第13話 戦いの後
日も暮れるころ、ミカは目を覚ました。隣にエレナと母親が座っている。
「ああ、目が覚めたのね」
母親がミカの手を握る。随分と心配していたのかうっすらと涙を浮かべている。
「ん、どれぐらい寝てた......?」
ミカが体を起こす。母親がギュッと抱擁をする。
「避難先の森からもミカ様の活躍は見えていました」
エレナが頬を赤らめながら言う。
「その、とってもかっこよかったです」
「......ありがとう」
港では瓦礫の撤去が既に始まっていた。もっとも、ウルとクラーケンの亡骸の処理にはめっぽう困っているようだった。
「怪我人は?」
「......何人かね。避難が間に合わなかった漁師さんや住民が数名。でも死者はいなかったから安心して」
「......そうか」
ミカは立ち上がると、ウルの亡骸に歩んでいく。
「ああ、ミカさんか」
ひげ面の漁師がウルの亡骸を指差す。
「このでっかいのはどうするよ。運ぼうにも道が狭くてな」
「森にある彼の娘の遺体も一緒に海に葬る。構わないか?」
「どうせ漁もできんしな。構わんよ。なんせこいつもクラーケンと戦ってくれたんだもんな、しっかり弔ってやろう」
「あら、ミカ。もう動けるの?」
アイーダが鋸を持ってこちらに歩いてきた。
「アイーダ、あんときはありがとう」
「もう、リム達の援護しようと近くに行ってた時でよかったわ。私がいなかったら潰されてたんだから」
「その鋸何に使うんだ?」
「クラーケンをばらすのよ。食えそうなところだけ取って、後は全部灰にして土に埋めるの」
「土に?」
「海はクラーケンの住処でしょ。そんなところに帰す訳ないでしょ」
「そ、そうか。てか食えるのか......?」
ミカは疑問を抱きながら、クラーケンの亡骸の方に向かう。リムと、見覚えのある姉妹がクラーケンの脚を斬っていた。
「ミカ、動いても大丈夫なのか?」
ミカに気が付いたリムが心配そうに声をかけてくる。
「痛みも引いてきてるし、大丈夫だ。にしても結構ばらすのに時間かかりそうだな」
「手ごろなサイズの腕は一本こちらで取ってある。必要だろう?」
「そうだったな。あとは巨人の脊髄だけど......」
「それもいただいたよ。君は取りたがらないだろうから」
リムが伏し目ががちに言った。
「......悪いな」
「私の判断だ。君が申し訳なく思う必要はない」
リムが静かに伝える。
「彼には感謝してもしきれない」
「ああ。絶対に素材を集めきるぞ」
二人が決意と共に言葉を交わす。
「ねえ、師匠! サボってちゃ駄目!」
イヅナがクラーケンの下半身を搔っ捌きながら注意する。
「あれ、朝来たやつだよな」
「うん。助太刀してくれたんだ、こちらの思っていた以上に強かった」
「......警戒すべきか?」
「敵じゃありませんよ」
ミカの背中を指でつつきながらスイレンが言う。
「うわ、びっくりした!」
ミカが慌ててその場から飛びのく。
「そんなに驚きますか......」
スイレンは少しムッとしながら言葉を続ける。
「まあ、味方というわけでもありませんが。師匠というのもイヅナが勝手に言っているだけなので」
「その通り」
今度はサリヴァンが顔を見せる。
「あーっ! お前、あんときの猟師!」
「声がでけぇよ。色々あってな」
「なんか事情があるみたいよ。この村ぶっ壊そうとしたことは許さないけど」
アイーダがサリヴァンを睨む。よくよく見ると、サリヴァンの手首に枷が付けられている。
「事情?」
「ここじゃ話せないから、また後で」
「分かった」
「早く捌きましょう。足が速いと腐っちゃうんで」
「そうだな」
ミカはアイーダから鋸を受け取ると、クラーケンの解体を手伝うのだった。




