表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

10場 男同士のタンゴ


タンゴ、『ジェラシー』の旋律が、 激しく会場を満たしていく。


シオンと悠輝は、 観客の視線を一身に集めながら、 鋭くステップを刻んでいた。


その合間——。


シオンがすれ違いざま、 低く囁く。


「瑠奈と合流しろ」


次のターン。


「安全な場所へ誘導するんだ」


悠輝の視線が揺れる。


「……先輩は?」


シオンは表情を変えない。


ターン。


ステップ。


流れるような動きの中、 静かに答えた。


「俺は最後まで残る」


悠輝の眉が僅かに寄る。


「……また、 そうやって一人で格好つける」


その言葉に、 シオンがわずかに笑った。


ほんの一瞬だけ、 柔らかい表情になる。


「悠輝」


低い声。


「……はい」


シオンの瞳が真っ直ぐ悠輝を捉える。


「必ず守れ」


その瞬間——。


悠輝の表情が揺らいだ。


憧れ。


悔しさ。


追いつけない焦燥。


そして、 言葉にできない感情。


全てが胸を締め付ける。


悠輝はシオンを強く引き寄せた。


「……命令ですか?」


二人の距離が一気に縮まる。


観客が息を呑む。


シオンは悠輝を見据えたまま、 静かに答えた。


「……願いだ」


次の瞬間——。


悠輝はシオンを抱き込むように回転した。


悲鳴が上がる。


床を滑る鋭いステップ。


限界ぎりぎりの体勢。


まるで落下する寸前のような、 危険なタンゴ。


会場がざわめく。


誰も目を逸らせない。


シオンは微動だにせず、 悠輝のリードを受け流す。


二人の黒燕尾が、 激しく翻った。


拍手。


歓声。


音楽が最高潮へ達する。


その一瞬の熱狂の中——


悠輝はそっとシオンの手を離した。


視線だけを残して、 静かに人混みへ紛れていく。


シオンは一人、 舞台の中央に立っていた——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