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TS聖女は超イケメン!?~聖女に戻りたいのに周りの女の子たちに溺愛されてしまうんだが!?~  作者: 大和煮の甘辛炒め


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第22話 空中戦

「......は?」

「......何事?」

 遠くとはいえ、完全に意識外で起きた爆発に二人は硬直していた。

「爆発......だよな」

「多分......リムかエレナがやらかしたんじゃない?」

「あいつらに限ってそれはないだろ」

「まあ、確かに」

 アイーダはそう言って立ち上がる。

「私、ちょっと見てくるわ」

「はあ⁉ だったら俺も......」

「あんたは人目に触れない方が良いの! そもそもあんた宿から出るなって言われてるでしょ」

 アイーダの言葉にミカが反論する。

「それはお前も同じだろ!」

「私は良いの。ヤバくなったらすぐ逃げるし、魔糸鉱石があるんだから誰にも気づかれずに見に行けるわよ。それに、リムやエレナに何かあったらどうすんの」

「く、絶対にトラブルに深入りするなよ。下手したら俺が聖女に戻れなくなるかもしれないんだからな」

「分かってるわよ」

 ベッドに置いておいた魔法銃を構えたアイーダは頷くと窓を開け、夜空へと飛び出した。





 ルプシィは襲撃犯の魔力を辿り、繁華街の上空を移動していた。

「この一帯の至る所に襲撃犯の魔力がありやがる。どーなってんだ⁉」

 視認できるだけで七ヵ所に魔力があった。

「監視の分身体といい、暗部の鑑定魔法を欺くほどの魔法、何者なんだ?」

 ルプシィが疑問を呟いたとき、繁華街でもひときわ背の高い建物から何かが落ちていくのが見えた。

「ん?」

 その落下物は人のように見えた。きらりと糸のようなものが光り、落下物がこちらに向かって飛んできた。

「魔糸鉱石? あいつも暗部のメンバーか?」

 目を凝らすと、赤毛の女がこちらに向かってきていた。その姿にルプシィは見覚えがあった。

「あいつ、エレナの言ってた協力者じゃん。やっぱりエレナ怪しいな。んで、こいつはこの件にいっちょ噛みしようとしてんのか?」

 ルプシィがアイーダを睨む。

 一方のアイーダも、魔糸鉱石で飛んでくるルプシィを見て驚いていた。

「へえ、こっちでも魔糸鉱石を応用する人いるんだ」

 てっきりテンカーン村だけの技術だと思っていたアイーダは少し嬉しくなった。

「殺しはしないから、大人しくなってくれ」

 ルプシィがナイフを投擲する。すっ飛んできたナイフにアイーダは大声をだす。

「えぇ!? ナイフ!?」

 アイーダは急な制動をかけて、地面と身体が水平になるぐらいのけぞってナイフを避けた。

「避けたな。おもしろ」

 アイーダはルプシィの興味を惹いてしまったようだ。

「何よ、あいつ!」

 アイーダとルプシィが高速ですれ違う。

「今度こそっ!」

 ルプシィが再度ナイフを投擲するが、アイーダは既に姿を消していた。

「き、消えた? どこに......」

「ちょっとあんた! なんでナイフなんか投げてくるのよ!」

 ルプシィの真上から怒号が降ってくる。見上げると、アイーダがこちらに向かって銃を向けていた。

(こいつ、いつの間に私の上に? すれ違ってから後ろ向くまで五秒もなかったぞ)

「ルプシィ!」

 ウィードが暗部員を複数連れてこちらに飛んできた。

「爆発があったんで来てみたら、お前が繁華街に飛んでくのが見えたやつがいてな」

 アイーダの存在を無視してウィードがルプシィに話しかける。

「......でかいのが来たわね」

 銃を構えたままのアイーダは黒ずくめの人間に取り囲まれたことに気が付いた。

「そこのお前! どうやって魔糸鉱石を手に入れた!」

 ウィードが訊ねる。

「故郷よ! そっちこそ、どこで手に入れたのよ!」

 アイーダが訊ね返す。が、ウィードは答えなかった。

「制圧しろ! ルプシィ、お前は作戦を続行しろ」

「分かった。こいつ、エレナと一緒にいたやつだから」

「そうか、分かった」

 ルプシィが進路を逸れる。

「はぁ、敵対するつもりはさぁ、こちらとしては一切ないんだけど」

 アイーダが言う。

(魔糸鉱石での飛行が安定している。暗部の技術科の人間か? いや、こんな奴は見たことがない)

