ジンの奇策
一月後、ジンは戦線に復帰するためダーズ荒野に来ていた。
これにはジンの新たな中隊も一緒だ、ほぼ全員の傷が癒えたため戦線復帰の命が降ったのだ。
ジンはまずジゲンのいる青龍騎士団本部に来ていた。
「ジン・オオトリ、ただいま戻りました」
「入れ」
ジンはジゲンの許可が入ったので本部であるテントに入る。
「傷は癒えたか」
「はい、問題ありません」
ジンは今回はジゲンの横にガオンが立っておりその横にはセシル大隊長ダンベ大隊長がいたため敬語で話す。
他にも、デイダラと知らない顔がチラホラいた。
「そうか、まず初めに聞きたい。ジンあの作戦は成功するのか?」
「はっ!ご説明します!」
「その敬語はいい、ここにいるのは信頼できる者だけだ」
ジンは周りを見回してから頷いた。
「敵の増援は二万、それまで一当てもして来ていない、そうだよね?」
「ああ、お前が手紙で書いていた通りこの一ヶ月こちらから仕掛けることはあっても帝国側から仕掛けて来ることはなかった、一回もな」
「単純に考えれば、三万なんて数で押されたら兵法がそもそも二、三千規模の俺たちの知識じゃ、一瞬で飲まれて終わり。あっちはそのことを理解してる。だから援軍を待っている」
「悔しいがその通りだろうな」
「それとは別におそらくだけどあっちにはもう一個戦いたくない理由がある」
「なに?」
「俺の予想が合ってれば物資かな」
「物資?」
「いくら帝国がでかい国って言っても三万の兵を補給させるには兵糧も医療器具もカツカツなはずだ」
「ふむ、その根拠は」
「そもそも、帝国は広大な土地に反して取れる資源は多くない」
だからずっと我が国を狙ってるわけなんだけどとジンはつなげる。
「けどだからって三万くらいの兵糧を用意するのはわけない筈だ。けど帝国は連戦に次ぐ連戦で最近までは北と大喧嘩してたのにここにきて二年の不可侵条約だって?あり得ない。おそらくその不可侵条約は嘘ではないが真実でもないだろう」
「それに関しては、本国より情報があり、半年と言うことだった」
「なら決まりだ。あちらさん等々戦争する資源が尽きかけてきたんだ。恐らくその不可侵条約も北が相当美味い条件で結ばれたものだ。そしてこの半年で我が国の出来るだけ多くの拠点を落としてそれと交換、もしくはそこで取れた資源をあてにしてるのさ」
「北は占領したとしても厳しい土地なことに変わりはないから南に位置する我々の国ということか」
「そういうことでしょう。まぁあとはタイランを一度取ったという実績が帝国にはありますからね、それででしょう」
「資源がないならば交渉でなんとかならないのか?」
そこで割って入ったのはダンベは交渉をするのはどうかという質問をする。
「それは難しいでしょう」
「なぜだ?」
「帝国にはメンツがある。あの国は四方八方に喧嘩を吹っかけてはそれにほぼ勝利している。帝国が戦争で明確な負けと言えば史実では2回だけだ。この大陸最強のという自負がある。だから交渉はしてこない、いやできないと言った方がいいでしょう」
「バカな」
「そう、バカなんですよ交渉一つ出来ないからあの国は年中戦争をやってる。だからここで一度懲らしめましょう、お前らは最強でもなんでもない、只のバカなんだと」
そう言うジンはニヤっと笑った。
「だが、ジンお前の予想が大方当たっていたとして、この作戦に勝算はあるのか?」
「よくて二割ってところだろうね」
「二割......」
ジンの答えにジゲンは呟く。
「正直、過去に例を見ない三万なんて数に勝つには奇策を用いるしかない、奇策なんてもんは言葉があるだけで大体が奇跡が何通りも起こってなされることだ。二割あるならいい方だと俺は思うけどね」
「そうか、概要を説明しろ」
「了解、まず白虎騎士団はタイランに引いてきたのは俺もこの目で確認しました。その上での作戦です」
ジンは周りを見回して確認を取り、机の上にある地図に目をむける。
「まず初めに敵さんにはタイランを取ってもらいます」
「何!?」
テントの中はガオンとジゲンを除いて驚愕に慄く。
「次にセキテイとゾーギも渡していいでしょう」
「ちょ、ちょっと待て貴様!何を血迷ったことを言っているのだ!」
そこで待ったをかけたのはダンベだった。
「まぁ、最後まで聞いていてください」
「むぅ」
セキテイとゾーギとはタイランの次にある砦で一様は防衛用の砦ではあるがタイランほど強固な砦でもなかった。
「この三つの砦はある程度防衛した後、開け渡してもいいでしょう。そしてゾーギに敵が集結した頃に我々はデイブンに仕掛けます」
「デイブン?!」
デイダラとは帝国側の防衛拠点である。
「そうです。タイラン、セキテイ、ゾーギは距離感的には3日の距離です。そしてこの場合の防衛とは日数を稼ぐことです」
「敵の兵糧を攻めるということか」
「だが、兵糧といっても敵の兵と一緒に動いている筈では?」
「そうですね、ですが必要最低限の量と考えて間違いないでしょう」
「なぜだ?」
「これからそれを説明します。今敵は一万が合流して二万の兵量になってます。ここで明日以降、我々青龍騎士団がひと当たりかまします」
「なに!?」
「夜戦ですがね、その戦いを囮にして別働隊で兵糧に火を放ちます。これが成功できれば余程馬鹿でない限り兵糧を狙ってきていることに気づくでしょう」
「そ、そうだな」
「ダンベ大隊長、もし貴方は敵の指揮官だったらどうしますか?」
「私だったら、兵糧を点々とした場所にばら撒く置き方をするだろう」
「ではそこでその点々と配置した兵糧が焼かれたら?」
「安全な場所に......そうか」
ここでダンベはどこか納得いったように顎に手を当てる。
「そう、ここで安全と言えば戦争をしている三万の部隊ではなく後方の拠点でしょう。そこに物資を集め、必要最低限の物資をあらゆるルートから備蓄すると思います」
「だからデイブンか。だが、そううまく行くのか?そもそもデイブンを落とせるのか?」
ジンはその問いに頬を吊り上げる。




