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異世界怖い  作者: 名まず
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##バハムート(後)


 船から降りる。


降りる時は、部屋の金属の床がそのまま下に降りてくれたので、戸惑うことはあってもスムーズに行けた。


人がいる所だけ空間が開いていく感じで、空間が下に伸びていく。


周りは黒っぽい金属の壁で、外部から見れば筒のような形状なのだろう。


さっきまで水のような状態だったのに、どうなっているのだろう?。


 降りて、間近でバハムートを見ると、改めて大きい。


画面で見るより さらに倍くらいの迫力がある。


その横たわるバハムートの胴体には、大きな穴があるが血は出ていない。


焦げて傷跡は炭化しているし、穴の周りのウロコは溶けて金属状になっている。


アヤト達パーティーメンバーが、しげしげとバハムートの死体を眺める。


バハムートは、こっちの世界でずいぶん有名な魔物らしく、実物は初めてだし、こういう機会でもないと、じっくり見るなんて事は無いそうだ。


俺がファンタジーイベントで、テンションが上がるようなものである。


3体のゴーレムがこちらに集まって来て、人間なら心臓のある辺りに浮き出た魔方陣から出た光りが、バハムートの牙の根元に伸びている。


3点の光りが一か所でまじわり、光りに当たった箇所が真っ白に輝いている。


それは、レーザーに見えるし、どう見てもレーザー光線にしか見えない。


(俺はつっこまないぞ!。)


何に対してかは分からないが、つっこんだら負けという信念のもと、アヤトは黙ってその様子を見ている。


皆でその様子を見物する。


セネカ以外は興味津々だ。こんな光景は滅多に見られるものじゃない。


15分ほどすると、牙が地面に落ちる。


ゴーレムの1体が、自分の身体より大きいその1本の牙を持ち上げて運んで行く。


他の2体もそれに続いて船の中に入って行った。




 「これ どうするんだ?。」


そう言ったアヤトの声に反応したように、影が動く。


違和感を感じて周りを探して、最後に頭上ずじょうを見ると、空船そらふねの周りに黒っぽい水のような物が広がっている。


それが船体の下に垂れて、四方八方に突起のような物が伸びて昆虫や機械の足のようなものになる。


「何だあれは。」


「流体金属・ナノマシン・・そういった感じのものです。

一言で言うと魔法・・ですね。」


(もう説明するのも面倒臭くなってないか?。)


