第2話 幸運値が高すぎる
『』は心の中を表しています。
吉はダンジョンへと潜っていた。
2階層に進むのではなく、探索しきれていない1階層へと。
『ここは未知の世界。俺の知らないなにかが待ち受けているに違いない。』
こつこつとダンジョンを進みながら虫を踏んづけて進んでいく。
「そういえば、ステータスを確認するの忘れてた。ダンジョンに潜ったら誰にでも授けられるんだったな。」
吉はステータスを開く。
――――――
多賀 吉 (たが はじめ)
レベル 1
体力 5
魔力 3
知力 7
脚力 9
運 100
スキル 無し
称号 無し
――――――
「え?運が100?...レベル1はステータス平均が10以内っていうのは聞いてたけど...」
探索者のレベル1の平均ステータスは10以内に収まっているのが普通だ。
運はレベルが上がっても大きく数値が伸びないため、高ランクのシーカーでも運は50あるかないかぐらいだ。
吉は驚いた拍子に少しよろけた。虫を潰した音を聞きながら。
すると、足元からコロコロと小さな音が聞こえたのだ。
まさかと思い、吉は足元を見る。
「虫からアイテムドロップ...まじか!」
その虫が落としたアイテムは小さな巻物だった。
ほんとに小さく、ピンセットなしでは開けられないほどだった。とりあえずポケットにしまった。
「今日は一旦帰るか。いや、まだ1時間経ってないか。」
吉は腕時計を見てまだいけると思い、時間になるまで虫を踏み潰しまくった。それでもレベルが上がることはなかった。
あれからしばらく経ち、ダンジョンから出るとおじさんがボートで迎えに来ていた。
「よお、坊主。時間通りだな。初日はもっと潜るやつがほとんどだが、安全第一が1番だな。」
「用事ができたので。」
「んじゃ、乗りな。」
吉はボートに乗り込み、巻物のことをずっと考えていた。
おじさんがなにか話しかけていたが、ほとんど聞いていなかった。
自転車置き場に着くと吉は急いで自転車に乗り込み、家へと帰った。
「ただいま!」
「お兄ちゃん!ダンジョンはどうだったの?」
吉がドアを開けたと同時に中学生の妹の莉央は飛びつく勢いで急ぐ吉の行く先を阻んだ。
「悪い。ちょっと用事があって後でな。そこどいてくれ。」
「だめ!聞かせてくれるって約束だったじゃん!」
『まあ、急いでるわけじゃないし。』
「はあ、分かったよ。」
吉はリビングのソファへ座り込み、妹に今日あったことを話した。虫からドロップしたことを除いて。
「へえ。1階層はそうなってるんだ。ねえ、もちろん魔物は倒したよね。」
「え?あ、ああ。倒したよ。虫を。」
「ん?ふざけてるの?」
「いや、2階層は進んでないんだ。」
「どうして!2階層はスライムがいるんでしょ!味とかネバネバするのかとか聞きたかったのに!」
「ほら、1階層はまだ探索されてないし。未知のロマンってやつだよ。ていうか変な性癖だすなよ。」
「はあ、アホみたい。男ってのは意味わかんない。」
莉央はソファから離れ、1階の自室へと戻っていった。
吉も2階の自室へと向かった。鍵を閉めて。
「さて、ドロップ品の確認しないとな。」
そして吉はダンジョンで拾った虫のドロップ品を確認するのだった。




