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TS聖女は超イケメン!?~聖女に戻りたいのに周りの女の子たちに溺愛されてしまうんだが!?~  作者: 大和煮の甘辛炒め


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第18話 珍しい子

 元聖女であるカロッゾに連れられたリムは店の二階、カロッゾの住処にいた。

 椅子に座らされていると、ジョシュがカップを目の前に置いた。

「砂糖いります?」

「いや、大丈夫だ」

 リムが断る。

 カロッゾが向かいに座ると、水をグッとあおる。

「紅茶じゃないのか?」

「ジョシュのは不味い」

「そんな奴に出させるなよ」

「来客に茶を出すのは一種のマナーだ。我慢してくれ」

「......不思議な気分だ」

 リムが口を開く。

「失踪して足取りのつかめなかったあなたがこんな所にいるなんて」

「ふん、あたしの事なんか誰も探しゃしなかっただろ」

「まあ、評判はあまり良くなかったとは聞いている......」

 リムが気まずそうに視線を落とす。するとカロッゾはケタケタ笑い出した。

「そうだろうと思ったよ。ミケーネ・マリアベルだったか? あいつの人気はすさまじいな」

「ふふ、そうだとも。高潔であり、どのような人間も分け隔てなく手を差し伸べられるお方だ。それでいて、魔法に関する技能も素晴らしく、日々魔法の研究・開発にいそしんでおられる」

「随分とできた人間だな。そんな人間が聖女の仕事をほっぽりだしてこんな所で観光か?」

「失踪したんだ。捜索しに、とりあえず王都に近いライファロスにきた。ミケーネ様もそう遠くには行ってはいないだろうしな。それに、ミケーネ様は元聖女のあなたを頼るという可能性も、たった今思いついた」

「......地方の人間を助けに行ったのかもしれないぞ。心の優しいお方らしいからな」

「なら、私に黙って行くことはあり得ない」

 リムがきっぱりと言い切ると、カロッゾはため息をついた。

「はぁ、なんで言い切れるんだか。言っておくが、あたしの所にミケーネは来ていないし、そもそもこんな栄えた観光地に行くわけないだろ? 王政にほったらかされてる北部山岳地帯とか、そこら辺に行くだろ」

「そうか。分かった」

「随分とあっさりしてるな。もう少し落胆するもんだと思っていたが......」

「見つかるまで捜索を続ける。それだけだ」

 リムとカロッゾの間に沈黙が流れる。その沈黙はすぐに破られた。

「ねぇ、その人誰?」

 開いた寝室のドアの隙間から小さな女の子が顔を覗かせていた。

「シャルル、出てくるなって言っただろ!」

 カロッゾが怒鳴る。

「な、自分の娘にそんな言い方をする奴があるか!」

 リムがカロッゾに怒鳴りつける。

「く、あたしの娘じゃねぇ。どっかの商人が連れてきてたガキだ。色々あって連れ去ったんだ」

「報復とかは気にしないのか?」

「手は打ってある」

 スイレンより年下のように見える女の子はゆっくりとドアから身体を出す。

「お、お姉さんカッコイイ......カロッゾさんにそっくり」

「カッコイイ、悪い気はしないな」

 リムが鼻高々に言う。

「めちゃくちゃ喜んでるじゃねぇか」

「君、シャルルって言うのか?」

「うん。カロッゾさん大好き」

 リムがニヤニヤしながらカロッゾを見る。

「懐いてるんだな。大好きだとさ」

「わ、悪い気はしないからな......」

「大喜びだな」

「う、うるさい!」

 カロッゾが顔を真っ赤にして言う。シャルルは不思議そうに大人たちのやりとりを眺めている。

「大声出してごめんね」

 リムが謝ると、シャルルは首を横に振った。ふと、リムはシャルルの耳に目線をやった。人のそれとは違う、小ぶりで尖った耳。心臓がドクンと高鳴る。

「どうかしたか?」

 カロッゾがリムに訊ねる。

「......髪がつやつやだなって」

「はあ? 髪は女の命だろうが。しっかり手入れしてんだよ」

 カロッゾがシャルルを抱き上げる。

「こいつはな、奴隷として売られかけてたんだよ。それも貴族の慰みもの

でな」

「......」

「好きに言え。シャルルは年齢の割に頭が足りん」

「《《子供好き》》の貴族は当然買うだろうな。その子はエルフ、それも黒髪の......」

 リムがエルフという単語を発した途端、シャルルはカロッゾの胸に顔をうずめてしまった。

「......珍しい子だ」

「シャルルの同族はあらかた殺されたらしい。そういう類の事を自分で言ってた」

 カロッゾがシャルルの頭を優しく撫でる。

「このことは誰にも言うなよ。てか、お前もうここから出るな」

「はあ? 流石に困るんだが......」

「下半身だけ鎧着て、剣も持ってない聖女の護衛なんて、どんだけ人の目を引くと思ってんだ。ちょっとは自分の影響力を自覚しろ」

「剣は収納魔法に、でも鎧はクラーケンに壊されてからずっとそのままだった......分かった。でもずっとはいられないぞ」

「当たり前だろ」

「明日の早朝までここにいさせてもらっても?」

「お姉さん、一緒に遊ぼ?」

 シャルルがリムの方に手を伸ばす。

「好きなだけ付き合うぞ」

 リムが伸ばされた手を取り、シャルルを抱きかかえる。

(こんなにすぐ黒髪のエルフが見つかるとは。髪をもらえるよう、信頼関係を築かなければ)

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