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創造のSILVER  作者: 雪野
Lost Component
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62/71

15.作戦行動ログ:FDF-C12 / SCND-01

 

 ここから先は、軍に保存された作戦記録である。

 記録されているのは、時刻、結果、そして回収された音声のみ。


────────────────────────


【作戦行動ログ:FDF-C12 / SCND-01】

反規制派武装組織 殲滅作戦(第4拠点)

記録:自動戦術記録システム〈ASTR〉

記録時間:00:07:12〜00:21:48

音声補完:ミラーナ


00:07:12

前衛ユニット〈リア〉、第4拠点外壁へ接触。

外壁構造に歪み発生。


00:07:14

〈ギルダ〉視覚観測開始。

義体反応三。 全対象に異常波形を確認。


00:07:18

〈ギルダ〉 中枢硬化〈逆位相〉実行。

対象三体、動作停止。


音声ログ

「……な、なんだ……身体が……」

「動かな……」

(音声消失)


────────────────────────


00:07:26

〈リア〉侵入。 侵入速度:14.8m/s


音声ログ

「来るなッ!!」

「撃て!! 撃て撃て撃て!!」

(衝突音)

(生体反応消失:5)


────────────────────────


00:07:45

内部抵抗反応六。

〈リア〉近接制圧開始。


音声ログ

「待て! 武器は捨てる!」 「降伏す──」

(衝撃音)

「ぐぁッ……!」

(反応消失)


────────────────────────


00:08:15

〈カイル〉同期補正開始。

前衛ユニット神経負荷 −12% 義体微細損傷修復。


音声ログ

「何なんだよこいつら……!」

「人間じゃない!!…うわあっ!」

(反応消失)


────────────────────────


00:08:34

〈テオドール〉 逃走個体捕捉。 狙撃。


音声ログ 「待っ──」

(銃声)

「嫌だ……死にたく……」

(反応消失)


────────────────────────


00:08:37

〈レイ〉 敵通信網遮断。全拠点リンク断絶。

〈ミラーナ〉 断片通信復元。


通信ログ

「応答しろ!」

「誰か返事しろ!」

「全員やられた!」

「助けてくれ……!」

(通信断)


────────────────────────


00:09:02

〈ソーン〉 爆発物吸収。 味方損耗:0


音声ログ

「起爆しろ!」

「何で爆発しない!?」

「違う! それは──」

(衝撃音)


────────────────────────


00:12:44

〈エミリオ〉 敵指揮官制圧。


音声ログ

「待て!話を聞いてくれ――!」

「やめっ──」

(音声消失)


────────────────────────


00:13:58

敵残存反応:8 投降姿勢:3

義体内部に遅延起動型爆発物:2件


────────────────────────


00:14:13

司令部音声ログ

「投降の有無は判断材料に含めない。 残存勢力は、すべて排除しろ」

〈ミラーナ〉 全ユニットへ同期送信。


────────────────────────


00:14:13〜00:21:36

各ユニット、掃討行動。


音声ログ(断片)

「撃たないでくれ!」

「武器は置く!」 「降伏する!」

「お願いだ……!」

「子どもが……家に……」

「助け──」 「やめ……」

「……」

(複数反応消失)


────────────────────────


〈カイル〉補足ログ

投降個体二名の義体内部より 遅延起動型爆発物を検出。


〈ソーン〉へ情報共有。

爆発物無力化。


────────────────────────


00:22:48 第4拠点制圧完了。

敵反応:0

構造損壊:軽微

市街地被害:なし

味方損耗:0


────────────────────────


00:23:12

司令部音声ログ

「第4拠点、殲滅確認。次目標へ移動」


各ユニット 「了解」


────────────────────────



……


 僕たちは、たった八人で研究施設を占拠していた武装勢力を、一時間半足らずで制圧・排除した。


 制圧完了の報告が上がると、ヘッセンは血の匂いが満ちた施設内へ足を踏み入れた。


 床には砕けたガラスや薬品が散乱し、壁には爆発の痕が黒く焼き付いている。消火設備から噴き出した白い泡が、赤黒い血溜まりの上を静かに覆っていた。


 その奥――瓦礫に半ば埋もれた通路で、ヘッセンはアトリを見つけた。


 何も言わなかった。

 ただ静かに膝をつき、その身体を抱き上げる。

 まるで眠っている子どもを運ぶように。


 そして、彼はそのまま回収車両へ向かう。誰にも言葉をかけず、誰の視線にも応えることなく、静かにその場を離れていった。


 後から聞いた話では、アトリのために用意されていた新しい義体は、襲撃の混乱の中で、検査室ごと無残に破壊されていたらしい。未来を繋ぐはずの器は、跡形もなく砕かれていた。


 ……正直なところ、僕はあの日のことを、ほとんど覚えていない。記憶はところどころ途切れ、感情だけが抜け落ちたように霞んでいる。


 だから、ときどき軍の作戦記録を読み返しては、そこで起きた出来事を確かめる。「あの日、僕たちは何をしたのか」を。


 そして、そのたびに思い知らされる。

 あの日を境に、僕たちは「兵器」として完成した。


 戦う術を覚えたからではない。

 命令に従えるようになったからでもない。

 人を殺すことに慣れたからでもない。


 僕たちを兵器たらしめた最後の一片。


 それは、アトリを奪われたあの日に胸の奥へ沈んだ、純粋な「殺意」だった。


 欠けていた最後のピースは、皮肉なほど静かに、僕たちの中へとはめ込まれたのだ。





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