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混迷の会議

 ジンがトールから敵の増援を聞いた翌日。


「三万か」


 本部では小さくラージャがつぶやく。

 今本部テントでは敵の増援にどう対処するかの軍議が行われていた。


「三万だぞ!勝ち目はない!一度引くべきだ!」


「バカな!引いてどうする!タイランに三万を迎え撃つ準備なぞないのだぞ!」


「だが!ここで戦ってどうこうなる問題でもないだろう!敵は三万だぞ!そんものはただの無謀だ!」


「ふざけるな!ならばタイランはどうなる!」


「それは......」


「そもそも援軍はいつ到着するんだ!」


「斥候部隊の話では早くて一月後には」


 出口のない言い争いだった。昨日からずっと会議の内容はループしていた。

 王国騎士団に引く道はない。ここで戦うかタイランで戦うかの二択だ。


「ラージャ」


 出口の見えない会議にずっと静観をしていたジゲンが口を開いたことで会議が止まる。


「国からの援軍は」


「期待はできない。そもそもここにいる一万の兵ですら破格だ。騎士団総出で援軍に来ても五千が席の山、到底三万とは太刀打ちできまい」


「そうか」


 手詰まり、それが結論だった。


「団長」


 そこにガイルがジゲンに何やら紙を渡して耳打ちをする。

 ジゲンは紙を開いてしばらくしてから、ラージャに言う。


「では、賭けねばなるまい」


「なに?」


「敵は強大、引く道はない、ならば賭けねばなるまいよ、この命をな」


「何を言っている!成り上がり貴族が!」


 そこで声を上げたのはヴァーチェスだった。


「貴様の命を賭けるのは勝手だが、私たちの命と貴様の命が同様なわけがなかろう!賭けたければ勝手に賭けるがいい!」


 そう言うとヴァーチェスは立ち上がって部屋を出る。


「敵前逃亡は重罪だぞ?」


「ふざけるな!私は一万の敵兵と戦えとは言われたが三万の敵など聞いていない!よって無効だ!」


 そんなバカな話は通らないがヴァーチェスはテントを出て行く。

 ヴァーチェスが出て行ってから静まり返る本部、しばらくして私も降りるとチラホラと貴族が本部を出て行く。

 そして五人ほど退室してから本部はまた静かになった。


「全く、白虎騎士団は統制も取れてねーのか」


「あれは騎士などではない、ただのゴミだ」


 そう言うとラージャは立ち上がりジゲンに顔を向ける。


「案があるなら話せ、実行するかどうかは俺が決める」


「かっかっか、そうこなくっちゃな」


 ジゲンはひとしきり笑うと口を開ける。


「まず部隊を三つに分ける」


 ジゲンが話した作戦にそこにいる誰もが息を呑んだ。

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