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異世界怖い  作者: 名まず
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###冒険者パーティー『天薙の払い』 葛藤


 「今日のところはこれくらいにしましょう。

すぐに結論が出るものではありませんし、明日また来ます。」


セネカは、そう言葉を残して宿から出て行った。


当然、アヤトも追いかけた・・・・後ろを気にしながらであるが。

仲間達と自分達が泊まる宿に向かう。


話しの流れからそうなるとは思ったが、「今日泊まりか・・。」


てっきり、今日は学園に帰ると思っていた。

いいかげん、単位が欲しい・・・基礎科を卒業したい。

魔法の授業以外、小・中学校くらいのレベルの中に居るのは居心地いごこちが悪い。


宿に入ると仲間は食堂に、アヤトも付いて行く。


皆で食事を楽しむ中、テーブルの隅でダンジョン産の干し肉をかじる。


時間を掛けてゆっくりと しがむように食べるのがコツだ。

一口で食べてしまったら、俺一人が手持ち無沙汰ぶさたになってしまう。

皆でご飯、その中で独り食事もせず席に座る可哀そうな人になるのを防ぐ為の工夫だ。


このテーブル周囲には、セネカが盗聴防止の魔法を張っている。

周りに話しを聞かれる心配が無いので、話しの内容は昼間の冒険者パーティーの話しだ。


「アヤトさんは彼女の状態をどう見ます。」


そんな、いきなり言われても・・・、俺は医者じゃない。

確かに、普通の人に比べ変だ・・・俺の目(?)にはそう見えた。

体が薄いというか、濃いというか、明滅しているような存在感、周囲の魔力を取り込んでいるというセネカの言葉通りなら、それが集まってきた魔力による現象なのだろうか?。


聞いた話しだと、キャスベルは精霊魔法の使い手だそうだ。


精霊使いとは、文字通り、精霊を用いて魔術を行使する魔法使いだ。


彼女の場合は、土地の精霊や地に宿る力と契約し、その力を行使する。

アヤトに分かりやすく説明すると、土地神、自らの力の領域内ではより強い力を発揮できる。

みたいな感じだそうだ。


土地の力や、自然にある魔力・マナを取り込む際、まったく知らない土地の気を取り込むより、馴染なじんだ土地の魔力の方がマナを吸収しやすいし、土地のマナの性質を熟知していた方がマナをあつかいやすいのは当然だ。


また、特定の精霊と契約をまじわしたり、精霊に自分の存在を知ってもらうことで、使える力は格段に上がる。


キャスベルは、この地で長く続く魔法使いの家系で、この周辺一帯の土地でなら、より強い力を行使できるそうだ。


「それで何が問題なんだ?。」


考えても分からないので、アヤトは聞く。


素直なのはいいことだ。

セネカは、そんなアヤトの事を『思考停止』と思っていたが。


「そうですね。

言ってみればアヤトさんと同じです。

精霊化現象、これは身体というより、魂のバランスがくずれているのです。」


「え!、俺の魂のバランスは崩れているのか。聞いてないぞ。」


(いいえ、存在自体 崩れていますよ。)


セネカは、笑顔を見せてアヤトを落ち着かせる。


「・・少しですよ。

それはそうと、アヤトさんは、キャスベルさんが心配では無いのですか?。

今はアヤトさんの事より、キャスベルさんの事です。


例えば、普通の状態だと、少しくらい邪気や魔素を取り込んでも体が自然と治癒したり、自浄作用として浄化されます。

魔法使いや気を使う戦士なら、瞑想や操気術で邪気や魔素を外に排出するのが正しい処置です。

いずれにしても、時間がてば元の状態に戻ります。

そこらへんは怪我や病気と一緒ですね。


ところが、キャスベルさんの場合、無理に力を使った反動で魂のバランスが崩れてしまいました。

同時に、魂が無防備になり、悪霊や魔物にも襲われやすくなっています。

崩れた魂のバランスをおぎなおうと、周囲の気を滅茶苦茶に取り込んで身体からだを痛めている状態です。


あの人達には伝えませんでしたが、より問題なのは、魔素を取り込んだり、周囲から必要以上の気を受け入れていることです。

下手をしたら、キャスベルさんの存在が変質します。

そうなってしまうと元に戻すのは無理です。


もちろん、絶対に治せないとは言いません。

ですが、何をもって【治った】と言えるのか、定義が難しいところです。

元に近い状態にするなら、治療方法は、彼女の魂を私が外部から操作するという方法になります。

禁呪であり、ほとんどの宗教で禁忌とされている魔法です。

使用すれば、術を掛けた私も、術を受けた彼女も、処分されても文句が言えない行為です。


キャスベルさんにとって一番負担が少ないのが、魔法を使うのではなく、魔法と共に寄り添って生きる道ですね。

修行には長い時間が掛かりますが、自身のからだと向き合い、自分の魔力や周囲の魔力、邪気や魔素とうまく付き合っていく方法です。


魔法使いとしての道をきわめる道もあります。

周囲の気を取り込む、魔力を受け入れ、自分のものとして受け入れていく。

人間からは外れますが、自分で自分の魂の調整する『仙化』や、存在があちら側に近くなりますが『霊化』の秘術、習得には、何より才能と長い年月の修行を要し、普通の人間であることは止めることになりますが、それも一つの道です。


