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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
王の帰還
37/371

備え

お気に入り登録4000hit、並びに総合評価12000hitありがとうございます。

皆さんの温かい感想などのおかげで、高い評価を受けることができました。

これからもご贔屓にお願いします。

【種族】ゴブリン

【レベル】61

【階級】デューク・群れの主

【保有スキル】《群れの統率者》《反逆の意志》《威圧の咆哮》《剣技B−》《果て無き強欲》《王者の魂》《王者の心得Ⅰ》《青蛇の眼》《死線に踊る》《赤蛇の眼》《魔力操作》《狂戦士の魂》《三度の詠唱》

【加護】冥府の女神(アルテーシア)

【属性】闇、死

【従属魔】ハイ・コボルト《ハス》(Lv1)灰色狼ガストラ(Lv1)灰色狼シンシア(Lv1)

【状態異常】《聖女の魅了》




 外部にオークからの襲撃。内部に不満の種となかなか素敵な状況の群れだが、こんなところで諦めるわけにはいかない。

 リィリィとレシアに調査させた結果は、唯一のノーブル級ゴブリンであるギ・ガーの言ったとおりの内容だった。

 やはりゴブリンは恐ろしいという感情が再燃したのか、人間たちの俺を見る目は恐怖に満ちていた。だが、逆にギ・ザーを見る目にはどこか安心感があるようだ。

 人間に近い容姿と、先の事件を取り仕切ったのがギ・ザーだったからだろう。

 見た目の大事さが分かるな。

 祭祀ドルイドをまとめるギ・ザーに群れの留守を任せることが多くなりそうだが、これからの方針としてはなるべくレア級のゴブリンを量産することだろう。

 ゴブリンから階級をひとつ上げるだけで、その知性は格段に進歩する。

 霧が晴れるように、その思考がクリアになり強烈な飢餓からも開放される。ゆえに、レア級のゴブリンを多くすることによって事件の未然防止。戦力強化も同時にできるからな。

 後は、人間に信頼されているだろうギ・ザーを中心としたドルイドによって村の留守を守ってもらう。こんなところで摩擦は避けたいところだ。今必要なのは、オークの狂化に如何に対処するか。

