強者
部隊全員の姿が見えなくなるとジンはゆっくりと腰を落として刀に手を添えて臨戦体制に入る。
「なんだよなんだよ!いいねぇ!」
興奮したザンバは肩に刀を担いだまま嬉しそうに頬を釣り上げる。
「構えないのか?」
「はっは!これが俺の構えだよ!」
今までジンは対峙してきた人間は軒並み強者と言える部類だろう、ジゲンにテンゼン、ガクゼン他にも他流の人間と何度か手合わせしている。
だがそれは、あくまでも手合わせであり殺し合いではない、ここに来るまで何人も切ってはきたがそれはジンからすれば強者とは呼べないものだった。
そして相対するこの男ザンバに今まで戦った者たちから発せられる強者の凄みと言うものをジンは感じ取った。
「ん?どうした?来ないのか?」
ザンバの余裕のある立ち姿にジンは気を抜けば危ないと本能が叫んでいた。
「なら行くぞ」
ジンはさらに深く腰を落としてザンバにそう告げる。
「おいおい、切り合う前に行くぞってお前さん素人か?」
ジンはザンバの声を右から左に流して考える。
今まで戦った誰にもない雰囲気に警戒心が常に警報を上げている。
(出し惜しみはなしだ)
「第六門、緋剣、無限一刀」
ジンは己が出せる最速の抜刀でザンバの首を狙う。
刀を引き抜くとほぼ同時に相手の首へと到達する刀は秘中である、がザンバはジンの抜刀を姿勢を低くすることでかわす。
驚いたのはジンである。この剣技は初見でかわせるほど甘い剣技ではない。つまり読んでかわしたと言うことだ。
かわされた瞬間動揺したものの振り切った刀が鞘に戻ってくるまでの一連の動作に狂いはなく、隙も作らなかったジンは流石と言えるだろう。
「おいおいおい、お前すげーな」
先程よりも落ち着いた声音で言うザンバにジンはそのままそっくり返したい気持ちだ。
「そちらさんこそ、瞬刃流を知ってたのか」
「あ?なんだそりゃ?」
ザンバの返しにジンは驚きを隠せない。ザンバは冗談を言っているようではなかった。つまり今のが初見であると言うことだ。
「マジか、化け物か?あんた」
「おいおい、そう褒めんなよ」
嬉しそうに体をくねらせるザンバにジンはどこか疲労感を覚える。
「こいつは参ったね」
隙を見せずに言うジンだが、内心本当に困っていた今の剣技を初見でかわす目の前の化け物に本気で戦慄する。
「いやぁ、危なかったぜほんとに」
なんの気無しに言うザンバにジンは次の手を考え出す。
瞬刃流は第十門から第一門までの段階で区分わけされる流派である、そしてジンは第二門までの解放をガクゼンからもらっているが、実戦で使えるのは六門と八門だけだ、たしかにジンは第二門までの開門をしているが瞬刃流は成功率で開門とするのではなく一度でもできれば開門者となる、その成功率は六と八を除けばガクっと落ちるのだった。
(これはだいぶやばいな、八門の八咫烏はカウンター技だし七、九、は成功率が低いしそもそも通じない確率の方が高い、それ以外の成功率的に論外か)
つまるところジンは二つの剣技しか使えないと言うことだ、だがそれだけでも十分であるし、そもそも歳十三にして二つの門を十割成功させるというのは破格だった。
「なんだよ?もう来ないなら俺から行くぞ?」
ジンにとってこれは願ってもない申し出だった、カウンターである八咫烏はテンゼンにも通用した技だ、第八門の絶剣に自分の利点を生かしてアレンジを加えたカウンターそれが八咫烏だ。
「願ってもないね、ていうか行く前に行くぞってのは素人なんじゃなかったのか?」
「けけけ、こりゃ一本取られたあ!」
先程のお返しとばかりに軽く煽るが内心冷や汗が止まらなかった、初見で無限一刀をかわされたのはそれほどまでに衝撃だったからだ。
「そんじゃま、やるか」
ザンバは肩に乗せた刀をそのままに腰を軽く落としてつぶやく。
「蛇死一線」
放たれた剣に対してジンは八咫烏を返す肩口から上段縦に切り裂く斬撃に刀を引き抜きザンバの刀に刀を這わせるようにして下段から上段へとなめるように受け流しにかかる。
(見える)
ジンはザンバの放った斬撃をしっかりと目で捉えていた肘から下ろされた刀を受け流すために刀と刀がぶつかった瞬間ザンバの持ち手が逆に流動する。
(なに!?)
そう思った時にはザンバの刀はジンの肩に斬撃を浴びせていた。
ジンは何が起こったか目では追えていたがわけがわからなかったが、そのまま下段から上段へと刀を振り抜くと今までに聞いたことのない甲高い音を立てて刀を弾きお互いに距離を取る。
カウンターで一撃叩き込む予定が肩にダメージを負ってそこまでいかなかったのだ。
「おいおい、すげーなお前」
「こっちのセリフだ」
「見えてたな」
「ああ、だから驚いてる。どう言うことだ?」
「けけけ!すげーすげー!お前すげーよその眼!あり得ねー!」
「うるさい、質問に答えろ」
「んだよ!ノリが悪いな!」
ジンはたしかにザンバの斬撃を受け流すルートに自分の刀が動いたことを見ていた。それなのに自分の肩は傷がついた、それも見ていた。
見ていたからこそわからなかったのだ。
「けけ、んじゃ種明かしするか」
愉快そうに笑うとザンバは嬉しそうに口を開いた。
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