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ゴブリンの王国  作者: 春野隠者
王の帰還
35/371

予兆

【種族】ゴブリン

【レベル】61

【階級】デューク・群れの主

【保有スキル】《群れの統率者》《反逆の意志》《威圧の咆哮》《剣技B−》《果て無き強欲》《王者の魂》《王者の心得Ⅰ》《青蛇の眼》《死線に踊る》《赤蛇の眼》《魔力操作》《狂戦士の魂》《三度の詠唱》

【加護】冥府の女神(アルテーシア)

【属性】闇、死

【従属魔】ハイ・コボルト《ハス》(Lv1)灰色狼ガストラ(Lv1)灰色狼シンシア(Lv1)

【状態異常】《聖女の魅了》




 リィリィを通して俺の提案に対する人間達の回答が返ってきた。

 結果は、諾。

 将来的にこの集落を人間に譲り渡すことを条件に、この集落の改修に人間の力を利用することに成功したと考えていいだろう。

 奴等も将来自分たちが住むことになる住居だ。決して手を抜いて作るような真似はしないはずだ。

 東の監視線と、集落の改修、さらに発展して砦のように改築する予定で一応の備えとして、俺はやっと西へ目を向けることができた。

 西には何があるのか、もちろんゴブリンの故郷である深淵の砦があることは間違いないが。オークの蛮拠する地域を抜けねばならない。それ以降の地についてはほとんど分かっていないと言った方がいい。

 まずは、偵察からだろう。

 この集落出身のギ・グー、更には、獣士ギ・ギーを中心としたグループに偵察を命じる。

 と、同時に俺自身も西への偵察を敢行する。

 ギ・グーは北西へ。ギ・ギーは南西へ。俺は真西へ。それぞれ進路をとって半日までの地域を偵察することにしていた。オークと出会ったならば、迷わず引くように言い含め、偵察に向かわせる。

 もちろん俺が出会ったら問答無用で殺そうと思っているが。

 ギ・グー、ギ・ギーではまだ無理だろう。

 それぞれゴブリンを5匹ずつ連れさせると、夜が明けると同時に偵察に出発する。

 俺も3匹ほどのゴブリンを率いて偵察に出かけたが、目的は偵察のほかにもレア級ゴブリンの増加をも目的としている。

 先日の面接で、レベルが60以上になっているゴブリンが10匹ほどいたため、それらを率いての偵察だ。

 じっくりと生態系を解明しながら、進めばいい。

 目的は深遠の砦に至る途中で拠点となる場所を探すこと。

 この集落から西へ10日の距離というのは、生半可なものではない。オーク達の襲撃に加えて、いまだ見ぬ脅威がないとも限らない。

 であれば、そこに至る拠点となる地点を探し当てたい。

 オークの蛮拠する集落、あるいはオークの拠るべき砦。防備に優れ多少の蓄えのある地点。そういうものを探し当てられたら最も良いが、そうでもなくても集団で眠れる場所を。

 オークの縄張りは周囲を開けた場所にしておくことが多い。

 それが奴らの習性なのだろう。だとすれば、その縄張りの中にこそオークが住む場所があるはず。

 木々が薄く、草木が切り払われた場所を丹念に潰して行く。

 途中で出会った角を生やした巨大な芋虫、《赤蛇の眼》で確認したところ、アローキャタピラーというそれを何匹か狩る。

 頭から背中にかけての角にさえ気をつければ、大したことはない。腹から断ち切って食してみたが、肉厚で意外とゴブリン達にも好評だった。

 遠征の折には、食料となるかもしれない。

 他には、巨大な蟻──ジャイアントアント……こいつは食えなかった。二つ首の巨大なトカゲ──リザードダブル、こいつは食えた。殻に棘を生やした巨大なカタツムリ──ピークルスナップ、こいつは食えなかった。

 西へ進むほどモンスターの分布が変わっていっている様子がわかる。

 食えるものは、確実に把握しておきたいものだ。

 モンスターはやはりというか、オークよりも強いものはいない。ここいらの主は間違いなくオークのはずだが、探してもなかなかオークに出会わないのは、なぜなのか。

 あるいは俺の認識が間違っていて、オークは西を通過してきているだけなのか?

 不審に思いつつも、日が中天に掛かる頃俺はオークの居住地と思われる西側を後にした。

 まだ、深入りすべきではない。

 警鐘を鳴らす胸に、そう言い訳して背を向けた。

 集落に戻る途中、やはりジャイアントアントやリザードダブルをできるだけゴブリンに倒させるようにして帰り、他に偵察に出したギ・グー、ギ・ギーの帰りを待って偵察を終了した。

 やはり他の地域でもオークの姿を見かけなかったらしい。

 以前灰色狼が猛威を奮い、ギ・ゴーらの集落があった北西はまぁいいとして、南西にもオークの姿がないというのはどういうことだ?

