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異世界怖い  作者: 名まず
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###アヤト、薬草の講義を受ける


 アヤト達『木漏れ日の樹』パーティーメンバーが学園に着いたのは夜で、次の日、出来るだけさりげなく授業に出たが、アヤトはやっぱり目立っていた。


コソコソと周りの学生の声が聞こえる。


俺が噂の中に入ることはない。


こちらには話し掛けて来る学生も居たが、学園祭のお化け屋敷での事や、バハムート討伐の顛末てんまつ空船そらふねの事を聞きに来る野次馬で、俺は噂に関して曖昧あいまいに言いよどんだ。


一言でも答えたら騒ぎに発展しそうだ。


俺が噂の中心、台風の目なのだとしても、ノーコメント・・・その件に関しては答えられません。


役人や政治家のようなセリフが頭に浮かぶ。


結果、目線だけ、チラチラ、と、こちらに視線が・・・何とも言えない空気が生まれる。


俺はあまり空気を読む方ではないが、これぐらいは読める。


だが、先ほども言った通り、その件でアヤトに答えられることは無い。


皆の視線を無視する。


台風の中心は無風なものだ。


いだ心で勉学に集中するべく自分に言い聞かせた。





 このカノヴァの学園は単位制で、単位を修得しないと進級できない。


日本の小中高校のように、ある程度 出席さえしていれば進級できるというものではない。


なので、俺は講義を履修して単位を取らなくてはならないのだが、基礎科卒業に必要な単位の修得は遅々として進んでいなかった。


単位を取るどころか、出席さえ出来ていないのが現状である。


それでも、ようやく死霊魔術基礎講座の履修を終えた。


基礎講座なので、最終試験の筆記試験はそれほど難しく無く、実技の試験も無事クリア出来た。


全ての試験を終えると、ディレークト先生は言ってくれた。


「君は存在しているだけで死霊魔術士として合格だ。」


(もっと早く言え!。)


セネカに脅されて、結果に戦々恐々としてたのに・・・達成感が消えたよ。


ともかく、ようやく一つ関門かんもんをクリアした。


履修に最低半年掛かるような講座の単位の修得は、これが初めてなので嬉しい。


ディレークト先生には大変お世話になりました・・涙が・・・・出ない。


まあ、次の死霊魔術の講義も、ディレークト先生の講座なのだから、特に感慨かんがいはない。

1つの講座が終了しただけだ。


ディレークト先生は、基礎科・専門科・初等部はもちろん、大学でも死霊魔術を教えている死霊魔術の専門家、アヤトがこの学園で死霊魔術を学ぶ限りお別れではない。


 他の講義も、少しずつだが受講は進んでいる。


簡単に単位を取れるものばかりだが・・・。


最近は、新しく薬草学の講座も取った。


この【薬草学・治療の基礎講義】、受講生が多い。


こっちの世界は、封建的で知識の独占が多い社会なので、基礎とはいえ薬や治療の知識をさずけてもらえる機会なんてのは貴重である。


薬草学も専門知識になると審査が厳しくハードルは高いが、学生にって生存に有用な知識を手軽に教えてくれる【薬草学・治療の基礎講座】を受けない理由はない。


学生なら誰もがこの講義を受けるというから、学生の数も多い。


アヤトを見、噂する人の数も多い。


これ いつまで続くのだろう・・・75日で終わるだろうか・・・・・・。


ぼんやりと、薬草学の講座を履修することになった経緯を思い返す。


今、俺が受講している講座は、ほとんどがセネカが選んだものだ。


別に、受けたい講座があれば、自分で自由に受講してもいいそうだが、現状 今 履修している授業の単位も取れていない。


ファンタジー的に興味があったり、コスパ的に簡単に単位が取れそうな講義以外は受講していない。

(それに関してはセネカに白い目で見られた。算数の講座を取っただけなのに。何故だろう。寝てても出席さえしていれば単位を取れるコスパの良い授業だったのに。プライドは無いのですか。と、以後止められた。)


この薬草学の講義もセネカが選び、アヤトが学ぶべきとされる講座の一つだ。


セネカの選ぶ授業は、アヤトが魔法使いになる為に必要なものとのことだ。


俺に選択肢は無いのか聞いたことがあったが、アンデッドに務まる職業は、魔法使い以外には無いそうだ。


クソッ、さすが異世界・・・職業選択の自由が無いとは!。


まあ、死霊魔術の勉強と違い、薬草について学ぶことに不満があるわけでは無い。


でも、オレに薬草学は必要なのか、うたら、


他人ひとを治す為に決まっているでしょう。」と、あわれなものを見る目で言われた。


薬草学は、魔法使いにとって絶対に必要な知識とのこと。


薬草は治療だけでなく、魔法を使う媒体として必須のものである。


魔法は、素材に対する知識も欠かすことは出来ず、魔力を操るにあたって当然知っておかなくてはならない人間の体の構造、気の流れの把握、ポーションに関する知識、怪我や病気・毒に対する知識など、幅広い知識を学ぶ事を要求される。