船が高度を下げる。


複数の金属の足がバハムートを掴み、その身体を空に上げていく。


「・・・・・・・・・・・・」


あまりといえばあまりの光景に、アヤトだけでなく、パーティーメンバーの皆も口を開けて見ている。


「あとは・・・皆さん、ここを離れますよ。

私の魔法で、この辺り一帯を焼きます。

出来るだけ痕跡を消しておかないと、国が調査に入るでしょうから。」


証拠隠滅するらしい。


「そこまでする必要があるのか。」


「大丈夫だとは思いますが、万が一バハムートの血とかが残っていると、騒ぎになって面倒ですから。」


セネカが呪文を唱え、草原が灼熱の炎と化す。


それを避けるかのように、空船の高度は上がっていく。


ルシュラン神聖皇国の使者が迎えに来た時には、空船もバハムートの死骸も、彼らの手に届かない所にあった。






 王宮での式典やパーティーはつつがなく行われ、にこやかに なごやかな時間がが過ぎていく。


木漏れ日の樹のパーティーメンバーにとっては、退屈で窮屈な時間である。


服は、セネカがパーティーメンバー全員分 事前に用意していた。

ただ、アヤト達は ルシュラン神聖皇国の宮廷儀礼なんぞ知らない。


なので、礼儀作法を教える講師が雇われ、即席の勉強会も行われた。


その講師は下級貴族で、こういう仕事も存在している。

礼儀作法を教え謝礼を貰い、それで食っているらしい。


こっちの世界、世界が広く、国も1万も2万もあり、それぞれの国の貴族の礼儀作法がある。


ある程度 この世界共通の礼儀作法はあるそうだが、国によって礼儀作法は違ってくる。

なので、別の国の貴族に会う時は、このように教える人を雇ったりする必要があるらしい。


まあ、アヤト達はこれから行われる公式行事とパーティーさえ乗り切ればいい。

この国の最低限の礼儀作法や挨拶だけ身につければいいそうだ。


あっち側の貴族達は、こちらの無礼など気にしそうもなかったが・・・。


遠巻きに見ている貴族達は、みんな笑顔で愛想はいいが目線を合わせない・・合っても愛想笑いだ。


理由は想像がつく。


城の上に浮かぶ空船とバハムートの死体。


脅威あれもとで、『お客様』に失礼な事をする奴はいないだろう。


ここでアヤトが意味なくさけび出しても、皇王こうおう様は見ない振りをしてくれそうだ。


王様も大変である。


セネカは、話しを振られた貴族に、ワイツエルク魔法帝国の話しを面白おかしく話している。


セネカの父親の代の話しであるが、何か・・空に浮かんでいたら、勝手に空中分解したという。

ちなみに、空中分解したのは空の上の船ではなく、そのしたにあった国の方である。


当たり前だが、一国いっこくの上にあんなものが居座いすわったら、商売はとどこおるし、国の威信も落ちる。


大臣達も笑っているが、顔色は真っ青だ。


アヤトを含めた木漏れ日の樹のパーティーメンバーも申し訳なさを含んだ笑顔をたもっている。


それ以外 どんな顔をしろと?。


この場で、ほがらかに笑っていられるのはセネカぐらいだ。


もう ただの脅迫だよね?。


しばらく、そんな時間を過ごし、王様の挨拶も終わって、場の雰囲気が落ち着いてきた。


そこにセネカが、「皇王様に献上したいものがあります。」と、口上を述べる。


その言葉で、皇国の宮廷役人が静々と何か運んでくる。


両手にうやうやしくせられ、上に綺麗な布を掛けられた それの中身は見えない。


形からたぶん大きな剣だが・・・。


宮廷役人はうやうやしく歩き、セネカのそばで足を止める。

セネカの言ったセリフを、大きな声で、仰々しい言葉で繰り返す。


セネカがその掛けられた布を外すと、中から現れたのは宝石で装飾された いかにもな大剣だ。


王室に献上するんだから 質素な剣というわけにはいかないのは分かるが ずいぶん豪華な剣だ。


それが献上された時だけ、王様の顔が少し晴れやかになる。


周りの貴族達の目も、その大剣に釘付けだ。


宮廷役人が、セネカの説明を格式ばった口上で繰り返し、王がそれに頷き、大儀であると言葉をたまわる。


セネカが頭を下げ、その儀礼は終わった。


 その後の立食形式の食事会パーティーでは、セネカの周りに人々が集った。


それとなく、私にもバハムートの牙でつくった剣を売ってくれないか。という誘いだ。


それを、セネカはにこやかにさばいていく。


角や鱗も大人気だ・・・・・・全部 ことわられて意気消沈していたが。


こちらにも貴族は来るが、フィオーラが前面に出て、片っ端から断ってくれた。


フィオーラは元貴族で、礼儀作法や貴族の対応は慣れているとのこと。


それとなく聞いてくる、アヤトの不本意な噂を一刀両断してくれるので、頼もしい限りである。


イシュカは上級貴族の生まれらしいが、貴族としての教育は受けていないとのこと。


デュークも下級貴族の生まれだが、12の時にカノヴァの学園に来て、その時に貴族ではなくなったそうだ。

貴族としての教育もそれほど受けていない。と、言っていた。


シャロとアルセンテは、貴族の作法なんか、はなから学ぶ気が無い。

今回は、「最低限それらしく見えればいい。」と、言っていた。


俺?、もちろん貴族の礼儀作法なんて知るわけがない。興味もない。


女性を前面に立たせて、後ろに隠れているというのも情けない気持ちになるが、礼儀とかを気にしながら貴族と対応するのは面倒だ。

任せることにした。


それより、コソコソ 俺の事と思われる話をしているのが耳に入って気になるのだが・・・。


セネカとフィオーラを除く他のパーティーメンバーは、何とか笑顔だけで貴族の集まるパーティーを乗り切った。






 一応 帰るのを引き留められたが、本音はバハムートの素材だけ置いて帰ってくれというところだろう。


帰りの空船の中の話題は、自然とバハムートや貴族のパーティーでの話しになった。


アヤトとしては不満が残る。


アヤト自身がバハムートと戦わずに済んだのはかったが、普通 バハムートと言えば、最後のボス的な奴で、仲間と力を合わせて戦うのではないだろうか。


決して戦いたかったわけではないが、あんなにあっさり倒したのでは【伝説の魔物バハムート】という大層な名が、名前負けだ。


バハムートはすごい魔物・・・のはずである。


実際、王宮の式典や貴族とのパーティーでの会話の内容はバハムート一色で、素材についてのものばかりだった。


かなり迂遠な表現ながら素材が欲しいというお願い・・・かなり露骨だった。


あの国の貴族としては、今 話題のバハムートの素材を使った武具はステータスだし、王妃様に送られたバハムートの鱗から削り出された黒い宝石はうつくしく、ご婦人方の話題もさらっていたので、何としても手に入れたい物だろう。


それに、その素材の売買に食い込めれば、貴族としての影響力を拡大でき、大儲け出来るのは分かりきっている。


相手がそこらの冒険者なら、お金も販売ルートも持ってないだろうし、口先三寸で丸め込んで一枚嚙めるのだろうが、相手がセネカでは、それは難しい。


(それにしても、いつの間にバハムートの牙で剣を作っていたんだ?。)


