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異世界怖い  作者: 名まず
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###冒険者パーティー『天薙の払い』の話?


 あの後キャスベルは、セネカの指導に従って治療を受けることを選んだ。


彼女の仲間達も納得・・したらしい。


「・・・・・・それに、病気を治すには落ち着いて過ごせる環境も重要です。

パーティーを抜けてもらうのも、面会も拒否するのも、キャスベルさんに余計な負担を掛けない為に必要なことです。」


「私達がキャスベルの負担になると言うのか!。」


「もちろん、なります。」 笑顔で即答、話しを続ける。


「精神を安定させる修行において、邪気や魔素の影響は受けるものです。

修行の過程で、必然的に精神は不安定になる。

あなたが冒険者を辞める覚悟があって、彼女に付き添うならともかく、そうでないなら彼女の元を離れてください。

その方が、キャスベルさんも未練を断ち切れて、彼女自身の為になります。

まあ、手紙のやり取りくらいは問題ないので、まったく音信不通になるわけではありません。

修行さえ終われば、彼女が此処ここに帰ることは出来なくても、あなた達が彼女に会いに行くのは自由です。

その時は、ぜひ、会いに行ってください。」


・・・・・・とか、やり取りしてた。


納得・・・何となく あそこには近寄れなかったよ。



 セネカの治療に迷いはなく、手際てぎわも良い。


セネカに、「お前魔法使いじゃ?。」と、聞いたら、


「治癒魔法も魔法です。

それに、私は治療院の医師の資格も持っています。

私は幼い頃、これと似たような状態になったことがありますから、この症状にも慣れてますしね。」


「そういえば、そんなことも言っていたな。

うん?、でも、何でそれで魔法が使えているんだ?。」


「それは、この目に使われている魔法石のおかげです。」


セネカは自分の右目をゆびさして言う。

幾何学模様が薄く光るセネカの義眼、普通の物とは思っていなかったが魔法石だったのか。


「この目の部分は、元々 父の魔法の杖に使われていた魔法石なのですが、これがい頃の私の魔法の制御をおぎなってくれたのです。」


「なら、これを作って渡せばいいんじゃないか?。

これって、もう1個作れないのか。」


「無理ですよ。

私でも作れませんし・・・これを製造した父でも無理でしょう。」


「じゃあ、どうやって作ったんだよ。」


「これは父が、父の居た異世界で造ったものです。

あそこは魔法も科学も発展していましたので、製造技術も進んでいました。

そこの設備と、潤沢じゅんたくな予算があれば造れるかもしれません。」


「技術って どれぐらいあればいいんだ?。」


「少なくとも、恒星間宇宙船が当たり前に飛ぶくらいですね。」


「・・・・・・・・ご予算はどれぐらいでしょうか。」


お金の事となると妙に卑屈になるのは何でだろう?。

言葉遣いも低姿勢になってしまう。


「100兆円くらいでしょうか?・・・最低限の金額ですが。

父は、元の世界に帰る気は無かったですから、こっちの世界で無理をしてまで、これを造る気は無かったようです。」


「お前の父親は、本当に故郷こきょうに帰りたいとは思わなかったのか。」


アヤトには信じられない。

一度くらい帰りたいと考えたはずだ。


「異世界に渡る方法があっても、父は元の世界へ戻らなかったでしょうね。」


「何でだよ。」


セネカの断言に、アヤトは食って掛かる。


「帰っても、捕まって一生刑務所暮らしでしょうから。」


「お前の父親 何やったんだよ!。」


「いえいえ、たいしたことではありません。」


絶対 大したことあるやつの言い方だろ。それ!。




 「ところで、何で魔法石を作る話しで、お前の親父が帰るとか言う話しになったんだ?。」


「言ってませんでしたか?。

父は、みずからの意思でこの世界に来たのですが、当初こっちの世界に来るのは実現不可能と言われていました。

