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短編 妹さんの仇を討つ!カイザーさん悲しみの戦いです!

「久しぶりだね。お兄ちゃん」


蜂蜜色の柔らかな髪と瞳が印象的な少女は兄に軽く会釈をした。


兄カイザー=ブレッドは無言でそれを見据え、口を開く。


「……サラマンデスか」


「何を言っているの、お兄ちゃん。私だよ、ハニー=ブレッド」


「……私の妹は君に殺められた。あの日を忘れたことはない」


重厚な声を響かせるカイザーにハニーは口角を上げると、少女は赤い龍を模した甲冑に身を包んだ男の姿となった。


碧色の瞳が輝き、激しい闘気を燃やしている。


「紅騎士サラマンデス。今宵、カイザーの首を刈るべく参上した」


「……あの日の決着を付けよう」


「簡単に首をもって帰っては我もつまらぬからな。

あの時より、少しは成長したところを見せて貰わねば」


紅騎士は腰の鞘から抜刀し、構えをとる。


カイザーもコックコートで対峙し、両者の間で激しい火花が散る。


先に動いたのはサラマンデスだった。


剣を振るって斬りかかるが、カイザーは巨体に似合わぬ俊敏な動きで一太刀を回避。


砂地が剣先に触れると真っ赤な炎が上がる。


火炎は龍の息吹のように直線で燃えると、やがて鎮火してしまった。


単に斬るだけに留まらず、相手を焼くことこそがサラマンデスの刃の特徴である。


背後を取ったカイザーの両腕が伸びるが、掴まれる直前に蝙蝠にも似た両の翼を展開し、空中へと上昇。


「飛行戦ならば我の天下!お前には対抗すらできぬ!」


「……甘い」


一足飛びで紅騎士と同等の高さまで跳躍したカイザーは麺棒を手に、空中で激しい剣戟を繰り広げる。


幾重にも打ち合い、金属音が響く中、両者は砂地に着地。


体勢を整えるが、カイザーの麺棒もサラマンデスの剣も互いに使い物にならぬほど損傷していた。


額に汗を流し、紅騎士は語った。


「お前の妹は外見とは裏腹に中々の強者であった。

当時のジャドウ=グレイに勝るとも劣らぬほどの。単独で戦えば、我を倒せていたやもしれぬ。だが、負傷したお前を気遣ったときにスキが生まれ、我は背後からお前の妹を手刀で貫き――」


ここまで言った時、カイザーの鉄拳が騎士の顔面に着弾。


鼻と頬骨が折れる音と共に盛大に吐血し、悶絶。


高い鼻から蛇口を捻ったかのような鼻血を流しながらも、カイザーを睨む。


「不意打ちとは卑怯な!」


「どの口が言うのか!」


カイザーは龍騎士の口を掴み、力を加えると彼の顎は砕け、口を開くも言葉が出てこない。


おとなしくなった騎士にカイザーは言った。


「妹を失ったあの時の悲しみを乗り越え、前に進むためにも貴様との因縁に決着を付ける時がきた!」


竜騎士は先ほど破壊された骨を修復していき、嘲笑していく。


「我は不死身の再生能力を持つ。お前がどれほど攻撃を加えたところで無意味だ」


「……確かに並の攻撃でお前を倒すことは難しいだろう。だが、たった1つだけお前を倒せる技がある」


カイザーの全身が眩いばかりの光を放ち、やがて光は彼の右腕一本に凝縮されていく。


右腕を大きく引いた構えに、サラマンデスは只ならぬ危機感を募らせた。


このような構えは嘗て対決した時にはなかった。


幾年もの時を経て、新たに身に着けた奥義ということか。


一筋の汗を流し、警戒心を強め、装着している甲冑の硬度を固めていく。


普通の攻撃では掠り傷さえ付かない鎧の硬度を上げることにより、これから繰り出されるであろうカイザーの攻撃に耐えるつもりなのだ。


「天に祈り、己の過ちを悔いて、来世に生まれ変わるが良い!」


「我の鉄壁の鎧の前にはどのような攻撃も無力―ッ」


「太陽の拳!」


カイザーは己の体温を太陽と同等の温度まで高める能力を持つ。


通常は彼に触れるだけであらゆる物体が消滅してしまうが、彼はこの能力の応用技として己の魂と連動させ、右腕に力を注ぐことで一撃必殺の打撃を放つことができるのだ。


カイザーの拳が撃ち込まれた瞬間、サラマンデスは自らの鎧が拳大に抉られていくのを見た。


拳の衝撃は鎧どころか腹も背も突き破り、遥か彼方まで伸びていく。


かつて自分がハニーにしたことが数千年の時を経て返ってくる屈辱に紅騎士は歯をぎりぎりと食いしばり、血走った瞳でカイザーに射るような眼を向けるが、抵抗する力は残されていなかった。


「ぎゃあああッ……」


断末魔を口にし、紅騎士は塵のように跡形もなく消滅し、魂は別世界へと送られてしまった。


右腕を下ろし、深い息を吐きだしたカイザーは、砂地に踵を消して歩き出す。


妹の仇は取れたが、カイザーの心に重い影を落とした戦いだった。



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