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異世界怖い  作者: 名まず
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###冒険者パーティー『天薙の払い』 相談


 森人の村に帰ると、ちょっとした騒ぎになった。


昨日に引き続きうたげが行われ、森人としては豪勢ごうせいな食事が出されたり、子供達に囲まれたり、少し夜更よふかししたりした。


それでも、昼間以上のトラブルも無く、朝には森人の皆に見送られ町へと戻った。


外からこの光景を見ている人がいたら、ゴブリンに追い払われる冒険者パーティーの図だったが・・・。


事実は違うので問題ない。


何事もなく、町の冒険者ギルドに辿たどり着いた。


冒険者ギルドの掲示板に変わった依頼も無く、その足で隣りのもっと大きな街に向かう。


さんざん山道やまみちで歩き疲れたのに、すぐに次の街へ移動するのか。


背中の荷物も邪魔である。


わざわざ素材を背負って行かなくても、「この荷物、あの町で換金したら・・・」 アヤト的には、荷物を運ぶ手間がはぶけるので、セネカに提案してみる。


「魔物の素材や一般的な薬草はともかく、森人から手に入れた珍しい薬草やキノコなどの素材は、あの小さな町ではさばけません。」と言われた。


町に入るには税金が掛かる。


だが冒険者は、町に入る際に冒険者カードを見せれば、通行料を払わずに町に入れる。

それは、魔物を討伐してもらう為であったり、冒険者が持ち込む素材による経済効果を期待してのことだ。


そうでなければ、市民でもなく、税金を納めているわけでもない冒険者を、町が優遇ゆうぐうするわけがない。


ただ、その冒険者ギルドも、全てのしなを買い取ってくれるわけではない。


ダンジョンがあれば、似た素材が多く産出されるので鑑定も楽で、値段も付きやすい。


この町のそばには広い森があり、その大森林の素材に詳しい鑑定士が町のギルドには居るが、牙一つとっても、何の魔物の牙かによって評価額に雲泥うんでいの差が出るなか、珍しい魔物の牙だけを見て、何の牙か鑑定したり、さらに専門知識が必要とされる珍しい薬草を鑑定できる者を抱えている冒険者ギルドは少ない。