 その為の労働力が必要だと言うときに、内部で揉めていたくはない。

 そうして偵察でストップしていた練成日の復活。

 全ゴブリンが5日に1度俺の前に立つ。そうして俺の力に服従させれば、馬鹿な考えを起こさずに済むだろう。

 偵察は、俺自身が出向くことが困難になったこともあって、元集落のリーダーであるギ・グーを中心として獣士ギ・ギー、古武士然としたギ・ゴーらを向かわせる。

 ギ・ゴーの元集落を中心として、北西から偵察を続けていく。

 ギ・ガーには、レベルアップが間近なゴブリンを率いて槍鹿を狩りに出かけさせる。全体の戦力底上げは急務だ。

 俺は集落の周囲に深い堀をめぐらせ、落とし穴を作るべくその指揮を執る。

 日が高くなるまで罠作成の指揮を執り、日が高くなってからはそれをギ・ザーに引き継ぐ。そしてゴブリン達の“恐怖の一日”を開始する。

 それが概ね終わった頃に、今度は灰色狼のシンシアとガストラを連れて狩りに出かける。

 こいつ等を集落の監視に使えないだろうか。

 幸いにも人間を恐れる様子はない。レシアやリィリィのおかげで、懐いてさえいる。

 子犬ほどの大きさになったシンシアとガストラに合わせて森の中を走る。

 狼の狩りの仕方などは俺は知らないが、獲物を見つければシンシアとガストラは自然に走りよって仕留めようとしていた。

 ウサギに逃げられているようではまだまだだが。

 手近な鎧兎を捕まえると、足を折って二匹の前に転がしてやる。

 後は自分で、どこを噛み破れば相手が死ぬのか、狩りの仕方を学習していくことだろう。

 鎧兎を二匹が食い終わった頃を見計らって集落に戻る。

 堀と落とし穴は未だ予定の三分の一が終わった程度だ。


◇◇◆


 その日の夕刻帰ってきたギ・ガーの狩猟グループに見慣れないゴブリン・レアがいた。

「王、本日新しくレア級にあがりましたゴブリンです」

 ギ・ガーの紹介で並んで膝を突くゴブリン・レアを見る。《赤蛇の眼》を発動させると、そのステータスが浮かび上がった。


【種族】ゴブリン

【レベル】1

【階級】レア

【保有スキル】《投擲》《威圧の咆哮》《槍技C-》《隠密》

【加護】なし

【属性】なし


 新しいスキルである《隠密》を詳しく見てみると。


 《隠密》

 周囲に溶け込み敵から見つかりにくくなります。


 そういえば最近は、偵察や姿を隠して相手に近づくことを結構していたからな。それの影響だろうか。

「名を与える」

「はイ」

 畏まるゴブリン・レアに、俺は大仰に頷く。

「ギ・ジーとする」

 深く頭をたれるギ・ジーに今日の狩猟で手に入れた槍鹿の一番いい肉を与える。目を輝かせるギ・ジーを下がらせると食事とした。

 リィリィに命じて灰色狼の毛皮を、俺のすねあてのように加工して使っているが、シンシアとガストラがその上でスヤスヤと眠っている。

 その背を撫でながら、そういえばと思う。

 集団戦の練習もしなければならないな、と。

 ギ・ゴーやギ・グーあるいはギ・ザーはもともと集落のリーダーであったので、ある程度手下を率いての戦いは分かっているはずだ。

 だが、ギ・ガー、ギ・ギー、新しくレアになったギ・ジーなどは、もともとどこかの集落に所属していていてゴブリンの指揮などしたことはない。

 ギ・ガーやギ・ギーは手下を率いさせた狩りを何度も経験しているからまだマシだが……。

 なら、模擬戦でもやってみるか。

 いきなりオークが攻めてきて連携ができませんでは、お粗末過ぎて笑えない。

 これからレア級へのレベルアップが続くはずだ。

 それら全員に豊富な狩りの経験を積ませてやれるかどうかは、状況次第といったところだ。

 少しの時間でも戦える集団にしていかなければならない俺の群れの状況は、ゆっくりと構えていられるほど余裕があるわけではない。

 オークが波となって押し寄せる前に。

 俺が集落にいる間は、ゴブリン達も下手なことはできないはず。リィリィと他の戦士2名による対人間の訓練も可能なはずだ。

 山積みの問題に苦笑する。

 西への経路はギ・グーらの帰還に期待するしかないか。


◆◇◇


 待つ、という行為は思ったよりも忍耐を必要とするらしい。

 レシアなどに言わせれば。

「いつも待たされる私の気持ちが分かると言うものです。良い気味ですね」

 そういって笑われたが、気質の問題だろう。

 本質的にゴブリンは守りより攻めなのだ。

 昨日思いついた集団戦をなんとか形にしてみたいと思った俺は、先日レア級に昇格したばかりの、ギ・ジーと祭祀ドルイドギ・ザーに模擬戦を命じてみた。

 三匹一組(スリーマンセル)を5組ずつ従えて、計15匹をそれぞれ率いて相手を倒しあう。

 手にするのは木刀や木槍が主なものだ。

 ギ・ザーをはじめとするドルイドには、魔法の威力を抑えるように言い含める。

 傷は良いだろうが、死ぬのは困る。

 “恐怖の一日”を終えたゴブリンから順番に編成していき、30匹を数えたところで準備をさせる。これだけ大規模な戦いはゴブリン同士でも滅多にないということで、老ゴブリンを始めとして一部の警戒に出しているゴブリン以外は、全員が集まってその様子を見守る。リィリィやレシアを始めとした人間の面々も興味深そうに、その様子を見守っている。

 区別をつけるために、ギ・ザーの方には腕に赤い色を塗る。

 双方に準備は良いかと問いかければ、応と答えが返ってくる。

「では、始めよ!」

 俺の合図とともに、ギ・ジーをリーダーとした無色組みが一塊となって一斉に駆け出す。

 ゴブリンの本質は守りより攻め、を具体化したようにギ・ジーを先頭に一気呵成に攻める。

「行けェ! 勝テば王カら褒美ダ!」

 戦意を高揚するために、褒美をちらつかせた効果があったのか、ギ・ジーを中心として赤組みにそのまま突っ込んでいく。

「槍!」

 だが、その一まとまりに突っ込んでくる無色組みに、ギ・ザーは槍だけを選抜して正面に構えさせる。

 一言で反応するあたり、随分綿密に仕込んだらしい。

「行けェ!」

 だがそれをものともせず無色組みは突っ込んだ。

「上げろ!」

 ギ・ザーのその言葉で構えていた槍が一斉に頭上に振り上げられる。

「叩け!」

 間合いを計っていたのか。俺の内心の独白に、応じるように振りかぶられた槍が一斉に無色組みの頭上に振り下ろされる。

 悲鳴を上げて脱落する何人かと引き換えに、それでも相手に肉薄する無色組み。

「もう一度だ! 剣!」

 ギ・ザーの声に応じて、手に持った槍で再び振り上げる赤組。そしてギ・ザーの声に応じて槍を持っていない木刀を持ったゴブリンが、槍で叩かれている無色組みの側方に回り込む。

「行ケ! 進メ!」

 叩かれる木槍の打撃にもめげず、ギ・ジーが赤組の槍持ちゴブリンに取り付き、縦横無尽に剣を振るっているが、後続では周囲から無色組みのゴブリンが左右から袋叩きにあって戦線離脱をしている。

「囲め!」

 赤組の槍持ちを距離をとらせて、背後からは赤組の剣のゴブリン。周囲を囲まれたギ・ジーの負けだった。

「それまで!」

 俺の裁定の声に、参加者全員が頭を垂れる。

 周囲からもかなり盛り上がって白熱しているようだったし、最初としてはまずまずの成果だった。

「双方ともよくやった」

 参加者全員に、槍鹿の肉を振舞ってその日は終わりとした。

 やはりギ・ザーのように、群れの主として振舞っていたゴブリンと、レアになったばかりのギ・ジーでは経験による差が大きいか。

 レア級以上のゴブリンには、ゴブリンを統率して戦ってもらいたい。

 だから、ある一定以上の成果を挙げられるように仕込まねばならないだろう。

 狩りであったり、模擬戦であったりと、段階を踏んで教育をしなければな。

 

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