戦士など他の職業に比べて、魔法使いは高度な教育を受けている者が多い。

魔法を習う過程で色々な知識を学んでいるので、世間一般では治療の知識もあると思われている。


また、後衛職である魔法使いは、仲間に守られ、後方から支援したり、高い威力の攻撃を放つのが基本だ。

前衛で戦う剣士や盾役より治療行為を行う余裕がある。


まあ、要は役割分担だ。

通常、前衛が戦いの最中にケガ人の治療に向かう事は無い。

治癒魔法使いや聖職者が居ない冒険者パーティーで、魔法使いが治療行為を担当するのは自然なことだ。


また、例え治癒士が居ても、複数のケガ人が出ることもあれば、治癒士が怪我をしたり、用事で居ないことも考えられる。


必然的に、魔法使いに治癒役のポジションが期待される。


普段の暮らしにおいても、村でけが人や病人が出た際、その治療をするのは、薬師や聖職者だが、小さな村とかだと、そんなのは居ない場合が多い。

そこにで頼られる職業の筆頭が魔法使いだ。


冒険者パーティー『木漏れ日の樹』は、セネカが居るので治療は問題無いが、アヤトには、立派な魔法使いになってもらう為に薬や治療の知識を身につけてもらいたいそうだ。


その割に、授業を受けるのを邪魔するように、冒険の依頼を受けてくるが・・・あと、世間の魔法使いの知識に対する期待が重い。




 薬草学・治療の基礎講座の授業は、よく使われる薬草の知識や傷の治療における基礎的な知識を教えることから始まった。


水の煮沸消毒や傷口を綺麗な水で洗うこと、・・・綺麗な布の使用や手を洗うことを話し始めた時は、冷や汗が出たが・・・。


熱さましや傷を負った際に血を止める薬草などの特徴、それがどういった場所にえているか。


怪我の消毒や衛生という概念、病気の知識、食中毒がどういった時に起こるか、どんな症状があるか、その対処法。


有名な毒の症状と対処法、毒を持つ魔物にやられた時にどのような対処が有効か。


実用的なことや、アヤトにとっては常識的なことを中心に教えているようだ。


ポーションについても授業で習う。


基本のポーションに使われる薬草の種類の説明などもされるが、より力を入れて教えられたのは、ポーションの作り方より、ポーションの種類やその正しい使い方についてだ。


一口ひとくちにポーションと言っても、種類も、飲むタイプの物、掛けるタイプの物、両方の用途に使える物、飲む専用のポーション、掛ける専用のポーションまで色々あるそうだ。


効能も、傷の治癒や欠損部の再生、毒・呪いの解呪、ある程度の病気に効くものから特定の病気に効果を持つ物まで、様々なものが存在する。


知識が正しくないと、飲む専用のポーションを掛けてしまい中途半端しか傷が回復しなかったり、毒に病気用のポーションを服用しかなかったりする。


複数の使用の弊害、使っては駄目な組み合わせが存在したり、瘴気しょうきの毒に普通の毒を解呪するポーションを掛けるなど意味のないポーションの使用もる。


それらの無知による事故や悲劇は、現実に多く起こっているそうで、この講座が人気の理由でもある。


なお、ポーションの作り方や材料の配分、製作に必要な魔法陣など詳しい事については、もっと上のクラスの授業を受け、審査を受け、資格を取らないと教えてもらえないそうだ。


