吊りの状態に持ち込む。
大男は手足を動かして苦しんでいたが、やがて脱力して動かなくなった。
一部始終を目撃した林田は人形に問う。
「た、助けてくれた……のか……?」
日本人形の黒光りする瞳が、林田をじっと見つめていた。
「ひっ」と短く悲鳴を上げた林田は、逃げるようにその場から立ち去った。




