↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亜里野ストーリー The first step  作者: 与志野音色 公式
序章 新界高校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/25

10話 覚醒条件


自己紹介が終わると、優大は近くに置かれていた古びた椅子へ腰を下ろした。


「まあ、立ってないで座れば?」


「……」


翔馬と与志野は顔を見合わせる。


田野を見ると何も言わずに優大の近くへ歩いていった。


「……じゃあ」


翔馬は警戒しながらも、近くにあった椅子へ腰を下ろした。


与志野もその隣に座る。


「田野から聞いてると思うけど、ここにいるのはみんな祝福を持ってる人間だ。普通の学校生活じゃ、こういうことを話せる相手もなかなかいないだろ?」


「まあ……」


「これから能力のことも教えるし、困ったことがあれば助けるさ」


優大はそう言って、与志野へ視線を向けた。


「音色君もいろいろ大変だったんだろ?何か学校で噂になってたよ」


「あぁ……」


与志野の表情が少し曇る。

山口たちのことを言っているのだろう。


(こいつ……山口に銃渡した癖に……)


「でももう気にしなくていいよ。ここにいる間はそういう連中に絡まれることもないから」


その言葉に与志野は小さく頷いた。


「……ありがとうございます」


「うんうん」


優大は満足そうに頷く。


しばらくして、今度は翔馬へ視線を移した。


「ところで翔馬君」


「はい?」


「音色君と一緒にいることが多いんだって?」


「まあ幼馴染だから」


「へぇ……どれくらいなの?」


「小学生から」


「長いなー」


優大は楽しそうに笑った。


「じゃあ、お互い大事な存在ってことか」


「……まあ」


翔馬が答える。


優大はその返事を聞いて何かを確かめるように少しだけ黙った。


そして――


「二人共、今どの程度祝福コントロールできるの?」


話題が変わった。


与志野が少し考えてから答える。


「俺は……身体から蒼の気を出すくらいで……」


「なるほど」


優大は頷く。


「翔馬君は?」


「俺は……」


翔馬は口籠った。


「まだ、見えるだけっていうか……」


「見えるだけ?」


「はい……蒼の気が見えるだけで自分でどうこうするのは……まだ」


「そっか」


優大は椅子の背もたれに身体を預けた。


「困ったなぁ」


目は笑っていなかった。


「すぐにやってほしい仕事が山ほどあるのに」


翔馬と与志野は顔を見合わせる。


「……仕事?」


翔馬が聞いた。


「そ、祝福をコントロールしたら色々とやってもらいたいことがあるんだよ。そこに居るさわとかサメの様にね」


「でも俺たちはまだ……」


「うん、分かってる」


優大は軽く手を上げて与志野の言葉を遮った。


「だからさ」


そして少しだけ笑みを深くする。


「待ってる時間もないし……強制的に引き出しちゃおうか」


「……え?」


翔馬の表情が固まる。


優大は何でもないことのように続けた。


「祝福がどうやって目覚めるか……分かる?」


「……知らない」


翔馬が答える。

与志野も首を横に振った。


「だよな」


優大は頷く。


「祝福がどういう条件で目覚めるのかは人によって多少違う。でも共通してることがある」


優大が指を一本立てる。


「蒼の気を帯びた物に触れる」


「蒼の気を帯びた物……?」


翔馬は少し考え、思い出す。


(あ、そうか……俺は暴走して蒼の気を纏ってる与志野に触れたから……いやでも与志野は……?)