教える方も、中途半端に薬という人の命に関わる知識を教えることや、毒など悪用される恐れがある知識を、誰にでも教えるような事はしないそうだ。


毒と薬は表裏一体、ポーションもそのたぐいのものだ。


製作は慎重にならなければならない。


今日の授業を受け、セネカに話題を振ってみたら、


「なら、今度一緒に作りましょう。次の冒険は決まりですね。」


いつもと同じみ、薬にもならぬ、毒にしかならないものだ。






 その授業を受けてから3日後、街に出て、そこから向かった先の森で薬草を探すことになった。


授業で取ったメモと植物の絵、それを実物とにらめっこしながら目の前の草にスコップを入れる。


微妙に似ているような似てないような・・・でも、多分間違いないはずだ。


アヤトは、決して絵が下手なわけではない。

滅茶苦茶上手いと聞かれたら即答は出来ないが、悪くないと思っている。

悪いのは、全部似たように見えるこの草たちだ!。


匂いや味も確かめてみるが、アンデ・・・俺の体の特性とくせい所為せいもあって、嗅覚や味覚を捉えるのは得意ではない。


セネカに聞きながら、薬草を採っていく。


アヤトは、まだ新人冒険者程度の経験値で、薬草採取は上手とは言えない。

はっきり言うと、素人のレベルだ。


薬草採取の場合、

冒険者ギルドで『この薬草を買い取っています』という張り紙がある薬草、

ポーションに使われるなど、よく使われ、常時買取している薬草、

ギルドの掲示板で依頼の紙として張り出される・・依頼人から指名された薬草、

冒険者は、これらの薬草を採って来るのが一般的だ。


他にも、自分の知識を頼りに薬草を取って、独自のルートで薬師や商人に売り込む薬草採取専門の冒険者もいるそうだ。

これは薬草への深い知識が無いと難しいそうだが・・・。


ちなみに、薬効のある動物や魔力のある動物を専門に捕まえる冒険者、護衛専門や水や海に関することを専門に受ける冒険者、アンデッド専門、素早い魔物や大型の魔物討伐が得意な冒険者など、冒険者やパーティーによって、それぞれ得意分野があるそうだ。


そんなニッチな専門家 食べていけるのか?。

もちろん、競争は激しいし、高度な専門性が必要とされるので、大変らしいが、何にでも需要はあるらしい。


 薬草採取に関して、アヤトにはアヤトの強みがあった。


薬草にも2種類ある。


薬効のある植物と魔力のある植物だ。


アヤトはオーラのようなものが見えるので、魔力のある薬草の方が探しやすい。


特に夜、魔力を頼りに探すと、より見つけやすい。


全ての植物も魔力を宿すが、何というかそういう植物は薄っすらと中に光りが内包されているのだ。


暗い森でもアヤトの目は平気だ。


夜の森は未だに平気で無かったりするのだが・・・。


アヤトの目は、正確には光りをとらえて見ているわけでは無い。


どちらかと言うと、生命エネルギーや魔法因子といったものを捉えて、世界を感じているらしい。


そうじゃないと、骨の体で目が機能するわけがない。


普通の薬草は見ても分からないが、アヤトが味を感じることが出来る魔力を宿した薬草の採取は、実はアヤトの得意分野と言える。

しかも、それらの薬草の方が・・・けっこうお値段がお高いらしい。


これでお金を貯めて、自立するというのはどうだろう?。


どこか静かな場所でスローライフ、それこそ理想の異世界ライフかもしれない・・・。


アヤトは、割と本気で薬草を探しはじめた。



 冒険者稼業の定番の一つが薬草採取だ。

こういった小さな依頼からコツコツと経験を積んでいくそうだ。


冒険者で薬草採取をやったことがない・・なんて人は少ない。


こっちの世界の住人にとっても、薬草を取るという行為は日常の一コマ、生活の一部と言える。


広い意味ではハーブなどの草木も薬草、それぞれの家の庭先で、料理に使うハーブ、胃腸にいとされる植物、健康にいと飲まれるお茶になる木や草を育てたりしている。


医者に掛かるのは高かったりで、民間療法も一般的なので、自分で薬草を採取し服用したりする。


だが、不思議なことに、この木漏れ日の樹のパーティメンバーは薬草採取に縁のない者が多い。


パーティーのランクだが、Bランクの冒険者カードを持っているメンバーにそんなことがあるのかと思うが、その原因は、ひょっとしなくてもセネカだろう。


セネカは、治療も出来るし、薬草にも詳しいから自分で採ってしまう。

お金も持っているから、無理に薬草を採取する必要がない。


セネカに薬草採取について聞くと、


「薬草は、買うのも・探すのも両方します・・・これでも薬草の専門家ですから。

傷は薬草を使わなくても自分で治せますね。

薬草は主に他人の治療や魔法の媒介として使います。」とのこと。


相変あいかわらず、そつは無かった。



 パーティーの仲間は、俺の付き添いで薬草採取に参加してくれているが、周囲にらばっている。

ただ、お互い見える範囲に居て、話しがあれば一緒に薬草を探すなど和気あいあいとしている。


ついでに、他の仲間にも薬草採取について聞いてみる。


まず聞いてみたのが一番近くに居たイシュカだ。


イシュカは俺より年下で、俺より世間知らずなので、薬草採取の経験が少なくても、そういうこともあると思う。

こっちの世界の生まれだが、俺より一般常識がない。

とてもいい子なのだが、俺よりコミュ障で心配になる。

幼い頃からほとんど外に出ることなく育ったとのことで、薬草採取もしたことが無かったらしい。

引っ込み思案・・人見知りとも言うが、デューク以外には懐いていない不思議な女の子だ。

そのイシュカであるが、常に体に内在する炎で攻撃を防御し、傷を受けること自体少ないうえ、身体の熱の影響で薬草やポーションの効能が減退するので、ポーションは使いづらい物らしい。


