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モテてほしいのは俺であってオレじゃない! かつて天才と崇められた魔法使いは、100回目の転生で自分にハーレムを作らせるため奔走します。  作者: いさき
第1章 

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16

 オレが眠りについているころ。


 現実世界は夜を迎えていた。


(リア、あれから一度も起きてこない…………)


 リリが知る限り、リアの眠りはそれほど深いわけではなかった。

 それはリアの性格が、ではなく、リリである私のためだった。


(…………私が夜更かしを覚えないために夜もちゃんと眠ってるから、日中にここまで深い眠りにつくことはないんだけど)


 基本的には私が原因なのだ。


 私は好奇心が旺盛なほうで、リアの記憶はどんな会話や書物よりも魅力的だった。

 しかもそれが、いつでもどこでも閲覧できる。

 リアがそう許したとはいえ、私がレクスの記憶を真似るのを嫌ったのだろう。


(規則的な生活に、人としての最低限の礼節や暗黙の了解。部分的に間違ってるのもあったけど、リアはずっと私の手本でいてくれた)


 一つの体を共有した同士。

 その関係を一言で表すのは難しいし、長々と説明しても分かってもらえると思えない。


 親のようで、姉妹のようで、師弟のようで、友達のような。


 そのどれでもなく、そのどれよりも濃く太い関係。

 生まれてから今日まで、同じ月日を過ごしてきた。

 リアと私の繋がりは、きっと世界中のどこにも答えはない。


(…………リアは自分が思うよりもずっと、真面目で優しい。だから今回のことも、巡り巡って私のためになるように手順を踏んでくれている)


 これはリアは気づいていないが。

 

 実のところ、リリはリアが隠していた記憶を既に閲覧している。

 そして、全てを知ったうえで、リアには秘密にしたままリリは協力している。


(このままいけば、約束された時間になる。きっと、いや絶対に。あの手紙は私を襲撃するための罠だと思う)

 

 リアが一度目の自分、レクスに多くの恋人を作らせる理由。

 それは唯一の妻を殺した要因が、レクスの魔法で強化された兵器だからだ。


 今ここでレクスを殺せば、恐らくその未来は来ないのだろう。

 だけど、その先にある未来で、リアの妻が殺されない理由がないとも言い切れない。


 なにより。


(最悪の未来で起きた出来事は、レクスさま単独の犯行じゃなく、他の「魔王」の誰かと共謀したもの。だとしたら、レクスさまだけを殺しても何も解決しない)

 

 だからリアは、レクスの性格を矯正する方針を選んだ。


 最悪の未来を回避する対抗策として鍛えるために。

 リリアという体では、どう足掻いても立ち向かえないと分かっているから。


(あの手紙を無視しても、きっとそこまで事が深刻になることはない。だけど、この誘いはリアにとっても敵の正体を暴く絶好の機会。もしかしたら次はないかもしれない)


 このとき、リリに取れる選択肢は三つあった。


 一つ目はリアが起きないことを理由に、手紙の誘いを無視すること。

 二つ目はリアが起きないことを含め、姉弟子であるフロストに相談すること。

 

 そして三つ目は、リアの目覚めを待たず、リリだけで指定された場所に向かうことだ。


(できればミカエラさまに会えたらよかったんだけど…………今日は姿を見せなかったのよね)


 あの手紙がミカエラ本人のものじゃないのはリリでも分かる。

 そして手紙を送ってきた相手も、ミカエラがレクスの拠点に来ないことを知っていたはずだ。


(リアが起きてたら絶対に止められてたと思うけど…………でも、私だけ何もしないなんて耐えられない)


 今回に限っていえば、リアはリリを侮っていた。


 危険だからと説得せず、全てを隠したまま協力させ、危険には近づかせない。

 そんな甘い企てが、本当に成立すると信じて疑わなかったのだから。


「…………よし。こういうときは先手必勝だ」


 絶妙に間違った使い方をしながら、リリはリアの私物を漁り適当な魔法具を探し出す。


(これと、これ。あとこれもかな。ミカエラさまに壊されたものはそのままだから、あとはこれと、これも持っていったほうがいいかも)


 夕餉の時刻まで、あと半刻だろうくらいか。

 

 万が一を考慮するなら、自分の不在に気づかれたほうが都合がいい。

 仮に何もなかったとしても、適当な理由をつけば遅刻を誤魔化すくらいはできるはずだ。


(場所は…………わわ、誰かいる?)


 恐らくは教会から派遣された手伝いの人だろうか。

 階段を降りた先から声がしたため、慌てて引き返し遠ざかるのを待つ。


(正面から近づくほうが早いけど、念のため裏側から回った方がいいかも?)


 宿舎の正面は本館と面しているため、ある程度の出入りはお互いに見える位置にある。

 ここで見られて行き先を問われるくらいなら、死角になるルートで歩いたほうがずっと安全だ。


(今はまだ自由時間だから、けっこう出かけてる人がいるのかな)


 ときおり聞こえる笑い声は、きっと私と同じレクスの弟子なのだろう。

 私と同じか少し下の女の子が数多くいるためか、どことなく女学校に近い雰囲気がある。


(フロストさま、ルールに凄く厳しいんだよね。門限を破ってるの怒られそうで嫌だな)

 

 そんなことを考えながら、私はどうにか指定された場所の近くに到着した。


(…………やっぱりリアは起きない、よね。もうこうなったら覚悟を決めて)


「これは驚いた」


 声がした。


 思わず反射的に振り向くと、そこにいたのは高級そうな服を着た一人の男性だった。


「まさか本当に来るとは思わなかったが。指定した時間よりも早いことにも驚いた。魔法使いの端くれであれば、時間を厳守することはしないと思っていたのでね」

「…………目的は、なんですか?」

「僕が誰かは尋ねないのは、ひとまずは不問にしておこうかな。驚いていないことも含め、話が早いことは歓迎すべきだからね」


 男は納得した様子でそう言うと、おもむろに私のほうを見てこう告げる。


「目的は簡単さ。君に「魔王」の暗殺を依頼したい」

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☆☆☆完結済の過去作はこちら☆☆☆
異世界に転生したら最強になって無双できるんじゃないんですか!?    ☆☆☆☆☆
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