・・・さいわい、精霊化の進行はめることが出来ます。

時間はありますので、キャスベルさんが自分の道を決めるまで、これ以上 症状が進行しないようにするのが一番良い方法なのですよ。」


「そこまで分かっているなら、俺に聞く必要はないだろ。」


「これも修行・・勉強ですよ。

明日、天薙の払いのパーティーの所には、私とアヤトさんの2人で行くので、彼らから しっかり話しを聞いてきてくださいね。」


そういうの苦手なんだが・・・。


「・・・ところで、俺は魔法を使っているんだが、それはいのか?。」


(キャスベルのように、俺も魔法を使わない方がいのでは?・・・。)


くはありませんが、いのですよ。

アヤトさんの場合は、逆に、どんどん使って馴染なじませなくては、呪いに負けて存在が変質してしまいます。」


とっくに手遅れで、人外になってしまっている。

ここまでくれば、逆にきわめないと、もれて雑多なモノとてる。


「ちょっと待て!。良くは無いだろ。」


セネカの言葉を手で止める。

良いのか?・・・良いわけが無い(反語)。

欲は無いが、欲は言わんから、頼む。怖いからそれ以上は・・・言葉はオブラートに包んで欲しい。

俺のハートはガラス製なんだ。


「もっと、こう、修行とか、つらい事はしないような方向で、何か方法は無いでしょうか?。」


「アヤトさんは引きこもりって、好きですよね?。」


「そ、そんなこと無いぞ。・・・・好きでは・・ない。」


決して、働かず引き籠もって、お部屋でゴロゴロしていたい、とか思ってない。


「アヤトさんは引きこもりって、好きじゃないのですね?。」


「内容にもよるが・・・・・・。」


趣味三昧、遊んで暮らせるのなら、その生活は好き・・・かもしれない。知らんけど。


「簡単です。

何もしなくていいです。働かなくても大丈夫です。 ただ、部屋でのんびりして居てくれれば。」


「ゲームとかテレビみたいなものは?。」


「(難しい)本で良ければ・・・いっぱいありますよ?。」


「食事は?。」


「アンデッド ショクジ イラナイ 」


「・・・・・・・・・・・・・・・・」

( どうして急に片言カタコトになった!?。)


