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かくや姫は今夜も配信中  作者: ゆずさくら


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23/28

某国からのメッセージ

 ひかるは『カグヤ』として今日の配信目的を告げる。

「今日は、私のリスナーである一人が、行方不明になった件です」

 コメント欄から混乱が見て取れる。

 なぜ、リスナーのことを取り上げるのか。

 どうしてそのことを知ったのか。『カグヤ』とどういった関係なのか。

 疑問から、想像、推測、コメントが入り乱れている。

「行方不明と言いましたが、連れ去られたと思われます。なぜ彼が連れ去られねばならないのでしょうか」

 さらに混乱したコメントで溢れた。

「様々な監視カメラ映像を見てもらいましたが、映っていません。視聴者さんの協力を得たいと思っています」

 ひかるは、画面の隅から拡大するように『桐谷』の静止画を配信画面に映した。

「彼は『桐谷(きりたに)(しゅん)』と言います。もしかしたら、国外に連れ出されたかも」

 更にコメント欄の混乱が加速した。

『何故国外に連れ去られるの?』

『その彼って、スパイ?』

『中東情勢と関連が?』

『一視聴者の話が、何故、今!?』

 行方不明になった日付を画面に展開すると、不思議な情報がコメントされる。

『その日だと外交官ナンバーの車がスピード違反してて』

『その車の行き先の基地から、緊急で戦闘機が発進したのは知ってる』

 コメントを見ていた『竹』からのメッセージが、ひかるに入る。

「いただいた情報の中に、基地から戦闘機が発進したと言う情報をいただきました。確かに、アラスカ基地を経由してネバダ州に入った戦闘機があるようです」

 コメントに驚きのコメントが広がる。

『国内の情報網ならSNSとかで集まるかもだけど、アラスカとかネバダ州の情報ってどこから入手したんだろう』

『ネバダ州って、例のエリア51とかあるとこでしょ!?』

『ただの空想話じゃないの???』

 ひかるはコメントを眺めながら、言う。

「もし本当なら、私もネバダ州の基地まで追いかけて行こうと考えています」

 改めて、行方不明の視聴者と『カグヤ』の関係について質問するコメントが流れる。

 ひかるは読みながらも、そこには触れない。

「一つ間違えれば、皆さんも巻き込まれていたのではないかと思うと、某国の行為は許されないと思っています」

『今更某国って…… さっきアラスカ州とかネバダ州とか言ったんだから、完全に名指しているよね』

『アメリカに行ったって軍事基地に入れてもらえる訳ないじゃん。小国の配信者だぜ』

 ひかるがメッセージを見ていると、一つ、変わった内容のものが流れてきた。

『支援が必要か?』

 ひかるはメッセージ発信者を確認する。

 それは星野(ほしの)(まこと)と言う者だった。

 すぐさま『竹』がパーソナルデータを検索し、ひかるの手元に送られてくる。

 星野誠。

 政府関係者のようだ。メッセージの通り、力を貸せるとしたらこの男は適任だろう。

「ちょっと気になるDMが入っています。配信中断します」

 ひかるは『カグヤ』としてそう言うと、画面を静止画像に切り替えた。

 ひかるはメッセージを入れる。

『支援してくれる対価は何?』

『君のスマホ、そのスマホの先にいる者の正体…… と言ったら?』

『話にならない』

 ひかるがそう書き込むと、すぐに返信が返ってきた。

『いや、すまん。こちらからの要求はない。一方的に関わらせてくれ。ただ、関わる上で、知り得た情報は国と共有される。それだけだ』

『このやりとりが筒抜けということは?』

 こっちのPCは普通の回線だ。

 ひかると『竹』のように秘密の通信ではないから、傍受されていると考えるべきだ。

『この情報が抜かれたとて問題なかろう?』

 この通信でひかるの秘密を話したわけじゃない。

 星野が協力すると言っただけだ。

『けど、この通信で何が出来るの』

『完全合意なら、なんとかする』

 某国は『竹』の諜報機能を使わせ逆探知しようとしている。

 協力を仰いだ方がいい。ひかるは合意した。

『タイミングを待て』

 全く意味がわからなかったが、星野のメッセージはそれで終わった。

 星野のメッセージが終わったことを確認する時間分、ずっと配信を中断していたひかるは、これで終わりと判断するや、再開した。

「ご心配をおかけしていますが、某国からの脅しとかではないので」

