備え
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これからもご贔屓にお願いします。
【種族】ゴブリン
【レベル】61
【階級】デューク・群れの主
【保有スキル】《群れの統率者》《反逆の意志》《威圧の咆哮》《剣技B−》《果て無き強欲》《王者の魂》《王者の心得Ⅰ》《青蛇の眼》《死線に踊る》《赤蛇の眼》《魔素操作》《狂戦士の魂》《三度の詠唱》
【加護】冥府の女神
【属性】闇、死
【従属魔】ハイ・コボルト《ハス》(Lv1)灰色狼(Lv1)灰色狼(Lv1)
【状態異常】《聖女の魅了》
外部にオークからの襲撃、内部に不満の種と、中々愉快な状況だが、こんなところで諦める訳にはいかない。
リィリィとレシアに調査させた結果、ノーブル級ゴブリンであるギ・ガーの言った通りだった。
やはりゴブリンは恐ろしいという感情が再燃したのか、人間達の俺を見る目は恐怖に満ちていた。だが、逆にギ・ザーを見る目にはどこか安心感があるようだ。
人間に近い容姿と、先の事件を取り仕切ったのがギ・ザーだったからだろう。
見た目の大事さが分かるな。
祭祀を纏めるギ・ザーに群れの留守を任せることが多くなりそうだが、これからの方針としては、なるべくレア級のゴブリンを量産することだろう。
階級を一つ上げるだけで、その知性は格段に進歩する。
霧が晴れるように思考がクリアになり、強烈な飢餓からも開放される。故に、レア級のゴブリンを多く生み出すことによって事件を未然に防止し、同時に戦力強化にも繋げる。
後は、人間に信頼されているだろうギ・ザーを中心としたドルイドによって村の留守を守ってもらう。こんなところで要らん摩擦を生むのは避けたい。今最も重要なのは、オークの狂化に如何にして対処するかだ。
その為の労働力が必要だと言うときに、内部で揉めたくはない。
そして、偵察で止めていた練成の再開。
全ゴブリンが5日に1度、俺の前に立つ。そうやって俺の力に服従させれば、馬鹿な考えを起こさずに済むだろう。
偵察は、俺自身が出向くことが困難になったこともあって、元集落のリーダーであるギ・グーを中心として、獣士ギ・ギー、古武士ギ・ゴーらを向かわせる。
ギ・ゴーの元集落を中心として、北西から偵察を続けていく。
ギ・ガーには、階級の上昇が間近なゴブリンを率いて槍鹿を狩りに出かけさせる。全体の戦力の底上げは急務だ。
俺は集落の周囲に深い堀を巡らせ、落とし穴を作るべく、その指揮を執る。
日が高くなるまで罠作成の指揮を執り、日が高くなってからはそれをギ・ザーに引き継ぐ。そしてゴブリン達の“恐怖の一日”を開始する。
それが概ね終わった頃に、今度は灰色狼のシンシアとガストラを連れて狩りに出かける。
こいつ等を集落の監視に使えないだろうか。
幸いにも人間を恐れる様子はない。レシアやリィリィのお陰で、懐いてさえいる。
子犬程の大きさになったシンシアとガストラに合わせて、森の中を走る。
俺は狼の狩りの仕方など知らないが、獲物を見つければシンシアとガストラは自然に走り寄って仕留めようとしていた。
兎に逃げられているようでは、まだまだだが。
手近な鎧兎を捕まえると、足を折って二匹の前に転がしてやる。
後は、自分でどこを噛み破れば相手が死ぬのか、自然と学習していくことだろう。
二匹が鎧兎を食い終わった頃を見計らって集落に戻る。
堀と落とし穴は、未だ予定の三分の一が終わった程度だ。
◇◇◆
その日の夕刻帰ってきたギ・ガーの狩猟グループに、見慣れないゴブリン・レアが居た。
「王よ。本日、新しくレア級となりましたゴブリンです」
ギ・ガーの紹介で、並んで膝を突くゴブリン・レアを見る。《赤蛇の眼》を発動させると、そのステータスが浮かび上がった。
【種族】ゴブリン
【レベル】1
【階級】レア
【保有スキル】《投擲》《威圧の咆哮》《槍技C-》《隠密》
【加護】なし
【属性】なし
新しいスキルである《隠密》を詳しく見てみる。
《隠密》
──周囲に溶け込み、敵から見つかりにくくなる。
そういえば、最近は偵察や姿を隠して相手に近付くことが多かった。それの影響だろうか。
「名を与える」
「はイ」
畏まるゴブリン・レアに、俺は大仰に頷く。
「ギ・ジーとする」
深く頭を垂れるギ・ジーに、今日の狩猟で手に入れた槍鹿の一番良い肉を与える。目を輝かせるギ・ジーを下がらせると、食事とした。
リィリィに命じて、灰色狼の毛皮を俺の脛当てのように加工して使っているが、シンシアとガストラがその上でスヤスヤと眠っている。