 ウィードが質問を投げかける。

「俺達が何者か分かるか⁉」

「分かんないわよ! こっちの台詞!」

 アイーダが前方を確認する。ミカの泊っている宿屋が近づいてくる。

(爆発を確認するだけだったのに、面倒ごとに巻き込まれたわね。宿から上空に上がってこいつら撒かないと)

「もしかして、暗部だったりする!?」

「......エレナと一緒にいたな!? どういう関係だ!」

 ウィードの言葉にアイーダが訝しむ。

「あんたらが暗部かどうかを聞いてんのよ。なんでエレナの名前が出てくんの」

(てかエレナって暗部なの? 暗部かどうか聞いてエレナがどうだのって、そういうことだよね)

 アイーダが顔をしかめる。

「あー、めんどくさっ! 情報がぐっちゃぐちゃ!」

 アイーダが銃を回転させて、銃口を後ろに向けた。そしてなんの躊躇もなく発砲した。

 赤い魔力の弾が真後ろにいた暗部員の肩を掠める。

「ぐあっ!」

 メンバーが地面に激突する。

「総員、武器使用許可!」

 ウィードが指示を出した瞬間、アイーダが急上昇した。ミカの泊っている宿屋の壁をものすごい勢いで駆け上っていく。

 だが、ウィード達もすぐさま追いかける。彼らとて暗部、魔糸鉱石の扱いは訓練を受けているし、そもそも暗部になるために厳しい訓練を乗り越えている。女一人捕まえるのなどわけないこと、その場の全員がそういう認識であった。

「えーと、七人か。殺さない方がいい......ていうか殺すような度胸もないしね。クラーケンみたいな化け物ならイケるんだけど」

 アイーダが急制動をかけて、今度は一気に急降下する。

「なっ!」

 そのまま銃床で殴りつける。暗部員は力なく墜ちていった。

「あそこだ!」

 ナイフが飛んでくる。

「おっと、なんで投擲武器? 近接の方が良くない?」

 アイーダがぼやきながら人や壁に魔糸を飛ばし、圧倒的な機動を暗部に見せつける。また一人、地面に叩き墜とされた。

(今の魔糸鉱石での機動、どうなっているんだ? どこに魔糸を伸ばす建物があった? 空を飛んでいるかのようだ)

 アイーダが見せた想定以上の超高速機動にウィードが困惑する。もう一人、きりもみしながら墜ちていった。

(人に魔糸を撃ち込んでいるのか!)

 自分の胸に伸びる紫色の魔糸を見て気がつく。アイーダが銃をフルスイングする。

「ぬん!」

 ウィードが腕でそれを受け止める。

(こいつ自身にそこまでパワーはない、魔糸鉱石の経験はかなり積んであるようだが、戦闘経験はこちらの方が上!)

 ウィードが銃床をガシッと掴む。身動きが取れなくなったアイーダの後ろに暗部のメンバーが回り込む。

 その瞬間、アイーダは逆立ちのような形で勢いをつけてウィードの顔面に膝蹴りを叩きこむ。そのまま指をトリガーにかけて引き金を引いた。発射された魔力弾は後ろにいた暗部員の太ももを貫いた。

「くっそぉ!」

 暗部員は叫んで墜ちていった。

(魔糸鉱石の経験で意外とゴリ押せたわね。でもそろそろ通じなくなってきそうだし、逃げるか。ミカの所に戻って存在を気取られるのは悪手だし)

 残っている暗部員は三人だが、ウィードに攻撃が通用しなかったのを鑑みて撤退を選択した。長期戦になれば、対人戦闘で劣るアイーダが不利になるのは明確だった。

(まずはこの宿から引き離すか。あーあ、トラブルに深入りするなって言われてたのに)

 アイーダが急降下して繁華街の狭い道に突入する。

「追うぞ!」

 ウィードと残った暗部員も全力でアイーダを追う。

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