それと、過去に薬草採取をしなかった理由については、イシュカにとって森は鬼門なのだとか。

「何で?。」と、聞いたら、イシュカは、火の属性が強いそうで、感情が高まったりすると、周囲を自然発火させてしまうこともあるとか。

セネカの魔法で守護したり、火の魔力を封印する特別な魔道具を身につけていないと森林火災になるので、森に入れないとのこと。


「そうなの?。」


「アヤトさんが、周囲の気を、負の方に傾けてしまうのと一緒ですね。」


「そうなの!?。」


初耳だ。

俺の場合、アンデッドが発生したりするそうだ。

普段は、セネカが魔法で何とかしているそうだが・・・。


「私がいなくても、そんなことが無いように真面目まじめに修行しているから大丈夫ですよ。」


と、にっこりされて、アヤトとしては冷や汗が出る思いだ。


・・まあ、ともかく、そんな環境で育ったイシュカだから、たかが薬草採取といっても楽しいそうだ。


俺も少し楽しくなってきた。

食の楽しみがあるからだろうか。

これなんかけっこう美味しいしな。


アヤトは野菜があまり好きではない。

ピーマンとかの苦い野菜は苦手だ。

なので、野草も好きではないが、ここ最近、食事を食べてないせいだろうか、

薬草こんなものでもおいしく感じる。


・・・・・・これは逃避では無いぞ。


薬草集めに、けっこうガチになっていた。


 野山のやまめぐり一生懸命薬草を集めているイシュカを近くで見守っているのがデュークだ。


セネカから距離を取り、次はデュークに話しを聞く。


イシュカと一緒に居ることが多く、同じく5年前にカノヴァの学園に入学したそうだ。

2人は同じ召学生であるらしい。


召学生とは、余所よその土地からカノヴァの学園に召喚されて来た者で、例外なくカノヴァの大学の付属学科のクラスの所属となるらしい。

なぜ、召学生が付属クラスに配属されるかというと、そこに所属するとカノヴァ公国の国籍が付与されるからだ。


此処ここカノヴァの学園においても、召学生が召喚される詳細な条件は分かっていないそうだが、召喚された者は家庭や家・地域や国が問題を抱えている場合が多い。

召喚されて来た者が、所属する国や家族から帰国・帰省の要求があった場合、本人が了承しない限り学園がその要求を拒否する為、召喚された時点で市民権が付与される仕組みなのだとか。


ちなみに、イシュカは、召学生の中でも珍しいカノヴァ公国内から召喚された学生であるという。

召喚された場所が、すでにカノヴァの学園に来ていたデュークの傍で、そこから色々あったそうだ。

それでセネカにいろいろ借りをつくったらしい。

それ以来、一緒のパーティーで2人揃ってセネカの修行を受けているとのこと。


デュークは魔法制御や戦闘技術を鍛えるべく修行が課され、薬草集めよりも剣の修行がメイン、採取はあまりしてこなかったそうだ。

近頃 防御能力が上がり怪我をしなくなったそうで、昔に比べ、ポーションのお世話にはなっていないとのこと。


このパーティーの中で普通にポーションを使っているのはフィオーラだ。

ただ、薬草採取はほとんどしたことが無い。

子供の頃は病弱で、よく薬草でつくった薬湯くすりゆを飲んでいたそうだが、フィオーラはお嬢様暮らしで薬草はむものではなく、専属の薬師が処方するものとの認識だったらしい。

今 ポーションを飲むのは、修行や戦闘で傷付いた怪我を治す為、薬草採取するよりバトルをしたい思う性質たちであるそうだ。

ただし、サバイバルは好きなので、食べられる野草は詳しいそうだ。

お嬢様に見えて、一番 活動的なのがフィオーラであるらしい。



アルセンテは、傷の再生が早いのと、薬品実験による影響で薬や薬草に対して耐性があるので、薬草の世話になることが無く、ポーションもほとんど使わないそう。

「薬草採取?、そんなことしている時間があるなら、悪い魔法使いをぶん殴る方がいい。」らしい。


うん、何と言うか・・何と言えばいいのか・・・・だ。


ちなみに、シャロにいたっては薬草を利用することさえほとんど無かったという

そんなの当たらなければ出来ないだろ。出来ても放って置いたら自然に治るだろ?。」 とのことだ。


参考にならねぇ。


結論は出た。


「このパーティーに、俺以外 真面まともな奴はいないのか。」


(また何か変なことを考えていますね。)


声のした方では、骸骨の姿の新人採取者が見当外れのことを呟いている。


セネカは呆れながらも、静かにそれを見守った。








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