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短編 ジャドウさんのお誕生日をおにぎりでお祝い……ってムースさん食べちゃだめです!

「ジャドウさんにどうしたら喜んでもらえるのでしょうか?」


美琴は眉を八の字にして腕を組んで唸った。


いつもの白い忍装束の上からエプロンを着て厨房に立ち、先ほどから唸り、悩んでいた。


その様子を木の影からじっと伺っていたムースは我慢ができずに問いかけた。


「美琴様、何をお悩みになっていらっしゃるのですか。美琴様が唸る姿はわたくしには耐えられないことですわ。協力できることがありましたら何なりと申し上げてくださいませ」


「ムースさん。ありがとうございます。実は――」


美琴が悩んでいたのはジャドウの誕生日のことだった。


スターの忠臣であるジャドウの誕生日は本日、2月14日。


世間ではバレンタインで大盛り上がりの日に悪辣な男はまたひとつ年を重ねるのである。



「美琴様、スター流は不老長寿が基本ですわよ。それにわざわざあのような男の誕生日など祝う価値もございませんわ。それよりも、わたくしと一緒にピクニックでも」


「それでもわたしはジャドウさんのお誕生日をお祝いしたいんです。彼も大切なスター流の仲間ですから」


「さすがは美琴様!お優しい方ですわ!あの極悪なジャドウ様でさえ、美琴様の優しさに触れたならきっと涙を流して喜ぶに違いありませんわ!」


ジャドウがスターの忠臣ならばムースは美琴の忠臣と表現しても過言ではない。


愛を傾ける方向は真逆だがその一途さという点ではどちらも同じ穴の狢である。


「ジャドウさんはチョコレートは嫌いと言っていましたし、お祝いに何か食べ物を渡したいと考えているのですけれど。ムースさん、何か良い考えはありませんか?」


「それでしたらおにぎりはいかがでしょう。美琴様のいちばんの得意料理ですもの。

美琴様の愛をたっぷりとこめれば昇天間違いなしですわ」


「ありがとうございます。ジャドウさんは普段はお酒ばかり口にしていますものね。たまにはちゃんとしたものも食べてほしいですし」


メニューはおにぎりに決定し美琴は袖をまくって料理を開始。


しばらくしてハート形のおにぎりが完成した。


額の汗を拭って美琴は満面の笑みを浮かべる。


「できました!」


艶々と輝く白いご飯粒に黒い海苔。典型的な塩おにぎりだが、美琴の愛を込めたハート形だ。


いつものように笹の葉を取り出してくるもうとすると、おにぎりが見当たらない。


「あれ? おにぎりはどこへいったのでしょう?」


「きっと、ジャドウ様に食べられるのが嫌で逃走したに違いありませんわ」


得意気に語るムースの頬には白いご飯粒がついている。


「もしかして、ムースさん。食べたのですか?」


「滅相もございません。わたくしが美琴様の愛のこもったおにぎりを食すわけが・・・・・・」


「それではほっぺについたご飯粒はどうしてなのですか」


「申し訳ございません!美琴様のおにぎりをわたくしが全部食べてしまいましたわ!」


土下座をして謝るムースの頭を優しく撫でて美琴は微笑み。


「大丈夫ですよ。頭を上げてください。また一緒に作り直しましょう」


「もちろんですわ。美琴様の頼みでしたら百個でも二百個でも朝飯前ですわ!」


こうしてふたりは仲良くおにぎり作りを再開するのであった。

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