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訪れない朝

時刻は17時。

リリアとの模擬戦を終えた日、焔は家に帰ってから、まるでベッドの上で溶けるように眠っていた。

沢山動いたからか、意識はあるもののなんとなく足の先に怠さが残っており、珍しくまだ早い時間からうとうととしている。


窓の外からは微かに雨音がしていて、それがさらに焔の眠気を誘った。


焔があともう少しで眠りに落ちるという時、ガチャガチャと玄関の鍵を開ける音が聞こえてくる。


(凛太郎……?)


ドアの開く音と、水気の混じった足音が響く。

そして暫く足を止めてから、再び足音がこちらへ向かってくる。


(いや……凛太郎なら雨に濡れるはずないや。父さんかな?)


焔が起き上がろうとすると、寝室の扉が開くと共に凛太郎の声で「起きなくていいよ、寝てて。」と聞こえてきた。


「凛太郎……濡れてんの……?」


焔は暗い部屋の中で呟く。


「わり、ちょっと能力の調子悪くて……さっき風呂場借りて脱水してきた!もうカラカラよ。床もちゃんと綺麗にしたから、ごめんな。」


凛太郎はそう静かに言うと、ベッドの脇に置かれた椅子に腰掛けた。


「あのさ、俺は家汚すなって言ってんじゃなくてー……濡れたら風邪ひくじゃん、心配してんの。相変わらずなんだから……」


焔は寝転がりながら目線だけを上に向ける。すると、優しく微笑む凛太郎の顔が見えた。


夕日のせいか、凛太郎の目の下あたりがいつもより赤くなっているように見える。


「兄ちゃん、リリアに負けたんだって?相当疲れたみたいじゃん、こんな時間から寝てるとかさ。」


「へへ……そうなんだ。なんか、凄い冷える技?みたいなの使われて、炎出せねーし体動かねーしで、負けた……」


そう報告する焔は嬉しそうで、凛太郎も顔を綻ばせた。


「……記憶は?戻った?」


「え?なんで凛太郎が俺の記憶が無いらしいこと知ってんのさ。」


「ああ……えっと……リリアから聞いたんだよね。」


「なんだそっか。……戻んなかったぜ。でもいいんだ、俺このままでも満足してっしー……」


「……そっか。良かった。」


凛太郎が静かに返事をした後で、暫く沈黙の時間が続く。


「凛太郎……あのさ。俺、凛太郎と上手く向き合えなくて……でも、やっぱり俺、兄ちゃんだし?凛太郎の支えに……なりたいんだ。」


沈黙を破り、そう口にする焔。

凛太郎はそれを聞いて、少しだけ眉をひそもる。


「今までも散々支えてくれたっしょ?経済的にも、精神的にも……大丈夫だよ、俺特に助けとか求めてねーからさ。……今日は寝てろって。」


「じゃ、明日……!明日になったら、凛太郎の悩みとか、兄ちゃんが聞いてあげる。」


「そっか、楽しみだなー……ほら、さっさと寝ろって。」


凛太郎は焔の頭を撫でながら、そう優しく諭す。


「明日は……午前中が凛太郎とずっと話すタイムで……午後から一緒にゆかりを助ける為の作戦会議だ……!」


焔はそう呟くと、ゆっくり目を閉じ……

程なくして、寝息を立て始めた。


「……ごめんな兄ちゃん、襲撃なんか来ないからさ……兄ちゃんも、コズミック7の皆も、いつも通り過ごすことになるかも。」


焔の寝顔を見つめながら、凛太郎が呟く。

そして何かを決心したように立ち上がると、凛太郎は静かに部屋を出た。


「じゃあね、兄ちゃん。……大好きだよ。」


★ ★ ★ ★


凛太郎と別れた後、私は濡れたまま渋矢に戻り、ウリュウの屋敷を訪ねる。

しかしインターホンを鳴らして出てきたのは、緑川だった。


「うっわ。」


私の顔を見るなりそう声を上げる緑川。


「なんなのよその反応……あ、ごめん、びしょ濡れだからか……」


冷静になって体を見下ろす。

着替えて来れば良かったものを、濡れたままで来てしまえばこんな顔をされても仕方がない。


「違うよ、そうじゃなくてさぁ……」


緑川がそこまで口にしたところで、青年の「やめて!助けてください!」という声が響く。


ウリュウのものではない、この声は……。

嫌な予感がして、緑川の横を抜ける。


「あ!ちょっと!?絶対今行かない方がいいって!」


ウリュウの部屋に入ると、そこには縛られて椅子に座らされた灰原さんがいた。


私はゆっくりウリュウを見る。

灰原はさんは私を見るなり「リリア!良かった、なんとかして!このお兄さんにいじめられてるんだ!」と目に涙を溜めながら言い放つ。


ウリュウは振り返り、苦しそうな表情でこちらを見た。

その手にはマジックハンドのようなものが握られている……明らかにシノの発明品だろう。


「何してんのよ、あんたたち……」


私は突っ込むような元気もなく、呆れたように尋ねる。


「ち、違うんだリリア!こいつが勝手に渋矢に侵入してきたから……!」


「勝手じゃないです、ちゃんと屋敷のインターホンを押したのに、急に捕まえられて……!」


灰原さんは潤んだ瞳でそう訴えた。


「……放してあげたら?」


「なんでそうなるんだよ!こいつ侵入者だし、例の『灰原』だろ!?」


ウリュウはマジックハンドで灰原さんの頬を軽く抓りながらそう声を上げる。


「ま、まあ彼とは色々あったし、あなたにも心配や迷惑をかけたけれど……彼には丁度聞きたいことがあったのよ。」


「聞きたいこと……?」


ウリュウはそう呟いてから、灰原さんを解放し、こちらにタオルを手渡してくれた。

緑川も交え、私は灰原さんが怪人会に潜入中であること、先程の凛太郎とのやりとりを事細かに報告する。


「げ、かなりまずい状況なんじゃないそれ?コズミックブルーを止めないと、コズミックイエローが奇襲されちゃうってことだよね。」


報告を聞いた緑川が慌てた様子で言う。

ウリュウも、かなり渋い顔で黙り込んでいた。


(普通はそう思うわよね……)


少し躊躇ってから、口を開く。

するとこちらが言うよりも先に、「違います、危ないのはコズミックイエローじゃなくて、ブルー……凛太郎さんの方です。」

と、灰原さんが私の言いたかったことを全て言ってしまう。


そこで、やっと理解した。この男がここにいる理由……灰原さんは、きっと凛太郎に関係を切られてしまったのだ。


それでもヒーローを頼らなかったのは、灰原さんなりの負い目があるからだろう。


「……どういうこと?灰原君。」


ウリュウが灰原さんを鋭く睨みながら尋ねる。


「多分ですけど……凛太郎さんは、『黄瀬ゆかり』襲撃の日に、自分ともども怪人会の戦闘員を潰すつもりなんだと思います。」


灰原さんは、ウリュウを睨み返しながらそうはっきりと言い放った。

昨日上げた凛太郎の挿絵が既存キャラに似ているかもと友人に教えていただき、直すのに時間がかかっております。

明日以降修正したら再度掲載予定です。

また改稿に手間取っておりまして、明日投稿をお休みします!

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