複雑怪奇な魔法構成、巨大なゲート施設の必要性、膨大な魔力の調達、圧倒的な魔法式演算能力の不足・・・・・・あとは・・動機もですね。

足りないものばかりで、無いものばかり、まさに難題でした。


「それでどうしたんだ?。」


今セネカがこっちの世界に居る以上、セネカの親父おやじさんは、それらの問題をどうにかしたはずだ。


「父は、父の生まれた国で学者のようなことをやっていました。

正確に言うと、学者に政治家を合わせたような仕事です。

父の生まれた星は、惑星全体が一つの巨大な国家の首都で、学校のようなところなのですが、そこでは生まれた時から管理され勉強・競争・切磋琢磨?・・そのような事をして過ごします。

能力の有る者はうえがり、大学のようなところに所属します。

能力が無いものは高校のようなところを卒業すると、国家が支配している他の星に送られ、そこの管理や能力に合った仕事が配分されます。

首都星に残った者は、学者や政治家として研究や政治に関わります。

そこに住む者は政治への参加や意思決定の投票権がありますが、逆に言えば、その星に居る者にしか投票権はありません。

地方の星に送られれば、送られた先の星の政治に関わる権利しか与えられていませんでした。」


「かなりいびつな政治体制だな。」


「そうですか?。

とても平等だったようですよ。

少なくとも皆にチァンスはありましたし、自由がありました。」


「いや、他の星に行った者からは、文句は出るだろ。

子供が地方に送られたら、親も文句を言うだろうし。」


「他の星に送られても、本星に戻る機会はあります。

他星の出身者も、本星の者になる制度は整っていました。

能力が無い者が去るのは当然、というのが、父の居た世界の社会的な考えでしたから。

それに、父の居た本星では子供を産む習慣は無かったので、親が文句を言う事はありません。」


「それでどうやって子孫を残すんだよ!。」


「簡単に言うと、機械・AI・マザーコンピューター? が国民の遺伝子の中から組み合わせの良いものを選んで子供をつくります。

ほとんどの住民はそうやって生まれます。

たまに、自分の体で子供を産む人もいたようですが、ごく少数だったようです。

父の世界では、セックスは交友手段であって、子供を産む手段ではなかったそうです。

まあ、とにかく、そこで父は他の人と同じように研究者であると同時に政治家として過ごしていました。

父はその中でも優秀であったようです。

特に、特殊な魔法石の分野ではトップクラスだったといいますが、そんな父にもうまくいかない研究がありました。

ブラックボックスと呼ばれる古代の遺物の調査です。」


そう言ってセネカは、正四角形の黒い物体をアヤトに見せる。


8~9センチほどの真四角の箱だ。

継ぎ目などは無く、本当に、ただ黒いだけの箱。


「これが・・ブラックボックスか?。」


「ええ。どうやっても傷一つ付けることが出来ず、どうやって作られたかも謎。

父の居た国でも国宝のようなモノに指定されていた物です。」


「それがどうして此処ここるんだ?。」


「まあ、その研究に関しては、文明が高度に発展した父の世界の魔法や科学力でもうまくいっておらず、研究を中断する判断が出たようです。」


「いや、何で此処に在るのかを・・・。」


「本国では研究がとどこおり、やる気がないと判断した父が、国を出る際に借りていったそうです。」


窃盗せっとうだよな?・・・それって、借りパク・・・・・・。」


「そして、父は複数の研究にたずさわっていましたが、父の研究の専門分野は魔法石です。

魔法石と言っても、アヤトさん的にはAIと言った方が分かりやすいでしょうか?。

正確に言うと、魔法因子干渉型次世代思考結晶の製作とその制御魔法術式といったものでしたが、父は主惑星の星を管理する存在・AI・マザーコンピュータ?、その次世代型の製作の主要メンバーの1人に抜擢ばってきされていました。

魔法と科学で動く、量子コンピューターとそれを動かすAIプログラムの複合体とでも思ってください。

父の居た国家では政府は無く、マザーコンピューターのようなものがシステムを動かし、主惑星の国民一人一人が政治家のような存在で、国家を動かしていましたので、それを支える大変重要な仕事です。