鑑定士せんもんかの給料は高いそうだ。


小さな町となれば、買い取れない物も出てくる。


大きな街でまとめて買い取ってもらった方が効率がいいそうだ。


 セネカは街に着くと、まず街の大通りに店を構える商会に素材を持ち込んだ。


それは、金貨がもちいられる程度にはい取引だったようだ。


店の奥に運ばれていく素材を見送る。


「あれは冒険者ギルドで換金しないのか?。」


冒険者には様々な特権がある。

が、それと引き換えに、冒険活動で得た素材は、基本的に冒険者ギルドにおろすのが暗黙のルールだ。


冒険者は基本 個人で立場が弱い。

また、商品や取引に関しての知識が無い者が多い。


冒険者を守る為にも、事前にトラブルを避ける為にも、冒険者ギルド内での換金を推奨している。


「冒険者ギルドに買い取ってもらった方が楽なんじゃ?。」と言ったら、これはまた別だと言われた。


「薬草でも、珍しい物は冒険者ギルドでは買い取ってくれません。」


冒険者は、基本、掲示板で依頼者から提示された薬草を採って来て報酬を得る。


需要の高い薬草は常時買取りしており、一括いっかつで薬種ギルドや薬師ギルドにおろしているそうだ。


街の冒険者ギルドには、小さな町のギルドよりは薬草に詳しい鑑定士が居るのは確かだ。


この周辺に広がる大森林は薬草で有名で、一部の森では特別な薬草が取れたりする。

そんな土地だから、薬草に詳しい専門家も揃えている。


しかし、それにも限度はある。

珍しい薬草の取り扱いや、希少な薬草の適切な保存、魔力で変質した特別な薬草の鑑定を出来る専門家じんざいまでは居ないそうだ。


この辺りなら、薬やポーションをづくりで有名な5つほど向こうの街の冒険者ギルドまで行かなくては駄目だとのこと。


ちなみに、セネカが商会に売った薬草類も、その街に持って行かれるそうだ。


なので、この街の冒険者ギルドでも、今回持って来たような珍しい薬草はそれなりの値しか付かない。


それが嫌な冒険者は、それぞれの伝手つてで専門の商会に売ったり、薬種問屋や薬師ギルド、治癒士・錬金術士個人に持ち込むものらしい。


確かに、一見いっけんするとただの枯れた草や、ゴミにしか思えない干したキノコとかを、冒険者ギルドの受付に出されても困るか。


これにはアヤトも納得する。


それにしても、あんな枯れた草が金貨で取り引きされるのか。


見る目が無いアヤトである。 それには少し納得が出来ない。


(あの商会のあるじ、セネカに騙されたんじゃないだろうか。)


との心配が肋骨むねをよぎった。






 冒険者ギルドの扉を開ける。


そこで、すっかり軽くなった素材を換金する。


珍しい素材も無いのでスムーズに銀貨にわった。


これが普通だ。


冒険者は、稼げる者は稼ぎが大きく、金貨が飛び交う職業とはいえ、報酬を銀貨でもらう人が多い。


通常のお店の支払いは、主に銅貨や銀貨で取り引きされている。

屋台で金貨を払われても、店主はお釣りに困る。

普段の取引に金貨は使われない。

金貨は、商人や貴族が使うものという認識だ。

平民の中には、金貨に触った事が無いとか、人生の中で金貨に触るのは税金を払う時と娘を嫁にやる時だけ、という人も居るくらいだ。

それくらい、金貨は庶民に馴染なじみが無い。


冒険者は、パーティーを組んでいる場合がほとんどなので報酬の分配がある。

その際、金貨だと分けにくいという事情もある。


他にも事情はある。

だいたい両替には、少なくない手数料を取られるものなのだ。

昔は、日本でも世界でも、両替にはけっこうな手数料を取られている。

両替の専門店まであったくらい儲かる商売(それだけを商売にしていたわけでは無いが)・・・つまりそれだけ手数料が取られていたのだ。


ギルドの報酬で金貨が支払われるのは、報酬が高額で、貨幣の数が嵩張かさばる時くらいである。

なので冒険者は、いつか依頼料を金貨で受け取るくらいに成りたいものだ。と口にする。


 掲示板を見るが、特に変わった情報も無いようなので、すぐにギルドを出るかと思ったが、セネカはまだ依頼の紙をながめている。


俺も何となく掲示板を眺める。


もう3周目くらいになるが、元々こっちの世界の知識が無いので、掲示板の文字程度の情報でも飽きることはなかった。


魔物の記述だけでも知らない事ばかりだし、見ていて面白い。


仲間は見飽きているのか、そこらでブラブラしている。


が、そろそろ出ようかという時に、デュークが受付嬢に呼び止められる。


パーティー名を聞かれ、『木漏れ日の樹』であることを確認された。


アヤトやセネカを見た後(認識疎外の魔法効果が掛かったローブのおかげで、アヤトはよく見ると怪しい白い仮面の顔が、セネカは怪しい魔法使いに見える)、デュークに声を掛けた事は気になったが、何でもギルドマスターが木漏れ日の樹のパーティーメンバーを呼んでいるとのことだ。


