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胸がバチバチするほど騒ぐ提案

「お待ち下さい魔王様。奴らは徒党を組んでいて非常に厄介です。」


 大股開き。冷たい視線。

 そんな魔王に対し、リリベルが眉をひそめながら説明する。


「私達も一人倒すのが精一杯で。それ以上は戦力差が――」


「一人?」


 魔王は鼻で笑った。


「たった一人か。俺を失望させるな。」


 …………。


 俺は黙って魔王を見た。


 いや。


 誰だお前。


 わかる。目の前にいるのが魔王様だというのは脳では分かってる。

 ただ、四天王に偽物が混じってた前例もあるし、この違和感は間違いじゃないと思いたい。


 てかまず口調が違うくないか?

 魔王様はもっとこう、超重低音ボイスで「皆の者!」とか「世界の半分をくれてやる」とか言いそうなタイプだったはずだ。


 こんな、いちいち偉そうで上から目線で、イケボの英雄王様みたいな喋り方はしない。


「どうした?」


 魔王が俺を見る。


「何か言いたげだな、雑種。」


 うわ!

 ついに雑種とか言い始めた。

 確定じゃんこれ。


「いえいえ! 私はただのリリベル様の側近です!」


 言いながら、俺は柱の影に隠れてこっそりとステータスを開いた。

 ステータス・オープン。


【[偽りの勇者 タカラ]】

レベル:29

スキル:USO認証(エイトハンドレッド)

効果:

現実には無い事象を、魔力を込めて発言する事により真実にする


 はいアウトーー。

 うれしくない、いっしょにくらさない、ってやつか。


「…………」


 俺は思わず額を押さえた。

 最悪だ。

 また現実改変系の異世界勇者か。しかも今回は厄介なことに魔王に化けてやがる。

 どうすんだこれ。


「異世界勇者の能力は異常だ。」


 偽魔王……いや、偽りの勇者タカラは玉座に深く腰掛けながら言った。

 お前が言うんかい。

 しかし改めて声を聞くと、イケボを無理矢理出そうとして演技感が強い。


「空間を操る者。不死の者。時間を止める者。どれもまともに戦っていては勝てぬ。」


「ええ。その通りです。策がなければーー」


 リリベルが顔を下げる。


「簡単だ」


 偽魔王は口元を吊り上げた。


「奴ら同士で戦わせればいい。」


「……は?」


「異世界勇者・覇者選定戦だ。」


 玉座の間が、一瞬静まり返る。


「各国に散っている異世界勇者を集め、最後の一人になるまで殺し合わせろ。」


 ……天才かこいつ。

 初めて異世界勇者を見直したわ。

 漫画の展開が行き詰まった時に行われる、あの天下一武闘会か。

 思いつきそうで思いつかなかった。


「最後に残った一人だけを、俺が始末する。」


「なるほど。」


 カゲヌイが小さく頷く。


「確かに、異世界勇者同士ならば、互いの異常な能力にも対抗出来る可能性があるでござるな。」


「いやでもそんな都合よく集まるか?」


 ジオウが言うと、偽魔王は鼻で笑った。


「集めればよい。『魔王軍が主催する武闘大会が開かれる。優勝者は魔王と戦う権利が与えられる。』とでも流せば、力を誇示したい愚か者共は勝手に来る。」


 あー。確かに来そう。

 異世界勇者って、だいたい自己顕示欲の塊みたいな奴ばっかだし。


「それに」


 偽魔王は四天王を見下ろした。


「貴様らでは一人しか倒せぬのだろう? ならば、使えるものは使えばよい。」


「っ……」


 リリベルが露骨に嫌そうな顔をした。

 だが。

 あの異世界勇者たちが複数人やり合ってくれるのは効率が良すぎる。

 魔王軍には、大勢の勇者を一気に相手にする力は無い。


「リリベル。」


「何よ。」


「俺、この案はアリだと思う。」


「はぁ?」


「どうせ今のままじゃ、異世界勇者が多すぎて対処しきれないんだろ?

だったら、一回減らした方がいい。

最後に残った奴だけ、俺達で何とかする。」


「…………」


 リリベルはしばらく黙っていたが。やがて、大きくため息を吐いた。


「……そうね。魔王様のお役に立てなくて残念だけど。今は、それしか無さそうだわ。」


「決まりだな。」


 偽魔王が笑う。

 いやだからその笑い方やめてくれ。共感性羞恥心が。


「では、早速準備に取り掛かれ。

勇者の王前試合、俺自ら観戦してやろう。」


「「「「はっ!」」」」


 四天王と俺が声を揃える。

 謁見の場が解散になり、それぞれが部屋を出ていく。

 俺はリリベルの隣を歩きながら、囁いた。


「リリベル。あとで彩魔術団の部屋に集まれるか。シロ団長も含めて。」


「……わかったわ。」


 リリベルは前を向いたまま、小さく答えた。

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