↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亜里野ストーリー The first step  作者: 与志野音色 公式
序章 新界高校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/25

17話 shark


翔馬と与志野の周囲を大きな影が旋回していた。


地面の中を泳ぐ無数の鮫。

時折、地表から背びれだけが姿を現す。


その光景に翔馬は息を呑んだ。


(四……五……いや六体……)


背びれが視界の端を横切る。


(あとどれくらい増える?どの距離まで追跡させられるんだ?)


考えるべきことはいくらでもあった。


だが――


「いや関係ねぇ……」


翔馬は拳を握り締めた。


「全部蹴散らすだけだ!」


隣では与志野が静かに構えていた。


人差し指だけではない。


蒼の気が指先から手の甲へ、手首へ、そして左腕全体へと広がっていく。


濃密な蒼が腕を覆い尽くした。


「――Revolver(リボルバー) Finger(フィンガー)!」


「……!」


サメの表情が変わる。


(何だあの密度……!)


与志野の指先に集まった蒼の気は五日前とは明らかに違っていた。


だがサメはすぐに冷静さを取り戻す。


(事前情報どおりなら与志野には溜めがある……撃つ前に潰せばいい!)


旋回していた背びれの一つが、突如として向きを変えた。


翔馬たちへ一直線に迫ってくる。


(速攻一択!)


サメが叫んだ。


「骨も残らないよ!」


ザバァッッ!!


地面が弾ける。


巨大な鮫が大口を開けて飛び出した。


その牙が二人を呑み込もうと迫る。


――ドォッッッ!!!


「……!?」


サメの目が見開かれた。


飛び出したサメの身体が、突如として蒼い光に包まれたのだ。


次の瞬間。


その巨体が激しく震えた。


身体の一部が削り取られるように崩れ、青い霧となって空中に散っていく。


やがて――


サメの姿は跡形もなく消え去った。


「……」


サメは呆然と、その場を見つめていた。


(今のは……与志野の攻撃!?)


目で追うことすらできなかった。

拳を振り抜いた様子もない。


(しかも一撃で私の鮫の身体を削り取り、塵にする威力……!)


サメはゆっくりと与志野へ視線を向ける。


与志野は構えを崩していなかった。


指先から立ち昇る蒼の気が静かに揺れている。


「……へぇ」


サメの口元が歪んだ。


「なるほどね」


彼女は隣で倒れているさわへちらりと目を向ける。


「舐めてたら痛い目見るね」


その声からは先ほどまでの軽さが消えていた。


サメの周囲で地面が不気味に波打つ。


その時、隣で燃え続けていた廃工場が耳障りな音を立てて軋んだ。


次の瞬間、建物の一部が崩れ落ちる。

炎が一気に噴き上がり、舞い上がった粉塵が夜空を赤く染めた。


同時に遠くから小さなサイレンの音が聞こえ始める。


「最悪……目立ちたくないのに」


「どの口が言ってんだ!」


翔馬が思わず怒鳴る。


サメは二人のやり取りなど気にも留めず、地面に向かって指をクイッと動かした。


その瞬間――。


旋回を続けていた鮫たちが一斉に進行方向を変えた。


七体。


そのすべてが翔馬と与志野めがけて突進を始める。


「与志野!七体だ!」


「了解!!」


与志野の両腕にはすでに蒼の気が圧縮されていた。


指先だけではない。腕全体に凝縮された蒼の気が今にも弾けそうなほど強く脈打っている。


(一度に蹴散らす!)


「Thousand(サウザンド) Finger(フィンガー)!!」


ドドドドドドッッ!!!


轟音が夜の空気を震わせた。


与志野の両腕が目にも留まらぬ速さで動く。無数の突きが、迫り来る七体の鮫へと一斉に叩き込まれた。


鋭い衝撃が鮫の身体を貫き、その輪郭を次々と崩していく。


「今だ翔馬!!」

「あぁ!!」


突きを受けた鮫たちは、青白い光を散らしながら霧へと変わっていった。


視界が染まる。


二人の姿が自身の蒼の気でサメの視界から消えた。


(あいつの蒼の気を煙幕代わりにして利用する!)