残った素材の換金の際に、職員の一人がカウンターの奥に行ったと思っていたが、事務手続きでは無く、上司の元に走っていたようだ。


アヤトは、(また何かやったのか)と思って目を向けたら、にっこりセネカと目線が合った。


くわばらくわばら。


俺はセネカの後ろに居た大柄な冒険者を見ているふりをする。

がいこ・・・この姿になってから、口笛が吹けなく成った事が残念である。


職員の案内でギルドマスターが居るであろう客屋に案内される。

案内役はおじさんか・・・受付嬢の方が良かったが、まあ、仕方ない。


あれ?、何も無い。


てっきり、警備の者でも飛んで来るかと思ったが、違うようだ。

セネカは何もしていないのだろうか?。


丁寧に奥に通された。

来客用のひんさそうな調度品のある個室のうえ、お茶菓子まで用意されている。


そこに居たのは、ガタイのよい顔の左側に傷のある隻眼の男で、部屋の雰囲気に合っていない。


用意された紅茶のセットより、壁に掛けてある虎のような動物の毛皮が似合う男であるが、れっきとしたこの街のギルドマスターで、ルサンバと名乗った。


挨拶もそこそこに、あるパーティーのことを相談された。


まあ、その話しをギルドマスターとしていたのはセネカだけだったが。


おじ・・・職員の手により入れられた紅茶にギルドマスターが一口ひとくち 口をつけ、セネカも紅茶を飲む。


アヤト以外のパーティメンバーも菓子をつまみ、お茶を楽しんでいるかんに、扉を叩いてやって来たのは一人の男だ。


まだ若いが、好青年そうだし、ところどころ金属が使われた革鎧は、それなりのしなに見える。

綺麗な茶色の髪と青い目を持つさわやかなイケメン、背も高い。

挨拶も、冒険者とは思えない丁寧なものだった。

こいつは間違いなく敵・・・じゃなかった。

この街の、それなりの冒険者だろう。


彼の名はオランド、この街に2組しかいないランクAの冒険者パーティー『天薙の払い』のリーダーだそうだ。


ギルドマスターから相談を受けたのは、その『天薙の払い』のパーティーメンバーの1人がわずらった病気についてだ。


ただの病気なら冒険者ギルドが口をはさむ事は無いそうだが、冒険者ギルドが出した依頼をきっかけに病気が発症したので、ギルドとしても放ってはおけないらしい。


さらに詳しく話しを聞くと、『天薙の払い』のメンバーの魔法使いが、ある依頼の後に起こったトラブルがきっかけで体の調子を崩したとのこと。

当初は、しばらくすれば治ると思っていたが、その後、一向いっこうに良くならなかったらしい。


さいわい、依頼自体は見事に達成し、『天薙の払い』のメンバーに1人の死人も出なかった。


『天薙の払い』のパーティーは、魔法使いの病気を治すべく打てる手は打った。


この街や近隣の治癒魔法士・治療士・薬師・聖職者・魔法使い、全てに当たってみたがどうにも出来ず、冒険者ギルドを通して国から有名な治癒術師を派遣してもらったが、原因さえ分からなかったそうだ。


途方とほうれていたところ、治療院と魔術集会の二つの組織から紹介されたのが『木漏れ日の樹』というパーティーだ。


いわく、そこに所属するセネカという魔術士なら何とか出来るかも・・・とのことだった。


降って湧いたような情報、「ところで木漏れ日の樹なんてパーティー知っているか?。」とギルド内で情報を集めていたところにおとずれたのが、木漏れ日の樹と登録された冒険者カードを持つ自分達。


同姓同名・・・じゃないが、同じ名前の別のパーティーかもしれないが、例えそうでも何か情報を持っているかも、と声を掛けた次第しだい


アヤトはセネカを見る。じっと見る。


偶然、都合良くセネカが来た?・・・怪しい・・怪しすぎる。


セネカも困っている。


「取り敢えず、魔法の治療はそれなりに自信があります。

しかし、その人を診てみない事には何とも・・・」


オランドに向き合い、こちらの視線には触れない。


(おい!、まず俺に向き合え。)


