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お箸にスプーン、フォークにナイフ…
四方八方から迫りくる料理の数々。
「君代ちゃん、召し上がれ。」
「緑川先生、どうぞお食べ下さい。」
「君代先生~、はい、あ~~ん。」
「先生、口開けろよ。」
今朝目が覚めると、何故か昨夜のデジャブ状態でした。
四人は各自、朝食を用意してくれている。
如月さんのお料理は文句なしに美味しいんだけど、河北先生の腕前も中々のものだ。
二人とも和食を用意してくれているが、同じようなものでも性格が顕著に現れている。
如月さんの分はホテルの朝食のような華やかさがあり、河北先生は昔ながらのおばあちゃん臭漂うザ・和食といった感じだ。
どちらもかなり美味で、2食分でもペロリと食べられそうだ。
問題は、残りの二人である。
まず、沙里佐嬢のお料理。
可愛らしいプレートに並ぶのは、これまた可愛らしいウサギを型どった玉子焼きにタコさんウィンナー、食パンにはメイド喫茶さながらのハートデコが施されている。
見栄えは非常に宜しいのですが、一口で意識がぶっ飛ぶほど過激な味なんですよね~。
鬼市君の方は、…完全なる炭料理。
鬼市君曰く、朝食の定番ベーコンエッグらしいのですが、食材の原型を一切留めておりません。
見た目通り、うん、炭でしかありません。
天国と地獄のダブルパンチな朝食に撃沈していると、袖を捲し上げた沙里佐嬢が意気込だ様子で近付いて来る。
「君代先生!
お疲れでしょうから、沙里佐が先生の身体を隅々まで、揉みほぐして差し上げます!」
♪・♪・♪・♪・♪
「ふっ、うぅん、あ…」
「先生の良いところはココでしょ?」
「ああぁ、はぁぁん、も、もっと強くしてぇえ…」
「ふふっ、先生ったら欲張りなのね。」
「ひゃあん、あぁぁあ……
も、もう、わたし……
だ、だめぇぇーーーーーっ!!!」
艶やかな君代の声は、扉一枚の隔たりでは隠しきれず、寝室から閉め出された男たちの欲情を誘う。
誤解を招きかねませんが、実際に園田が君代に行っているのは、健全なマッサージ行為ですのよ。
君代が過剰反応しているだけで、百合展開じゃないんですよ。
「おや、声だけで興奮しちゃうなんて、若いですねぇ。」
細い目をさらに細めて笑う河北は、窮屈そうに膨れ上がった股間を注視している。
河北の視線に気付いた鬼市は、自分の手で慌てて前を隠す。
「ばっ、な、何言ってんだよ。
お、俺は健全な男子高生で、これは普通の反応だっつーの!
あんたこそ、まだ若いのに枯れてんじゃねーのかよ。」
河北は不敵な笑みを浮かべたまま、落ち着き払った様子である。
「君の期待に添えなくて残念だけど、僕はまだビンビンの現役だよ。
緑川先生の声は確かに扇情的だけど…
まあ、経験の差がモノを言うってとこかな。
あ、鬼市君って、もしかして童貞?」
「っっっ!!
んな訳あるかぁぁーーーっ!!!」
「大声出してたけど、どうしたの?
もしかして、河北先生に悪さしてたんじゃないでしょうね?」
「ち、違うし。
どちらかと言えば、俺が絡まれてる感じだし。
…ってゆーかさ、先生はなんつー格好してんだよ!」
太股が剥き出しになったバスローブに身を包む君代は、いつもの3割増しぐらい色気がある。
「だって、今までオイルマッサージしてもらってたから、身体が火照ってるし…
そんなに変な格好じゃないでしょ?」
「いやいやいやいや。
変っていうか、おかしいっしょ!?
自分が野獣に囲まれてるって、ちゃんと自覚してんの?」
意味が分からないといった様子で小首を傾げた君代は、如月の所在を鬼市たちに訊ねる。
「そういえば、あのキザ教師の姿が見えないな。」
「ああ、如月先生なら、前傾姿勢でお手洗いの方に駆け込んで行きましたよ。」
「フッ、いい歳して堪え性のない人なのね、如月先生って。」
「あいつモテそうな顔してる癖に、結構ヘタレなんじゃねーの。ウププッ。」
「…鬼市君は人のことをとやかく、言えないんじゃないかな?」
「え、何なにー?
涼汰も興奮しちゃったんだぁ。
可愛いとこあるじゃーん。」
「う、うるせぇーーっ!」
河北と園田も加わった下方向の会話を君代は理解できず、ますます首を傾げるばかりであった。
「如月さん、身体の調子はいかがですか?」
手洗いから戻った如月は、自身を心配そうに覗きこむ君代と対照的にニヤける他の面子の様子に、一瞬動揺を露にするがすぐに平静を装った。
「……大丈夫ですよ。
君代ちゃんの心配には及びませんから。」
「ケッ、何格好つけてんだよ。」
「そうよ、先生ったら不潔~。」
「随分長く籠ってらっしゃいましたね?」
またしても会話の意味を理解出来ない君代は首を傾げるばかり。
そんな君代を置いてきぼりに続けられた四人の論争(主に下関係)は、『如月はムッツリスケベ』ということで落ち着いたらしい。
き、如月さん!!
君代は、如月さんがムッツリスケベ王子でも、貴方のことが好きですよ!!
………多分。
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