 あるいは何かの変調か。

 それが俺にとって幸運なのか、不運をもたらすのか。

 それが問題だった。


◇◆◇


 翌日は、ギ・ザーとギ・ガーに集落の守りと狩りを任せて俺は残るレア級ゴブリンの全員を連れて、北西方向に進んだ。

 集落を出る際に、ギ・ザーに何かしておくことはあるのかと聞かれたので、槍鹿の狩り場への経路でも開いておいてくれと頼んだ。

 狩り場で獲物を取っても運び入れるのに苦労するのでは、効率が悪いだろう。

 オークの姿をまったく見かけないのがどうしても気になった俺は、ギ・ゴーの集落跡を拠点として、そこから四方に配下を偵察に出すことにした。

 つまり、重点的に北西から偵察をすることにしたのだ。

 レア級ゴブリン達にそれぞれ2匹ずつ手下を率いさせると、俺は北西に向かった。

 今回は前回と違って道を知っていることもあり、朝に出発した工程は夕方にはギ・ゴーの集落跡に到着していた。

 今日はここで、一晩明かして明日から偵察をすることになるだろう。

 問題は、俺がこの洞窟に入れないという事……まぁ一晩ぐらい野宿でも平気だろう。

 歩哨を交代で出させると、俺は適当な獲物を狩り、眠りについた。


◆◇◆


 翌日に少し移動をして、偵察の目を周囲に放つ。

 危険を察知したら直ちに戻る旨言い含めて、俺自身はギ・ゴーの集落からほど近い灰色狼の巣へ向かう。

 この洞窟とギ・ゴーの洞窟を利用すれば100匹近いゴブリンでも収容できる。

 二箇所に分かれる危険はあるが、雨露を凌げるのは魅力的だ。

 後は俺の心の問題だけ。ここで灰色狼を討ち取り、その子を拾ったのだ。

 暗い洞窟の中に入ると、もはや毛皮と骨だけになった灰色狼の亡骸があった。

 お前の伴侶を討ち取ったことを許せとは言わない。

 だが、お前が命と引き換えに産み落とした子どもは元気でやっているぞ。

 その骨を集めて穴を掘り、埋葬する。毛皮は何かと使えそうだったので拾っておいた。

 使わせてもらう。俺の更なる野望のために。

 手下が戻ってくるまでの間、灰色狼の洞窟を隅々まで見て回った。

 大きな洞窟だが、他の生き物の巣となるようなことはなかったらしい。

「手ごろだな」

 拠点の候補に数えつつ、俺は手下が戻ってくるのを待った。

 そして夕方になり、戻ってきた手下から報告を受ける。

 やはり周辺のオークの姿はない。

「どういう、ことだ?」

 手下の報告を聞きながら食事を取り、今後の方針を考える。

 俺たちの集落から約1日の距離にオークの姿はない。普段なら喜ぶべき事態のはずなのに、俺の胸はどうにも騒がしかった。

 これだけの範囲を探してみても見つからないというのは……。

「ドうなサイまスカ?」

 俺の思案する様子に、ギ・グーが声をかけてくる。

「……明日は西への進路を探す」

 いつまでもいないオークに拘っていても仕方がない。明日はさらに深くオーク達の住処に入り込むことにしよう。

「ギ・ゴー」

「はイ」

「ここから1日の距離で、100匹程度のゴブリンが寝起きできる場所はあるか?」

 しばらく考えた末、ギ・ゴーは頷いた。

「昔、我らが使っテイた岩山ガございマす」

 詳しく話を聞けば、ギ・ゴーがまだ普通のゴブリンだった頃に住処にしていた岩山だそうだ。だがその場所はオークに乗っ取られたらしい。

 このまま徒にオークを探し回るより、拠点を襲撃したほうが早い……か?

 その存在を確認して数が多いようなら、出直せばいいだけだ。

「よし、明日はそこへの探索を重点的にする。案内は任せるぞギ・ゴー」

「承知」

 頷いたギ・ゴーを確認して、その日は眠りについた。

 

◆◆◇


 翌日狩りを終え食料を確保すると、ギ・ゴーの案内で岩山へと向かった。

 茂みの中を歩き、周囲を警戒しながら進むがやはりオークの姿はない。

 岩山といっても高さはそれほどでもない。高さおよそ4mほどだろうか。背の高い木々から頭一つ出る程度の高さだ。岩盤が折り重なったようなその岩の所々に無数の穴がある。その岩山の周りはやはり、オークの縄張りを示すように荒れ地となっていた。

「こちラでスが……」

 案内したギ・ゴーにしてもオークの気配がないのが不審なのだろう。茂みの中から遠目に岩山を観察するが、オークの姿はない。

「やはりいないか」

 夜になって近づいて見ても、やはりオークの気配がない。

「上ってみるか」

 ギ・ゴー達を引きつれて岩山にのぼり、周囲を確認するがやはりオークの姿はない。

「どういうことだ?」

 一人闇に向かって呟いた言葉に、かえって来る返事はなかった。

 周囲を見渡す岩山の頂上から、西を見る。

 森林が続く大地に、所々ぽつんと開けた場所がある。遠くに見えるのは空に届くのではないかと思える程の大山脈。

 何かが、起きている。

 そんな漠然とした予感を抱えながら、俺は岩山の調査を終えて一旦集落へと帰還することにした。



◇◇◆◆◇◇◆◆


灰色狼の毛皮を手に入れました。


◇◇◆◆◇◇◆◆



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