「その部屋からは出られるのか。」


「もちろん・・・千年後くらいには?。」


目をらすなよ!。・・・怖いから。


「それって封印って言わないか?。」


「そうとも言うかもしれません・・・安全ですよ?。」


その日の夜、将来が不安でねむれなかった。


元から寝ない存在?。

余計なこと言うな!。

・・・俺だって傷付くんだぞ。






 次の日も『止まり木の宿 ラグム』に行ったが、『天薙の払い』の方針は決まっていなかった。


当然か。


前日のセネカの話しは、『天薙の払い』のメンバーにとって、昨日今日きのうきょうの話し合いで決められるような内容では無い。


でもセネカは、はっきり告げる。


「もう冒険者は引退した方がいいでしょう。

今後、魔法は使わない。魔物にも近づかない。この街から離れる。

病気を治すなら、これは決定事項です。

近日中に、私達はこの街を去る予定です。

症状の進行を止められると言っても、今の環境では完全ではありません。

遅くなれば遅くなるほど症状は悪化すると思ってください。

あなた達が、キャスベルさんが死んでもいいと思っているのなら、いつまでも話し合ってもらってかまいませんが。」


言い方。せめて笑顔はひっこめろ!。

こっちまでたまれなくなる。


オランドの沈痛ちんつう面持おももち、それでも、


「でも良かった。君が元気になるなら それだけでいよ。」と、笑顔で言ってのける。


「でも、せっかくAランクパーティーになって、これからなのに・・・。」


キャスベルが、申しわけがなさそうにしている。


「君の体の方が大事だよ。」


返したオランドのセリフに、アヤトは戦慄せんりつする。

まさか!、現実リアルでそのセリフを吐く人物が居るとは・・・、

くそっ、リア充爆発しろ!。

いや、何も この2人に含むところがあるわけではない。

ただの病気だ。

なんか幸せそうな人を見ると、つい、言いたくなるよね?・・・ならない?。


セネカは、1人で呟くアヤトも、2人でかたらう男女も、眼中に無いようだ。

ただ、返事を待つ。


厳しいようだが、セネカも考え無しに言ってるわけではない。


世にある魔法使いの流派の中には、修行中の魔法使いの恋愛禁止しているところもある。

意味が無い決まりというわけではない。

魔法は誘惑が多いからだ。

まだ未熟な見習いが、女性の気を引く為に使用が禁止されている魔法を使ったり、悪用しないように。

また、魔法因子が思考に反応する以上、感情の影響を受けやすい。

未熟な精神で魔法を使えば、取り返しのつかない事態を招くこともある。

物を落とした時に出た音で気を散らして魔法を暴走させたり、色恋の事を考えていて魔法に失敗する事も、実際あるのだ。


口にはしないが、パーティメンバーの男女関係も理由だ。

調べた限りトラブルが起こる可能性が高い。

キャスベルの実家からの干渉をけるためというのも理由だ。

精霊化現象を発生させるような精霊使いからは、次世代に強い力を持つ精霊魔法使いが生まれる可能性がある。

彼女の家がちょっかいを掛けてくる可能性は高い。

病気のこと以外にも問題はひそんでいる。


「・・・・・・・・・・・・・・・」


オランドはもくする。

話しは分かった。

だが、正直 木漏れ日の樹なんてパーティーは聞いたことが無い。

魔術集会や治療院が推薦しているから信用しているが、怪しい魔術師の予想外の提案に、仲間も困惑している。

治癒魔法使いや薬師・聖職者の中には、治せなかったり、死なせてしまった時の事を考えて、症状を悲観的に言ったり、最初からきつい事を言う者もいる。

昨日の発言は、そのたぐいのものだと思っていたのだが、そうでは無いようだ。


キャスベルはおとなしく聞いている。

覚悟していたのだろう。

キャスベルが何も言わないから、オランドも何も言わない。


ただ、オランドは気付いていなかったが、仲間達は、彼が今にもパーティーを抜けて彼女と一緒に行く。と言いかねない・・と緊張していた。


冒険者を辞め、新たな人生をスタートする。

言うがやすし・・・が、簡単に出来る判断では無い。


次の職の事とか色々あるが、生き方の問題である。


パーティーのこともある。


天薙てんなぎはらい』は、ようやくAランクパーティーに上がって、「さあ、これから」というチームだ。


キャスベルが冒険者を引退するということは、パーティーから魔法使いが抜けるということ。


冒険者パーティーにおいて、確保が難しいと言われる魔法職。


魔法使いは貴重だ。


魔法が使えるのなら、冒険者になんてならなくても、国や領主に仕えるといった、安定した職業を選ぶ者が多い。


『天薙の払い』は6人のパーティー、6人という少ないメンバーにおいて、貴重な魔法使いに抜けられたうえ、リーダーのオランドまで居なくなったら、パーティーは立ちかなくなる。


それに、パーティーの中にあるのはそれだけではない。

リーダーに抜けられたら困る事情がある。

男女比3:3のパーティーメンバー。

だが、男女1対1の3組のパーティーでは無い。

女性メンバーは3人、れている人物は1人というかたよった人間関係だ。

オランドとキャスベルは相思相愛だが、付き合っていない。

つまり、微妙なバランスでパーティーが成り立っている。

キャスベルが納得していても、キャスベル以外の女性2人が納得しない。

ちなみに、りの男性2人は達観たっかんしている。

世の中、無常なのである。

持てる者はモテ、持手もたざる者はモテない。

同じチームで仲良く素材を分け、お金を均等に分配して、たとえ経済格差はなくとも、チーム内格差は生まれる。


世の中は不条理なのである。


キャスベルは、もうすぐ死ぬと言われることも覚悟していた。

だから、生きる道があるなら、その事に努力することをいとう気は無い。


しかし、冒険者を辞める話しや、パーティーメンバーと離れて別の場所で暮らすという話しは想定していなかった。


新しい選択肢を前に困惑していたし、まだ決断は出せなかった。


「もう少し考えさせてください。

自分でもこれからの事を考えますし、仲間ともじっくり話し合ってみます。」


キャスベルの返事に、仲間はどう言えばいいか分からない。


彼女の身が心配なのは皆同じだ。

だが、ベットの上のキャスベルより、立っているオランドや仲間達の方が、彼女が冒険者を辞める事に強い抵抗感があった。

それゆえに、身動きが取れなくなっていた。


「まあ、私は、条件は出せますが、強制する権利は無いので、皆さんでよく考えてください。

ただし、後日 手紙でやり取りすることも出来ますが、早い方がいと思うなら、私達が街を出るまでに決めた方がいいですよ。」


空気を読まず、にっこり追い打ちを掛けるセネカ。

それどころか・・・。


「アヤトさんはもう少し彼らの話しを聞いてきてください。

では、私は先に帰りますね。」


アヤトを置いて、さっさとラグムの宿から出て行ってしまった。


空気が重い。


この中で話しを聞くなんて きついんだよ。


帰るタイミングをどうしたら・・・・・・。


アヤトは1時間ほどして、ようやくその中から抜け出す事に成功した。








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