15.作戦行動ログ:FDF-C12 / SCND-01
ここから先は、軍に保存された作戦記録である。
記録されているのは、時刻、結果、そして回収された音声のみ。
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【作戦行動ログ:FDF-C12 / SCND-01】
反規制派武装組織 殲滅作戦(第4拠点)
記録:自動戦術記録システム〈ASTR〉
記録時間:00:07:12〜00:21:48
音声補完:ミラーナ
00:07:12
前衛ユニット〈リア〉、第4拠点外壁へ接触。
外壁構造に歪み発生。
00:07:14
〈ギルダ〉視覚観測開始。
義体反応三。 全対象に異常波形を確認。
00:07:18
〈ギルダ〉 中枢硬化〈逆位相〉実行。
対象三体、動作停止。
音声ログ
「……な、なんだ……身体が……」
「動かな……」
(音声消失)
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00:07:26
〈リア〉侵入。 侵入速度:14.8m/s
音声ログ
「来るなッ!!」
「撃て!! 撃て撃て撃て!!」
(衝突音)
(生体反応消失:5)
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00:07:45
内部抵抗反応六。
〈リア〉近接制圧開始。
音声ログ
「待て! 武器は捨てる!」 「降伏す──」
(衝撃音)
「ぐぁッ……!」
(反応消失)
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00:08:15
〈カイル〉同期補正開始。
前衛ユニット神経負荷 −12% 義体微細損傷修復。
音声ログ
「何なんだよこいつら……!」
「人間じゃない!!…うわあっ!」
(反応消失)
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00:08:34
〈テオドール〉 逃走個体捕捉。 狙撃。
音声ログ 「待っ──」
(銃声)
「嫌だ……死にたく……」
(反応消失)
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00:08:37
〈レイ〉 敵通信網遮断。全拠点リンク断絶。
〈ミラーナ〉 断片通信復元。
通信ログ
「応答しろ!」
「誰か返事しろ!」
「全員やられた!」
「助けてくれ……!」
(通信断)
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00:09:02
〈ソーン〉 爆発物吸収。 味方損耗:0
音声ログ
「起爆しろ!」
「何で爆発しない!?」
「違う! それは──」
(衝撃音)
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00:12:44
〈エミリオ〉 敵指揮官制圧。
音声ログ
「待て!話を聞いてくれ――!」
「やめっ──」
(音声消失)
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00:13:58
敵残存反応:8 投降姿勢:3
義体内部に遅延起動型爆発物:2件
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00:14:13
司令部音声ログ
「投降の有無は判断材料に含めない。 残存勢力は、すべて排除しろ」
〈ミラーナ〉 全ユニットへ同期送信。
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00:14:13〜00:21:36
各ユニット、掃討行動。
音声ログ(断片)
「撃たないでくれ!」
「武器は置く!」 「降伏する!」
「お願いだ……!」
「子どもが……家に……」
「助け──」 「やめ……」
「……」
(複数反応消失)
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〈カイル〉補足ログ
投降個体二名の義体内部より 遅延起動型爆発物を検出。
〈ソーン〉へ情報共有。
爆発物無力化。
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00:22:48 第4拠点制圧完了。
敵反応:0
構造損壊:軽微
市街地被害:なし
味方損耗:0
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00:23:12
司令部音声ログ
「第4拠点、殲滅確認。次目標へ移動」
各ユニット 「了解」
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……
…
僕たちは、たった八人で研究施設を占拠していた武装勢力を、一時間半足らずで制圧・排除した。
制圧完了の報告が上がると、ヘッセンは血の匂いが満ちた施設内へ足を踏み入れた。
床には砕けたガラスや薬品が散乱し、壁には爆発の痕が黒く焼き付いている。消火設備から噴き出した白い泡が、赤黒い血溜まりの上を静かに覆っていた。
その奥――瓦礫に半ば埋もれた通路で、ヘッセンはアトリを見つけた。
何も言わなかった。
ただ静かに膝をつき、その身体を抱き上げる。
まるで眠っている子どもを運ぶように。
そして、彼はそのまま回収車両へ向かう。誰にも言葉をかけず、誰の視線にも応えることなく、静かにその場を離れていった。
後から聞いた話では、アトリのために用意されていた新しい義体は、襲撃の混乱の中で、検査室ごと無残に破壊されていたらしい。未来を繋ぐはずの器は、跡形もなく砕かれていた。
……正直なところ、僕はあの日のことを、ほとんど覚えていない。記憶はところどころ途切れ、感情だけが抜け落ちたように霞んでいる。
だから、ときどき軍の作戦記録を読み返しては、そこで起きた出来事を確かめる。「あの日、僕たちは何をしたのか」を。
そして、そのたびに思い知らされる。
あの日を境に、僕たちは「兵器」として完成した。
戦う術を覚えたからではない。
命令に従えるようになったからでもない。
人を殺すことに慣れたからでもない。
僕たちを兵器たらしめた最後の一片。
それは、アトリを奪われたあの日に胸の奥へ沈んだ、純粋な「殺意」だった。
欠けていた最後のピースは、皮肉なほど静かに、僕たちの中へとはめ込まれたのだ。




