↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亜里野ストーリー The first step  作者: 与志野音色 公式
序章 新界高校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/25

2話 始まり


始業式が終わり、新入生たちはそれぞれ自分のクラスへ向かっていった。


翔馬とエルサも自分たちの教室へ向かう。


「ここが俺たちの教室かぁ」


エルサが教室を見渡しながら呟く。


二人が席につくと、教室の前の扉が開いた。

入ってきたのは一人の男性教師だった。


年齢は五十代後半から六十代前半くらいだろうか。

眼鏡をかけており、頭頂部は少し寂しくなっている。

落ち着いた雰囲気のある教師だった。


教師は教壇の前に立つと教室を見渡した。


「担任の大井史(おおいし)です、よろしく。

それじゃあ、まずはこれから学校生活を送るためのオリエンテーションを始めます」


担任から学校生活についての説明や、校内の施設、授業のこと、これからの予定などが説明されていく。


説明が一通り終わると、クラスメイト同士で親睦を深めるため、自己紹介などをする。


そして放課後。


担任から明日の予定などを聞いたあと、今日はこれで解散となった。


「やっと終わったなー」


エルサが鞄を持ちながら言う。


「長かったな」


翔馬も席を立つ。


教室を出ようとしたところで、与志野が声をかける。


「翔馬!さっさと帰ろうぜ」


「おう」


「えっと……与志野君だったよね、初めまして」


「うん。エルサ君だっけ、自己紹介面白かったね」


「ハハ、ありがと!二人は一緒に帰るの?」


「うん、よかったらエルサくんも一緒に帰らない?」


「いいの?」


「もちろん!」


こうして、亜里野、エルサ、与志野の三人は一緒に学校を出ることになった。


最初は少しぎこちなかった三人だったが、帰り道で話しているうちに、少しずつ会話も弾んでいった。


「そういえば、二人は入学式の前から知り合いだったの?」


エルサが尋ねる。


「ああ、与志野とは幼馴染なんだ」


翔馬が答える。


そんな他愛のない話をしながら歩いていると、三人は校門までやって来た。


「じゃあ、この辺で――」


エルサがそう言って振り返った、その瞬間。


「うわっ!」


足を滑らせ、与志野が地面に転んだ。


「与志野!」


翔馬とエルサが慌てて駆け寄る。


「大丈夫!?」


「痛っ……」


与志野は手のひらと膝を擦りむいていた。


「血、出てるよ……」


エルサが心配そうに言う。


「これくらいなら大丈夫……」


そのときだった。


「大丈夫?」


後ろから声が聞こえた。


三人が振り返る。


そこには見覚えのある男子生徒が立っていた。

男子生徒は何も言わず、与志野に手を差し出す。


「立てる?」


「あ……うん」


与志野は男子生徒の手を取り、立ち上がった。


「ありがとう……君って確か同じクラスの……」


「田野(たの)、明日からよろしく」


「あ……うん……」


男子生徒はそれ以上何も言わず、三人の横を通り過ぎ、そのまま歩いていった。


「あいついい奴そうだな〜……ちょっと無愛想だけど」


エルサが田野の背中を見つめる。


「ああ……」


翔馬も不思議そうに答える。


すると――


「……あれ?」


与志野が自分の手のひらを見つめた。


「どうした?」


翔馬が尋ねる。


「傷が……ない」


「え?」


三人が与志野の手を見る。


さっきまで血が出ていたはずの手のひらには、傷一つ残っていなかった。


「膝も……」


与志野が確認すると、膝の傷も完全に消えている。


「なんで……?」


三人は顔を見合わせる。


そして、田野が歩いていった方向へ視線を向けた。

そこにはもう田野の姿はなかった。


その時エルサもハッとした表情で振り返る。


「あ、しまった!今日用事あったんだ!急がねえと……じゃあ翔馬、与志野また明日な!」


「おう」


エルサの姿が人混みに紛れていくのを見送ってから、翔馬は隣の与志野を見る。


「俺たちも帰るか」


「うん」


二人は自転車に乗り、家に向かって漕ぎ出した。


「なあ、今日翔馬の家行ってもいい?」


「はあ?今部屋汚いから掃除しねえと……」


他愛もない話をしながら翔馬の家へと漕ぐ。

そして二十分程で翔馬の家へと着いた。


「そういえばさ、明日って何時間目までだっけ?」


「確か……」


翔馬が鞄の中から予定表を取り出そうとした、そのときだった。


「……あれ?」


翔馬が足を止める。


家の玄関の扉が、ほんの少しだけ開いていた。


「どうした?」


「いや……鍵、閉めたと思ったんだけど」


与志野も玄関を覗き込む。


「誰かいるんじゃない?」


「母さんたちかな、今日遅いって行ってた筈だけど」


翔馬は扉を開ける。


「ただいまー」


返事はない。


靴を脱いで家の中へ入ると、リビングのほうから声が聞こえてきた。


「おっ、帰ってきたか!」


その声を聞いた瞬間、与志野の表情が明るくなった。


「青木さん!」


リビングへ向かうと、そこには一人の男性が座っていた。


翔馬の叔父――青木だった。


「おお、与志野じゃないか!」


「久しぶり!」


与志野は嬉しそうに青木へ駆け寄る。


「大きくなったなぁ、最後に会ったのいつだったっけ?」


「この前、翔馬の家に来たとき以来じゃない?」


「そうだったか……いやぁ、二人とも高校生か。

早いもんだな」


青木は懐かしそうに笑った。


与志野にとって青木は、昔から何度も顔を合わせてきた親しい大人だった。


翔馬と遊ぶためにこの家へ来るたび青木がいることも珍しくなかった。


「それより翔馬!」


青木が振り返る。


「今日、入学式だったろ?」


「うん」


「入学おめでとう!」


青木は笑顔で翔馬の肩を軽く叩いた。


「ありがとう」


「どうだった?学校」


「まあまあ、クラスも悪くなさそう」


「友達は?」


「できたよ」


翔馬がそう言って与志野を見る。


「エルサっていうやつ、フィンランドのハーフらしい」


「へえ、もう友達ができたのか!」


青木は嬉しそうに笑った。


「それなら安心だな」


青木は与志野を見る。


「翔馬のこと、これからもよろしく頼むぞ」


「もちろん!」


与志野は笑って答えた。


その様子を見ながら、翔馬も自然と笑みを浮かべる。


昔から変わらない。


青木はいつも自分たちのことを気にかけてくれていた。


学校のこと。

勉強のこと。

くだらない悩みまで。


翔馬にとって青木は頼れる叔父であり、家族の一人だった。


「そうだ、今日は入学祝いだ」


青木が立ち上がる。


「みんなで飯でも食いに行くか?今日は両親帰り遅いって聞いてるぞ」


「え、俺もいいの?」


与志野が目を輝かせる。


「もちろん、お前らの入学祝いなんだからな」


「じゃあ行こうよ、翔馬」


「……まあ、いいけど」


三人は笑いながら玄関へ向かった。


――この日。


翔馬はまだ何も知らなかった。


ただこの日の翔馬にとっては。


それは何の変哲もない、入学初日の出来事に過ぎなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。