それまでは双子のシステムで相互管理・監視などを行っていましたが、新しく3つのシステムで管理するマザーコンピューターを造るという計画が進行・・・・・・・・父はその国家プロジェクトを『勝手に』し変更して6つのシステムで運用する画期的な魔法結晶石を造り上げました。

最新の技術の次世代機をいきなり作ることは出来ません。

試作品は必要です。

その際、試作品として作り上げた物の1つがこの魔法石です。」


「横領してねえ?。」 それに、今 小さく『勝手に』って言ったよな。


セネカは左目をつむる。

顔が良い奴がすると、ウインクしているみたいでむかつく。


「これですか?・・・予算の方ですか?。

予算の方は当然足りず、大幅に増額したそうです。」


「どうやって?。」


国家予算って、そんな簡単に増やせたっけ?。 日本では大変だったような気がする。


「試作品として作った魔法石を使ってハッキング・・・国債を発行したそうです。

いえ、言い間違えましたね。

試作品の稼働実験として、ある数字をいじる実地訓練を行いました。

最新型の魔法石の計算処理速度に掛かれば、数字を誤魔化すくらい簡単だったそうです。」


「横領だな。」 それと、全然言い間違えてねえ。


「その点に関しては言い訳の仕様もありません・・・・使ったのは、全銀河を支配し別の次元の銀河にも手を伸ばしているような超国家の、数年分の予算に匹敵する金額でしたから。」


「おまえ・・それ。」


「いや、父に代わって言い訳をさせてもらうと、出来あがった魔法石はそれ以上に価値のある、素晴らしいものだったそうですよ。

完璧な出来だったそうです。

長い目で見れば、むしろ安いかと。

処理速度も当初予定の数百倍どころの話しではない出来・・・まあ、企画書や書類とかは大分誤魔化したそうなので、言い訳ですが・・・。」


「それ、書類の偽造で済むか?・・・国家反逆罪じゃねえ?。」


「ええ、ついでにブラックボックスだけでなく、エネルギーも盗みましたし、戦艦など軍の設備を無断使用しました。

捕まったら、確実に死刑以上の重いばつが与えられます。」


父の造ったシステムの性能があれば、書類の改竄かいざんなどの自身の罪は全て暴かれているでしょうから・・・。

とか、小さいつぶやきが聞こえる。


「お前の父親、そこまでして何がしたかったんだ。」


「先ほど言った通りです。

父の目的はブラックボックスの研究です。

どうもこのブラックボックス、元々はこの世界のモノらしく、父は研究を進める為、こっちの世界に来たいと願っていました。


しかし、許可は出なかった・・・それはそうです。

この世界を断絶する壁は強固で、はほぼ不可能、国としても在るかも分からない異世界に行くという無謀な研究に予算はつけられません。


そこで父は、造った魔法石の膨大な処理能力と国中から集めた惑星機能維持の為の膨大なエネルギーを(無断)使用、軍の戦艦の機能を(勝手に)使ってゲートを出現・維持、異世界に行くことを思いつきました。

こっちの世界に来る為に、大規模魔法で大天使を召喚、強制的に道をつくり、こちらの世界に渡って来ました。


その際 退職金?代わりに、このブラックボックス(国宝)と試作品として作った小型化した魔法石の1つ(国家資産)を持って来たそうです。

なので、父が去った後 あちらの世界は大騒ぎだったでしょうね。」


「そりゃ・・そうだろう。」 国家を揺るがす大事件だ。


「でしょうね。

アヤトさん的に言うと、『あとまつり』というやつです。

許してはもらえないでしょうね。」


でしょうね・・じゃねえよ!。お前の親父の話しだろうが・・・。


ちなみに、魔法法則は、世界によって差異があり、向こうの魔法技術を、こっちの世界でも使えるように当てめるのは、並大抵の労力で出来ることではなかったそうだ。


この石も、初めは機能せず、内部構成の最適化に時間を要したそうだ。

セネカの親父さんも、こっちに来た当初は単純な魔術構成の魔法しか使えず、一冒険者として活動しながら、この世界の魔法の研究にいそしんだそうで、何事も一朝一夕いっちょういっせきにはいかないとのこと。