「なら今からでも!。」


切実せつじつなオランドのかす言葉の方が、アヤトの無言より圧が強い。


オランドに押されるように、アヤト達パーティーは、彼の仲間の魔法使いの元へ行くことになった。




 『止まり木の宿ラグム』 それが『天薙の払い』の冒険者パーティーが、この街を拠点とする為に借りている常宿じょうやどだ。


病気になったという魔法使いが居る場所だ。


くなり、出迎えた宿屋の娘が、セネカの前で赤くなっている。


アヤトの前では、一瞬止まり青くなった顔を引きつらせ、営業スマイル。


他のパーティメンバーにも笑顔で挨拶する若い娘。

すごく美人ではないが、なかなか可愛らしい娘だ。

い従業員だ・・・困ったことに。


木漏れ日の樹のメンバー全員がローブを持っているが、セネカとアヤトは認識疎外の魔法が掛かったローブを身につけている。


だが、その認識疎外の魔法は完璧ではない。


これは、セネカの魔法の腕が悪いのではなく、完全な認識疎外の魔法は無いからだ。

実際にはあるが・・・少なくとも無いことになっている。

効果の高い認識疎外の魔法は禁術である精神干渉の魔法に分類されるからだ。

世界刻印魔法という定形魔法の認識疎外、安全が実証された(?)幾つかの認識疎外の魔法は使ってよいことになっているが、それ以外の認識疎外魔法は使ってはならない。


なので、意識してよく見れば、ローブを被っていても中の顔が認識できる。


客の顔をしっかり見て、しかもセネカの顔を認識できているこの宿屋の娘は、宿屋の従業員としては優秀ということになる。


そういう時は、目深まぶかにフードを被り、物理的に顔を隠す必要性が出てくるので面倒だ。


本当に優秀な宿屋のむすめだ。


「あの・・こちらです。」


失礼にならない範囲で微妙にアヤトから距離をとり、セネカを部屋に案内する娘。


・・・本当に優秀な宿の従業員は、接客対応において、あからさまな差をつけたりしないので、俺の勘違い だと思う。うん。


世の中は不条理だと思った。




 冒険者パーティー『天薙の払い』所属の魔法使いは、名をキャスベルといい、金の髪とオランドより薄い色の綺麗な青い目をした女性である。

見た目の歳は20台のなかばくらいか。


キャスベルはベッドから出て座ろうとしたが、オランドとセネカが止めた。

寝台で体の上半身だけ起こし、長坐位ちょうざいの姿勢でセネカの診察しんさつを受けている。


セネカは、キャスベルのひたいに当てていた手を離す。


「魔力のバランスが崩れていますね。

無理に魔法を使ったでしょう?。」とだけ言った。


オランドや他の『天薙の払い』の仲間に確認すると、確かに強い魔物と戦って、その際にトラブルがあり、無理に魔法を使ったそうだ。


セネカはキャスベルにいくつか質問した後、部屋から出る。


アヤト達『木漏れ日の樹』のメンバーも後に続く。


オランド達『天薙の払い』のメンバーも、女性メンバー1人を残してこちらに移動して来た。


病人の所に、大勢おおぜいでお邪魔するのは迷惑なのもあるが、


「キャスベルの容体はどうなんだ。」 これを聞くためであろう。


オランドが、メンバーを代表してセネカに詰め寄る。


「先ほど言った通りです。

体内の魔力のバランスが崩れています。

治療をすれば元気にはなりますが、元の状態には戻りません。

今後、魔法は使わない方が良いでしょう。」


「なっ、彼女は魔法使いだぞ。」


「魔法使いだからです。

これ以上魔法を使うと、体調の悪化は加速して治せなくなってしまいます。」


「彼女は何の病気なんだ。」


「・・・・・・あまり言いたくはないのですが、それでは納得しないでしょう。

ただし、これから言うことは本人以外には他言無用です。

キャスベルさんの家族であっても口外しないでください。

『精霊化現象』と、私は呼んでいます。

魂のバランスが崩れて、それを補う為に周囲から魔力を集めてしまう病気です。

過剰な魔力を集める事で、体が耐えきれず身体しんたいを壊してしまう・・・病気と言うより現象に近いのですが・・・、恐らく、かなり無理に魔法を使った反動でしょう。

私に出来ることは、これ以上症状を進行させない事くらいですね。

取り敢えず、常にこの魔道具を身に付けてください。

周囲からの魔力を遮断する魔道具です。

あとは、邪気や邪念を取り込まないように精神の修行ですね。

魔物がいるような場所へも行かない方がいでしょう。

今の彼女は、魔素や邪気の影響を受けやすくなっていますから・・・当然 冒険者は引退してもらいます。」


セネカはテキパキと話す。

その態度は、冷静というか、何と言うか、慣れた様子だ。

精霊化現象と言うセネカの言葉が本当なら、相当 珍しい現象のはずだが、それを感じさせない指示。

