7,男
2025年4月11日。長野県。
面会室。
藤沼と瓦井が扉から中へ入ってくる。
そこには少し老けた男性が座っていた。
その男こそ、長野での被害者「杉村匠海」に麻薬を提供していた「小木克己」だ。
小木は不機嫌そうな顔をしている。
収監されてからというもの、当たり前のことだが麻薬を使うことはできなくなったため不機嫌なのだろう。
タバコを吸う人のヤニ切れと似たような症状だ。
「群馬の捜査1課の藤沼です。
今回はあなたに聞きたいことがあってきました。」
そう言って藤沼は写真を見せる。
それは杉村の遺体の写真である。
「これが杉村さんの遺体の写真です。
それと…」
もう2枚の写真を見せる。
それは青森と群馬での被害者の写真。
「全員、このような顔で亡くなっていました。」
「それが…自分と何か関係があると?」
「あなたが渡していた麻薬の中に毒なんかを入れていないかと…」
小木が藤沼を睨みつけた。
不機嫌だった顔がさらに曇る。
「つまり、自分は疑われていると?
麻薬を所持していたことは非がありますが、決して毒なんか仕込んじゃいない。
杉村を殺してしまえば、今のような状況になる。
それまでは平穏だったんだ。
殺す意味がない。」
確かにその通りだった。
この質問は無意味…それどころか関係が悪化するものだったと藤沼は反省。
「次の質問に行きます。
杉村さんの近くで不審な人物を見かけませんでしたか?」
「不審な人物?
作業している人以外にそんな…」
言いかけたところで小木は頭を悩ませた。
何か知っているようだ。
「気のせいかもしれんが、杉村が死ぬ前に少し変なものを見た気がするんだ。」
「何をですか?」
「黒い影みたいなものが見えたんだ。
そん時だけだがな。
その後すぐに、杉村は死んだ。」
何かを掴んだような感覚。
この質問からさらに派生していくのが懸命であると藤沼も瓦井も思った。
そこから色々聞き出せたが、どれも確信に迫れるものではないことだけは分かる。
影は人間のような形をしていたこと。
それはかなり遠くで杉村を見た時に見えたこと。
だがしかし、犯人がいたとて、完全犯罪を成し遂げることができる存在。
それに、見たのは職場でだ、その場で殺さなかったのには理由があるのだろうか?
それか本当に…麻薬による幻覚と副作用なのだろうか?
それで行くと、他の被害者の理由が分からなくなる。
つまりは、収穫はあったものの手詰まりといった形になってしまった。
そのまま、面会時間は終了。
帰ることを余儀なくされてしまった。
しかし、看守の1人から奇妙な情報を貰う。
「あの、小木と言う人、時々一人で喋ってるんですよ。
イマジナリーフレンド的なやつなのでしょうかね。それとも本当に何かを見ているのか。」
「彼の脳の検査はできないでしょうか?」
「以前にしたことがあるようですね。
しかも、少し異常があったらしく、症状としては時々幻覚が見えていたそうです。
それが今も改善されずに何かを見ているんでしょう。」
「ありがとうございました。」
そのまま車の中に戻る2人。
「遺体の検査ってまだできるかしら…」
「なんでですか?」
「さっきの小木の脳がヒントになったのよ。
もしかしたら被害者はみんな脳に何かしらの障害を持っていたとしたら…」
「なるほど、じゃあ早速戻って調べましょう。」
「今から戻っても疲れて入らなそうだから、明日にしましょう。
ご飯奢るわよ。」
車を走らせ群馬へと戻る。
途中のレストランで瓦井は夕食を奢ってもらうことになった。