話しが長くなったが、つまり、この世界を渡り異世界に行くには、最低でもこの目の魔法石のレベルの魔法演算処理能力が必要とのこと。


「父は純粋に研究目的で、自分の意思で異世界へ渡ったので、初めから帰ることは考えていませんでした。

アヤトさんも異世界に行きたいなら、自分で研究してはどうですか?。


魔法石これを作るにも蓄積された技術と莫大ばくだいな予算が必要です。

こちらの世界は、まだ、そこまではたっしていません。 なら自分がやればいい。

大丈夫、頑張って修行して立派な魔法使いになれば、千年くらいで元の世界に戻る方法が見つかるかもしれませんよ。」


「いろいろ出来る気がしない・・・。」


千年って、地球むこうは知らない世界になってるわ!。

何より、さっきの話しの内容・・・・どう消化しろって言うんだよ!。


「異世界に行くって、大変ですね。」


悪魔がささやいている。


異世界怖い。






 セネカは、キャスベルに修行の指導をするが、やっていることは瞑想など基本的なことで、魔法使いである彼女が普段から行っている修行内容のようだ。


流派というか、家のやり方というか、若干じゃっかん 修行のやり方を訂正されていたが、それだけだ。


むしろ本命は、貸し出された魔力を遮断する魔道具や、セネカが結界を張って周囲の気や魔力を遮断・選別したり、キャスベルが体内の気を整える指導だ。

外部から、正しく出来ているか指摘することが大事らしい。

この『正しく』というところが難しいそうで、セネカのすごいところだそうだ。


まあ、セネカがやるのはこの街に居る間だけの事で、キャスベルが新しい街に行ったら、それを治療・修行するのは、セネカが紹介した別の誰かだそうだが・・・。


アヤトからすると地味で、意味があるのか悩みそうな修行だが、キャスベルは真面目に取り組んでいる。


内心 色々あるだろうが、悲観したり、取り乱している様子はない。


もっとも、セネカの治療・・・正確にはセネカに紹介された人による治療を受けることを決めたキャスベルにとって、今 一番大変なのは、修行よりも引っ越しの方だろう。


今まで暮らしてきた拠点を離れ、別の街で一から出直すのだから、大変にもなる。


修行の方が本格的たいへんになるのは、それからのことになる・・そうだ。


当然、アヤトも荷造りの作業を手伝った。

セネカの話しが頭をめぐってうわの空だったけど、それなりに労働力になったはずだ。


俺にとってはそうではないが、キャスベルや天薙の払いのパーティーメンバーにとってはあわただしく時間が流れていった。



 10日後、たくさんの荷物を乗せた馬車とキャスベルの護衛をする冒険者パーティー、新しい街まで一緒に行く商会の行商団・・・今回はこの行商団に便乗びんじょうして行くので、普通に旅するよりも楽に行けるらしい。


これはセネカが手配した。


新しい街には、キャスベル1人で行く。


セネカがするのは指導と紹介だけなので、セネカがキャスベルに付いて行くことは無い。 チッ。


新しい街に、キャスベルの治療と修行をけ負う人物がおり、紹介状も渡しているそうだ。

その先生は、セネカの頼みを快(心良)く引き受けてくれたとのこと。


その集団を、アヤト達 木漏れ日の樹のメンバーで見送った。


もちろん、天薙の払いのメンバーは全員来ている。


こっちが本命だし、女性達が抱き合って泣いて、別れをしんでいる・・・うるわしい光景だ。


小さくなっていく姿を、遠くに見つめる。


俺達も学園に帰るか。


・・・俺が基礎科を卒業するのは、いつのことになるだろう?。


・・・・・・薬草を取りに来ただけなのに、ずいぶん時間が掛かってしまった。







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