その背を撫でながら、ふと思う。
集団戦の練習もしなければならないな。
ギ・ゴーやギ・グー、ギ・ザーは元々集落の長であったので、ある程度手下を率いての戦い方は分かっている筈だ。
だが、ギ・ガーやギ・ギー、新しくレア級になったギ・ジーなどは、ゴブリンの指揮などしたことがない。
ギ・ガーやギ・ギーは手下を率いた狩りを何度も経験しているので、まだマシだろうが……。
なら、模擬戦でもやってみるか。
オークが攻めてきて連携が出来なかったので死にましたでは、お粗末過ぎて笑えない。
これからレア級への階級上昇が続く筈だ。
それら全員に豊富な狩りの経験を積ませてやれるかどうかは、状況次第といったところだ。
少しの時間も惜しんで戦える集団にしていかなければならない群れの状況では、悠然と構えていられる余裕はない。
オークが波となって押し寄せる前に、やれることはやっておきたい。
俺が集落にいる間は、ゴブリン達も下手な真似はできない。リィリィと他の戦士2名による対人間の訓練も可能な筈だ。
山積みの問題に苦笑する。
西への経路は、ギ・グーらの帰還に期待するしかないか。
◆◇◇
待つという行為は、思ったよりも忍耐を必要とするらしい。
もっとも、レシアなどに言わせれば……
「いつも待たされる私の気持ちが分かるでしょう? 良い気味ですね」
そう言って笑われたが、気質の問題だろう。
本質的に、ゴブリンは守りより攻めなのだ。
昨日思いついた集団戦を何とか形にしてみたいと思った俺は、先日レア級に昇格したばかりのギ・ジーと、祭祀のギ・ザーに模擬戦を命じてみた。
三匹一組を5組ずつ従えて、計15匹を率いて相手を倒し合う。
手にするのは、木刀や木槍だ。
ギ・ザーを始めとするドルイドには、魔法の威力を抑えるように言い含める。
傷は良いだろうが、死ぬのは困る。
“恐怖の一日”を終えたゴブリンから順番に編成していき、30匹を数えたところで準備をさせる。これだけ大規模な戦いはゴブリン同士でも滅多にないということで、一部の警戒に出しているゴブリン以外は、老ゴブリンを含めた全員が集まってその様子を観戦する。リィリィやレシアを始めとした人間の面々も、興味深そうに見守っている。
区別を付ける為に、ギ・ザーの方には腕に赤い色を塗る。
双方に準備は良いかと問いかければ、応と答えが返ってくる。
「では、始めよ!」
俺の合図と共に、ギ・ジーをリーダーとした無色組みが一塊となって一斉に駆け出す。
ゴブリンの本質は守りより攻め。それを具現化したように、ギ・ジーを先頭に一気呵成に攻める。
「行けェ! 勝テば王カら褒美ダ!」
戦意高揚の為に褒美をちらつかせた効果があったのか、ギ・ジーを中心とした無印のゴブリン達は、赤組にそのまま突っ込んでいく。
「槍!」
だが、一塊になって突っ込んでくる無色組に、ギ・ザーは槍持ちだけを選抜して正面に構えさせる。
一言で反応する辺り、随分綿密に仕込んだらしい。
「行けェ!」
だが、それを物ともせず無色組は突っ込んだ。
「上げろ!」
ギ・ザーの号令で、構えていた槍が一斉に頭上に振り上げられる。
「叩け!」
間合いを計っていたのか。俺の内心の独白に応じるように、振りかぶられた槍が一斉に無色組の頭上に振り下ろされる。
悲鳴を上げて脱落する何匹かと引き換えに、それでも相手に肉薄する無色組。
「もう一度だ! 剣!」
ギ・ザーの声に応じて、手に持った槍を再び振り上げる赤組。そして木刀を持った赤組のゴブリンが、槍で叩かれている無色組の側方に回り込む。
「行ケ! 進メ!」
振り下ろされる木槍の打撃にもめげず、ギ・ジーが赤組の槍持ちゴブリンに取り付いて縦横無尽に剣を振るっているが、後続では無色組のゴブリンが左右から袋叩きにあって戦線離脱している。
「囲め!」
赤組の槍持ちに距離を取られ、背後には赤組の木刀持ちのゴブリン。周囲を囲まれたギ・ジーの負けだった。
「それまで!」
俺の裁定の声に、参加者全員が頭を垂れる。
周囲もかなり盛り上がって白熱しているようだったし、最初としてはまずまずの成果だった。
「双方とも、良くやった」
参加者全員に槍鹿の肉を振舞い、その日は終わりとした。
やはり群れの主として経験を積み重ねたギ・ザーと、レア級になったばかりのギ・ジーでは、指揮官としての差が大きいか。
レア級以上のゴブリンには、配下を統率して戦ってもらいたい。
だから、ある一定以上の成果を挙げられるように仕込まねばならないだろう。
狩りであったり、模擬戦であったりと、段階を踏んで教育をしなければな。