次に、もう一本。


「感情の昂ぶり」


最後の三本目の指を立てた。


「それと、生命の危機」


「……」


「強い感情を引き起こすんだ、それと死ぬかもしれないって状況に追い込む。そうすると眠ってる祝福が無理やり目を覚ますことがある」


翔馬は嫌な予感を覚えた。


「……どういう事だよ」


優大は答えず、工場の奥へ顔を向けた。


「というわけで――」


そして声を張る。


「さわ!」


「……はい」


先ほど自己紹介をした男――さわが顔を上げる。


「あれ、持ってきて」


「了解」


さわはそれだけ言うと工場の奥へ歩いていった。


「おい……何する気だよ」


与志野が立ち上がる。


優大は答えない。

ただ、楽しそうにその様子を眺めていた。


やがて――


ズル……。


何かを引きずるような音が、暗闇の奥から聞こえてきた。


「……何だ?」


田野も暗闇を凝視する。


音が近づいてくる。


ズル……ズル……。


そして、暗がりからさわが姿を現した。


その手には――


「……え?」


翔馬の声が漏れる。


見慣れた制服。


身体は傷だらけで服もボロボロになっている。

顔には力がなく、足を引きずるようにしている。


「……嘘だろ」


与志野の目が見開かれた。


その瞬間。


「エルサァッ!!」


翔馬の叫び声が廃工場中に響き渡った。


椅子を蹴るように立ち上がり、優大へ詰め寄る。


「お前がやったのか!」


怒りに声が震えていた。


優大はそんな翔馬を見ても表情を変えなかった。


「俺も可哀想だとは思うけどね」


まるで他人事のように告げる。


「まあ音色君の覚醒の現場も見ちゃってるし丁度いいと思ってさ」


「何だと……!?」


「祝福を目覚めさせるには強い感情が必要って言ったろ」


優大はエルサへ視線を向け、肩をすくめた。


「ま、運が悪かったね」


「てめえ……!」


翔馬が拳を握りしめる。


「良いね、もっとキレていいよー」


「優大っ!!」


今にも飛びかかりそうになった、その時だった。


「優大さん……!」


田野が割って入った。

その顔には明らかな焦りが浮かんでいる。


「話が違う!」


田野の声が工場内に響く。


「エルサに危害を加えないことと、翔馬たちを殺さないことが条件だと言った筈だ!」


「……え?」


翔馬と与志野が同時に田野を見る。


「どういう……ことだよ?」


田野は答えない。

ただ、優大を睨んでいた。


優大の顔から先ほどまでの笑みが消えていく。


「生意気な事言ってんじゃねえよ、お前も共犯者だろ?」


低い声だった。


「お前のしくじりの後始末をするだけだ」


「……!」


「何の才能もない一般人を現場に立ち合わせるなんて、馬鹿なことしやがって」


優大はエルサをゴミを見るように一瞥したあと、体を踏みつける。


「どのみち見られたんならこいつは生かしてはおけない」


「足を退けろ!そいつは無関係だ!」


田野が叫んだ。


「関係者にしたのはお前だろ、因果応報だな」


「……ッ!」


田野の顔が歪んだ。


言い返せない。


与志野はそのやり取りを見つめ、ゆっくりと拳を握り直した。


その身体から蒼の気が漏れ出す。


「……優大」


与志野の目に明確な怒りが宿っていた。


「さて、感情の昂りはクリア……」


優大は怒りの眼差しを向ける翔馬と与志野に満足した様に笑い、何かを確認するように小さく頷く。


「次は――」


その瞬間だった。


ガチンッ。


優大の両手に突然、二挺の機関銃が現れた。


「生命の危機、だな」


「なっ……!?」


翔馬の目が見開かれる。


どこから出した?

そう考えるより先に、与志野が叫んだ。


「翔馬!危ないッ!」


ドドドドドドドッッ!!!


轟音が廃工場内を駆け抜けた。


無数の弾丸が床や壁を穿ち、鉄骨に当たって火花を散らす。


「うわっ!!」


翔馬は咄嗟に身を伏せた。

頭上を何かが掠める。


一瞬遅れて、背後の鉄製の柱に次々と弾痕が刻まれていった。


「翔馬、こっち!」

「クソッ!!」


与志野が翔馬の腕を掴み、近くに積まれていた鉄板の陰へ引きずり込む。


二人が身を隠した直後――


ドドドドドドドッッ!!


再び銃撃。


鉄板が激しく震えた。


優大は機関銃を下ろし、一息つく。


「これ結構重いし反動凄いからコントロール効かないんだよな〜……」


翔馬は荒い息を吐きながら、恐る恐る顔を上げる。


向こう側にいる優大は二挺の機関銃を構え直し、嗤っていた。


「逃げてるだけじゃ祝福は目覚めないよー」


ドドドドドドドッッ!!!


その声は銃声の中でも妙にはっきりと聞こえた。


翔馬は火花と爆音の中、拳を握り締めた。


(こいつ……本気で俺たちを殺す気かよ!)


隣では与志野も歯を食いしばっている。


そしてその視線の先には――

傷だらけで倒れているエルサがいた。


「……エルサ」


翔馬の胸の奥で何かが大きく脈打った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。