とても、今まで誰も分からなかった病気の診察をしていると思えない。


アヤトがそのことを指摘すると、


「それはそうですよ。

まず、私は薬師や治療士の経験があります。

治療院【螺旋の階段を歩む者】の高弟こうていでもあります。

それと、私自身も彼女と似たような状態になったことがありますから。

正確には、病気ではないのですが、体調が悪くなる事には変わりがないので病気ということでいいでしょう。

自分が同じような病気になった事があるのですから、対処に慣れているのは当然です。」


平然と言ったセネカに、光明こうみょうが見えたみたいに顔を上げたオランド。


「あなたも魔法使いなのですよね?。

今 魔法が使えているという事は、彼女も使えるようになるのでは?。」


「もちろん、魔法使いとして生きる道もあります。

が、私としてはお薦めはしません。

下手をすると死にますし、世の中には死よりも恐ろしい事がありますから。

魔法使いとして生きるにしても長い修行をしてからです。

冒険者として活動するなら、少なくても5年の修行期間はみてください。

どうしても、すぐに魔法を使いたいなら命を削って魔法を使うしかありません。

使用するだけなら、今でも使用可能でしょう?。

今の彼女の体は周囲の魔力の影響を受けやすく、魔素や邪気に対しても耐性が弱くなっています。

魔法の行使の途中で集中力を途切れさせたり 制御を失うと、魔法が暴走したり 精神に深刻なダメージを受けます。

冒険者に無理をするなと言うのは無理な話しです。

いつか必ず無理をします。

その時、確実に悲惨な結果をまねきます。

彼女にとって何が最善か考えてください。」


「「・・・・・・・・・・・・・・」」


『天薙の払い』のメンバーからは言葉も無かった。




 「キャスベルさんには後で私から話しがあります。」


セネカは、そう前置きしたうえで、


「パーティーメンバーであるあなた達には、あらかじめ内容を伝えておきますが、私の治療を受けるつもりがあるなら、いくつか条件があります。


それが受け入れられるかどうかで、私が治療を引き受けるかどうかを決めさせていただきます。


1つ、先ほど言った通り冒険者は引退してもらいます。

1つ、キャスベルさんには、療養の為 此処ここから遠く離れた別の街で暮らしてもらいます。

   また、この街には二度と近付かないことを誓ってもらいます。

1つ、仲間の皆さんに関して、キャスベルさんが修行を終えるまで面会は禁止です。彼女に付き添うつもりなら、その人も冒険者は引退してもらいます。

1つ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


セネカが告げた条件は無茶なものだ。


それを聞いた『天薙の払い』のメンバーは、最初、何を言われたか分からず呆然ぼうぜんとしていたが、その意味が頭に入ると反発した。


「何だその条件は!。」


強く叩きつけられたセリフだが、セネカがひるむ様子はない。


「彼女はこの土地と深く結びついた精霊使いです。

土地の魔力との縁が深い。

土地の気の影響を受けないようにする為、此処ここを離れて養生ようじょうするのは正しい判断です。

冒険者引退するのも、仲間に危機が迫った時、彼女に仲間を見殺しにする判断が出来ますか?。

つい魔法を使ってしまうのでは?。

冒険者が、魔素の在る所に行くのを拒否する事が出来ますか?。

それなら初めから、安全な街で生活した方が良い。

それだけの理由です。

仲間から離れるのも、これから普通に暮らす為、長い修行をしてもらいます。

それには、たまに来る仲間なんてものは邪魔でしかありません。

来るなら一生を掛けるつもりで来てください。

まあ、仕事に関しては、商会の事務や護衛の仕事で良ければ紹介できますし、生活に困ることはありません。

街の中で暮らす限りは、キャスベルさんは安全です。

面会は出来ませんが、連絡手段として、手紙のやり取りくらいはしても大丈夫ですで問題ないでしょう。

仕事は冒険者稼業だけでは無いのですから、今のうちに辞めた方が彼女の身の為です。」


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


最後にセネカは、強い調子で念を押す。


「私が治療するなら、中途半端なことをするつもりはありません。」


『天薙の払い』のメンバーの雰囲気は更に暗くなる。


やっと見つけた仲間のやまいの治療が出来る魔法使いのことが、パーティーメンバーのそれぞれの心に波紋はもんを落とした。








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