そんな時間 無かったはずだ。


バハムートが倒された後、しばらくしたら迎えの使者と軍隊が来た。


向こうとしてはかなり急な出向だったが、それでも体裁ていさいを整えて、出来るだけのスピードで倒されたバハムートの元まで来たそうだ。


アヤト達は丁重に迎え入れられ、馬車に乗せられた。


その手配だって大変だったろうが、その後、時間を空けずに王宮での式典・パーティーを開催した。


本来なら、これら行事は紹介状を送ることから始まって 時間が掛かるものだ。

それをセネカが、学園での授業があるからすぐに帰る、と、主張したので、急いで開催されることになった。


もちろん、役人や役職のある貴族から、もう少し滞在してくれるようお願いされていた。

ただ、セネカが前言を撤回することは無かった。


国としては、国内を混乱におとしいれた魔物の討伐を 大々的に発表しなければならない。

だが、そこに当事者が居ない事態は許容出来なかった。

対外的な意味でも、国内的にも認められない。


式典への貴族の招集も、国民への公布も急ピッチで行われた。


国の方も大変だったが、それに1人で対応していたセネカの方も忙しそうだった。


あんなった剣を作っている暇は無かったはず・・・。


その答えは聞いてみると簡単だった。


空船そらふねの中に工作機械があります。

アヤトさん的に言うと、魔法を使ったレーザーや削る機械のような物です。

学園の私の部屋にも、似たような施設がありますよ。

そうでないと、アヤトさんの鎧とか あんなに早く作れませんから。」


「なるほど、道理で早かったわけだ。」


それに、バハムートは2年近く国に居座った憎き魔物だそうで、外部の者に倒されたことに対して、忸怩じくじたる想いがあるそうだ。


だからこそ余計に、国が依頼して協力して討伐したという体裁ていさいが欲しいらしい。


「2年近くって・・・どうしてそんなに放って置いたんだ。

もっと早く倒したらいだろうに。」


「誰が倒せるのですか。

簡単に倒したように見えたかもしれませんが、バハムートはSランク以上・・・勇者や魔王クラスでもきつい相手ですよ。

それに、冒険者が力試しに・・・なんて 国が許可を出しません。

冒険者ギルドでも手出し禁止のれが出てます。」


「なんで。」


「手を出して 倒せなかったらどうする気です。

バハムートのブレスは、街なんて簡単に焼き尽くすほど強力です。

国が総力を挙げて戦うか、国の信頼を得た勇者やランクSの冒険者が、己の全てを掛けて挑むのならともかく、普通 手を出すのをめます。

強力な攻撃力だけでなく、防御も鉄壁、目を開けた状態で大気圏を突入出来る生き物ですよ。

炎の魔法なんか効きませんし、目も弱点にはなりません。

もし手を出して、倒せず暴れられたら、それだけで国が滅びます。

下手すると被害が大陸全土にも。

深い森の奥地での遭遇ならともかく、『出会ったら黙って喰われろ。逃げてこっちに連れてくるな。』レベルの相手ですよ。

バハムートはたまに餌を取りに地上に降りて来ますが、基本 少ししたら元居た所に帰ります。

帰るまでひたすら耐えるのが、正しい対処法です。」


「少しって・・・でも、この国に2年も居たんだろ?。」


「少しですよ。

千年・二千年と生きる生物にとって2年など短い時間です。

通常はもっと短い期間で帰るのに、なかなか出て行かないので人間の方がれたようですが・・・。

経済活動がどうたらとか、信者が何やらとか、どうでもいいことを言っていましたっけ。」


「それ大事だよ!。」


あんなのが国の中にいたら、商人も寄ってこないし、国民も安心して暮らせない。

国の威信も何もない。


こいつと同じくらいたちが悪い。

なるほど・・・それでこいつに頼ったのか。

同じくたちが悪いなら、交渉出来るこいつの方が まだまし、と、思えたのだろう。


それにしては、セネカの周りに居た貴族達、怖がりながらもセネカに食い下がっていた。

そりゃ、バハムートの素材は欲しいだろうが・・・それだけでは無かったような・・・。

王族が目を光らせていたし、しつこいお願いはされてなかったようだが、それでも近寄ってきていたのは何でだろう?。


アヤトが疑問を口にする。


「それは私とのコネが欲しかったからです。

敵対しないだけでも【益】になりますし、友好を結べれば、目の前にあるモノだけでも充分利益になります。

バハムートの素材に魔王との人脈、この船、アヤトさんの体・・・・・・手に入れることが出来れば、どれほど貴族にとって【益】となるか。」


「バハムートとかは分かるが、俺の体というところは・・・どういうことだ?。」 恐る恐る聞く。


「アヤトさんの身体からだも素材としては、金貨1万枚や10万枚くらいですが、不死の秘密を研究する研究材料としてのリッチの価値は、100万枚でもおかしくありません。

実はあの国でも セネカさんは秘かに注目されていたのですよ。

あの国は死霊魔術は禁止されていますが、聖遺物せいいぶつを使った神聖術として、死体を使った死霊魔術は盛んです。

アヤトさんを殺して遺体を研究して、使えると分かればシュロブスエント聖教会の聖人の遺骸いがいとしてまつって、奇蹟を行使する材料に使用できますから。」


そういうのは宗教関係では、割とよくある話だとか・・・・・・。


宗教怖いわ!。


異世界怖い。







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