翔馬は地面を強く蹴りつけた。


「Double(ダブル) step(ステップ)!!」


足元で蒼い火花が弾ける。


――ドンッッ!!!


爆発的な加速。


翔馬の姿が霧の中から飛び出した時には、サメとの距離は一気に縮まっていた。


「そうくると思った」


サメが口元に笑みを浮かべた。


「!?」


突如、翔馬の足元が激しく震えた。


――ザバァァァッッッ!!!!


地面が割れたかのように巨大な口が姿を現す。


先ほどまでの鮫とは明らかにサイズが違う。大きく開かれた顎がまるで落とし穴のように翔馬の進路を塞いでいた。


(しまっ――!)


――バクッッ!!!


巨大な鮫が翔馬を呑み込もうと、地面から勢いよく飛び上がった。


その姿は、まるでイルカショーの大技のようだった。


鮫の巨体が夜空を舞う。


その瞬間、サメの頬に少量の血が飛び散った。


サメはそれを指先で拭い、何事もなかったかのように後ろを振り向く。


「あそこから軌道修正できるんだ……凄いね」


その視線の先。


翔馬は鮫の牙を間一髪でかわしていた。

しかし完全には逃げ切れなかった。


ボタッ、ボタッ――。


「ぐっ……!」


翔馬の足から血が滴り落ちる。


「翔馬ッ!!」


与志野が叫んだ。


(こいつ……!翔馬が突っ込んでくる軌道を予測して、あらかじめそこに鮫を潜ませていたのか!)


ただ闇雲に目の前の相手を攻撃しているわけじゃない。


翔馬がどこを通り、どう動くのか。


その先を読んで、待ち伏せていたのだ。


(こいつ……手慣れてやがる!)


サメは血のついた指先を軽く振り、再び二人へと向き直った。


「速さに自信があるみたいだけど……一直線に突っ込んでくる相手なら待ち伏せるのは簡単だよ」


サメの視線が翔馬の足元へと落ちた。


「その血の量……カスったって感じでもなさそうだね」


「……」


翔馬は答えない。


傷口から流れ続ける血を見下ろし、わずかに眉をひそめるだけだった。


「私の鮫ちゃんの消失反応に合わせて攻撃……フフッ、そんなチンケな策で私を倒せるとでも思った?」


直後――。


ゴゴゴゴゴ……!!


地面が不気味な音を立てて震え始めた。


「……!」


(さっきよりも……数段デカい!しかもこれは……!?)


地中から伝わる振動が足元を通して全身に響く。


やがて地面の下に潜む巨大な影がその輪郭を現し始めた。


「メガロドン」


サメが楽しそうにその名を口にする。


次の瞬間、二つの巨大な影が地面から浮かび上がった。


廃工場すら丸ごと食い尽くせそうな規格外の巨体。


その影がまるで獲物を見定めるように、地中から翔馬たちを見据えていた。


「今度は与志野君の一撃じゃ壊しきれないね〜。それに翔馬君の足は……言わなくても分かるか」


サメは口元を緩めた。


翔馬の足からは今も血が流れ続けている。


どう見ても先ほどまでのように走れる状態ではない。


「……もう走れないとでも思ってんのか?」


「ん?」


サメが首を傾げる。


「舐めんなよ」


バチバチッッ!!


翔馬の足元で蒼い火花が弾けた。


蒼の気が電流のように足を這い、傷ついた脚へと集まっていく。


しかし、その足元には血が溜まり始めていた。


赤い水溜まりが少しずつ広がっていく。


顔からは脂汗が滴り落ちる。


それでも翔馬は一歩も引かなかった。


「フフ……根性あるね〜」


サメは目を細め、愉快そうに笑った。


「嫌いじゃないよ、君みたいなの」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。