第24話 交錯する予測
地下のレストランには、スイレンとノーディス、ノヴァクがいた。
「何が起こってるんだ?」
ミカがノーディスに訊ねる。するとノーディスは肩をすくめた。
「こっちが聞きたいよ。爆発の詳細も分からないし。ただただ強い魔力を感じただけ」
「アイーダが確認に行ったんだが、黒づくめの集団に襲われてどっか逃げちまったんだよ」
「黒づくめ? まさか暗部?」
ノーディスが眉間にしわを寄せる。
「爆発が暗部の仕業ってことか? それを調査しに行ったアイーダが消されそうになった......」
「あるいは君達のことが最初からバレていたとか。暗部は君の事を脅威と認定しているんじゃないかな。だから君のいないところで一人ずつ拉致、或いは処理しようとしたんじゃないかな」
「怖いこと言うなよ......まだ暗部と決まったわけじゃないし。とはいえ、俺達の事がバレてる可能性は無いとは言い切れないな」
「それともう一つ。君達が暗部と繋がっている可能性がある」
「だからぁ、暗部と決まったわけじゃないって。仮に暗部繋がりがあるとしよう。そうだとしたら、真っ先にここを狙うはずだぞ。お前らの正体が分かってるんだから」
「アイーダについてはどう説明する? なんで君に頼らなかったのか」
「俺の正体がバレないようにしたんじゃないか? あいつもあいつで黒づくめが暗部である可能性を考慮したんだろうよ。というか、お前人の心が読めるんだろ? それで俺が暗部と繋がってるか分かるんじゃないか?」
「やってるよ。揺さぶりをかけながらやったけど」
ノーディスが言いながら肩をすくめる。
「何やってんだ? あの二人」
「さあ」
ノヴァクとイヅナが二人のやり取りに首を傾げる。
「ミカさん達が暗部とつながりがあるかどうか探ってたんだよ」
スイレンが言う。が、彼女も完全にそうだという確信は持っていない。目の前で大人がよく分からないことをやっている、と言った方が状況的には正しいかもしれない。
「我々の目的を最優先するけど、構わないね」
「構わない。アイーダがそう簡単に捕まるとは思えないしな」
「......」
「おい───寝た!?」
ノーディスが目を閉じた状態で椅子からずり落ちた。
「相当読心を使ったな。爆睡だ」
ノヴァクがノーディスを抱えながらミカに向かって言う。
「今日は部屋に戻って休んでください。イヅナとスイレンを護衛につけるので」
「え!? 私達なの?」
「流石に男の人の部屋に常駐するのは......」
イヅナとスイレンがしり込みする。
「え? ちょうどいいかと思って。お前らミカがイケメンだ色々話がしたいだの言ってただろ。この人自分の身は自分で守れるだろうし......」
「言うなよ!」
「なんで言っちゃうんですか!」
イヅナとスイレンが顔を真っ赤にして叫ぶ。
「あ、悪い」
ノヴァクは悪びれる様子もなくノーディスをどこかへ運んで行った。
「......別にどっちでもいいからな」
ミカが言うと、イヅナとスイレンは更に顔を赤くして言った。
「「行く!」」
「......なんでそんなに恥ずかしがってるんだよ」
エレナとアイーダは人目に付かないように、ボロ家に身を潜めていた。
「んで、聞かせてよ。なんであんたが暗部を裏切ったのか」
「私が暗部であると知って......?」
「はあ、あんなん気づくに決まってんでしょ」
アイーダが呆れて天を仰ぐ。
「そ、そうですよね。アイーダさんなら気づけますよね、アハハ」
「アイーダさんならって、そこまで信頼関係はないでしょ。別れてからの事を話して」
「あの後、先輩に見つかって、アジトに拉致されたんです。尋問の後、私は別件で暗部として動いていました」
「別件?」
「見ませんでした? 大きな爆発」
「ああ、別件ってアレの事。てっきり暗部が私達をおびき出そうとしてんのかと」
「私とミカ様達に関係があるのはバレていますが」
「イヅナ達の事は?」
「詳しくはバレていません」
「詳しくってことは、イヅナ達外国勢力が潜んでるってこと自体はバレてるのね」
「はい」
エレナが頷く。アイーダは腕を組んで考え始める。
「ミカなら暗部が来たかもって考えるはず。それはノーディスも同じ。派手に動くことはないでしょうけど、何かしら手は打つはず。明日明後日で壺を盗まないと計画がご破算だし」
「壺? 何の話です?」
エレナが首を傾げる。
「あたしらは魔の姉弟が持っているっていう魔の赫眼を取るために動いてんのよ」
「魔の赫眼を?」
「古城の宝物庫にある壺にそいつらが封印されてるらしいの。それをどうにか持ち出して魔の姉弟を復活させようって魂胆なワケ」
「そういうことでしたか。だとしたら不味いですね。先の爆発で私ともう一人暗部員がやられかけています。警戒はこの時点から強化されるかもしれません」
「確かに。あんたも味方殺したからより警戒されるだろうし」
「......はい」
「自分でやっておいてそれって───ま、助けてくれたんだし、ありがとね。てことは暗部と派手にやりあった私達が囮になれば、ミカ達の行動を隠すことが出来るかも」
アイーダの案にエレナが顔をしかめる。
「正気ですか? 死ぬかもしれませんよ」
「うーん、そうね。いざとなったらノーディス達のアジトに行って混戦に持ち込めばいいと思うわ。どうせ明日動くだろうし。そもそも魔をこの世から消すとかどうでもいいし。私達の目標はミカを聖女に戻すことだから。あ、そういえばリムはどうしてんの?」
「動向は全く分からないです」
「えぇ、問題は起こしてなさそうだけど......あの爆発ってリムだったりしない? クラーケンとやりあうとき爆発魔法使ってたじゃん」
(そうだとしたら、時系列が合わない。それにエルフを誘拐したのはリムはおろかミカ様に勝るとも劣らない実力のある魔導士の可能性が高い。リムは魔法がそこまでうまくない。監視が出来る分身体を創るのは不可能なはず)
エレナが軽く首を振る。
「とにかく、今日と明日の日中はここに潜伏しましょう。何か行動を起こすなら日が落ちてからで」
「了解。ベッドとかないの?」
アイーダがドアを手当たり次第にあけていく。
「あ、あった......けど、一つしかないわ」
アイーダはエレナの手を取ると、寝室に連れていき、エレナをベッドに押し倒し、自分もベッドに入った。
「な、何をして......!」
「あんたが暗部にタレ込まないか心配だから」
「だからって同じベッドで寝る必要なんて......」
「ある。襲われた時に守ってほしいし」
「信用してるのかしてないのか、どっちなんですか......」
「どっちもよ」
アイーダとエレナが掛け布団の下に潜り込んだ。