 コメントが流れる。

『それフラグ』

『裏で脅されてるんじゃ』

『確定フラグだよ』

『カグヤちゃん! 気をつけて!』

 ひかるはコメントを読みながら、笑顔をつくる。

「みんな心配してくれてありがとう。みんなの情報を元にして、必ず巻き込まれたリスナーを取り返してくるね」

 再び、コメントが溢れ返っていた。

 が、突然、同じメッセージに支配される。

 すると、ひかる=カグヤの表情が曇った。 

『全視聴者の情報は把握した。同じ目にあいたくなくば、接続を切れ』

 接続数が激減していく。

 だが、ゼロにはならなかった。

 ごく少数だったが、繋ぎ続けている者には、次のメッセージを見ただろう。

『カグヤに告ぐ。君の全力を見せたまえ』

 露骨な表現だ、とひかるは思った。

 彼を助けようと『竹』を動かすことから竹の能力や、規模を確認しようとしている。

 情報探査能力だけではない『竹』のスペック全体を把握したいのだろう。

 ひかるは、カメラに向かって言う。

「助ける。絶対に助けるから」

 いつも通り配信終了の音楽の流す。

「行って…… きます」

 それだけ言って、配信画面を切った。

 ひかるはスマホを使って『竹』とやりとりする。

 思考でやり取りするため、部屋を盗撮、盗聴されていても某国にはバレない。

 地球の技術では、そもそも『竹』とやり取りしているかどうかも分からないはずだ。

 だが、一度地球の通信に干渉しようとすれば、その入り口を掴み、罠をかけてくるだろう。

 某国の目的は『竹』あるいは、ひかる=リスア本人を捕獲(・・)することだろう。

 ひかるは考える。

 私の目的はただ一つ。

 桐谷を取り戻す。ただそれだけ。

 彼に対する恋愛感情や、しあわせな結婚などはひとまず置いておく。

 某国は損得勘定一つで軍事力を行使する国なのだ。

 そんな国には断固抵抗するし、情報を渡す気もない。

 配信用機材を片付けていると、家の電話がなった。

 ひかるは少し躊躇った。

 父の康二(こうじ)も母の美月(みづき)も家にいない。

 掛かってきた電話に対応することができないからだ。

 けれどひかるは、緊急のことを考えて廊下に出ると壁掛けしてある(いえ)(でん)の受話器を取った。

「!」

 ひかるの目に、異物が見えた。

 それは近接センサーだった。

 今、何かがトリガーされて、起爆される。

 竹からの判断も、ひかると同じ。爆発物の認識だ。

 避け切るのは難しい。

 急所を守るように素早く畳んだ左腕で頭部を守った。

 小さく軽い爆発音。

 壁付の多機能電話が吹き飛んで、小さく煙を上げている。

 左腕に刺さる複数のブラスチックや金属片。

 傷も深くなく、頭部への直撃は避けることができた。

 気付かなければ至近距離なので、爆弾に気付かなければ十分目的が達せられただろう。

 扉の外でチャイムを押す音だけが聞こえる。

 チャイムの機能が、この多機能電話機と一体になっているため、スイッチを押すだけの音しか聞こえない。

 扉の外に立っているのは、某国が送り込んだ者か、それともさっきのメッセージを入れた同邦の協力者、あるいは全く関係ない一般の配達員……

 扉に近づきドアスコープを覗こうとして躊躇する。

 ひかるのスマホを通じ『竹』が警告してくる。

『そこレーザー照射されてます!』

 そのまま背後に下がると、外が見える窓に近づく。

 握りしめたスマホの向こうで『竹』が周囲の監視カメラや直近の録画内容をスキャンする。

 同盟国である某国のスナイパーなら、銃を持ち込ませることなど容易いだろう。

 ここは五階。

 窓から飛び降りてもひかるの身体能力を持ってすれば問題ない。

 どちらかというと、超人的な能力を目撃される方が問題になる。

 星野は本当になんとかしてくれるのだろうか。

 家にも仕掛けがあり、周囲に刺客が送り込まれているとなれば、両親が心配だ。

 なぜこんなことになっているか、説明することもできない。

 家の仕掛けだけならスマホを通じ『竹』を使えばなんとかなる。

 だが、ここでスマホ、つまり『竹』を使い過ぎれば某国の思うツボだろう。

 この事を両親に説明できない点も問題だ。

 なんと説明すればいいのか。

 核心に触れてしまえば、某国が確かめたがっている事を自ら吐露することになる。

 ひかるは前にも後ろにも進めない状況になっていた。




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