10. 特訓と包丁
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鎧男が喋り続けるが構わず移動した。
チラッと横から見て離れたけど、まだ一人で話してるらしい。
今から話す事はこの世界では一般的じゃないから離れたけど断りを入れておくんだったとちょっと申し訳ない気持ちになった。
そして無理もないけど二人がソワソワして落ち着かない、自分の得意な属性の魔法が知りたくて待ちきれないようだ。
「カズキ!私の得意魔法ってあるんですか!?」
ステータスが見れる世界だけど鎧男の話を聞いて仮説が浮かんだ
『ステータスで高い能力値が強いわけでなく、潜在能力値が存在する』かも?と…
潜在能力値は恐らくだけど成長速度だ。じゃなきゃ彼のように地属性が高くて使ってたけど風属性に変えてスランプ脱出が出来なかっただろう。
そんな事を考えて俺は新たに紙を4枚出して、2枚分をステラを視ながら魔力の流れを描いていく…
まず内側
「ステラは…『光』が一番強くて、『水』と『氷』で…」
実はあまり多くない『光』属性があった。
あとで教えて貰ったけど光属性は回復や浄化、神聖系の魔法を使えるらしい。冒険者の中で…1万人に1人位らしい。
実際はもっといるらしいが、わざわざ特定の場所(大聖堂等)へ行き光属性『のみ』を調べる人が少ないのと、大抵はシスターや神官等になってたりすると言うのが実情らしい。
まぁ冒険者より安全だろうしな…
何より大体のステータスが見れるから…1でも高ければ
『それが貴方の得意属性!』
っていうのが一般的らしい…
あと属性の判断基準は鎧男に描いて貰った俺の紙だ。幸い女神様より頂いた全適正がある俺は良いサンプルになった。
『火』属性が中心にあり、周りに小さな『水』、『風』、『地』、『氷』、『雷』、『樹』、『金』、『光』、『闇』、『無』が絵に描いてある。
火以外は大した事がないらしいけどな…
ここは訓練場で魔法の練習をしているヤツもいるので俺の魔力の流れを参考に周りを視たのだ。
幸い模擬戦で倒れたヤツが回復魔法をかけられてる現場を見れたので光属性と分かった。
次に外側をサッと描いてステラに紙を見せながら説明していく。
「ステラは光が全体を覆って、その上から右側が水で左側が氷のようだから意識してみると良いかもよ?」
内側だけじゃなく外側にも目を向けてみた。
魔法を使うって事は魔力から魔法に働きかけていると言うわけだから、もしかしたら外側にも内側とは別の流れがあるんじゃないか?と思ってみたら…やはり違っていた。
ステラは不思議そうに杖を左へ持ち替えて魔法を使った。
「凍てつく氷よ!敵を穿て!『アイシクルランス』!」
藁人形に氷の槍が放たれた。
2メートルの氷の槍が…
「よしっ、合ってたぽいな」
ステラは驚きのあまり固まっている。
ニードルは拡散系なので1点集中系のランスを使ったが、何時もと大きさが違ったらしい。
直撃した藁人形からは大きな氷の槍が突き抜け、トゲが無数に発生していた。
ステラは驚いたままブツブツ独り言を言っているから復帰するまで放置で…
「次はレイグルだな…ってなんだよ、その顔」
顎が外れんばかりに開いて俺を見ていた。
「なんだよアレ!特訓の成果か!?」
「そんなすぐ効果が出る分けないだろ…」
一度描いたからか、ちゃちゃっと描けた。
「レイグルの内側は上半身が『雷』と下半身が『風』で、足に『土』が少々…外側は前面が雷で背面が風、足は同じ」
外側は他人が見えるだけで中身は違うって感じだな
スピードタイプの狩人って感じかな?まぁ正直よく分からん…
「よっしゃ~!じゃあ走ってみっかんな?」
軽くピョンピョン跳ねて、大地を踏みしめるようにグッと腰を落とした。
レイグルの足元に風が纏うのを感じた瞬間、消えた。
いや、一瞬だが動きを捉える事が出来た。その後の音の方が驚いたが…
「『バキバキッバゴッン!ベチ』グフッ…」
音の方へゆっくり体を向けて何が起きたかを理解した。
レイグルは思い切り走り出し、想像より速すぎて止まれぬ勢いで修理中の壁に激突し粉砕したのだった。
そして不幸な事に板の後ろは硬い壁だったようで医務室に運ばれ、レイグルは要安静を言い渡され本日の特訓は終わったのだった。
「レイグルちゃん…無理しちゃダメよ…」
レイグルは話し掛けられるが包帯をグルグル巻きにされベットに横たわっていた。この街のギルドで怪我人が少ない理由の一つは手当てしてくれる人物に原因がある。
コイツは優秀なギルド医師の女だ。
無駄に色っぽかったり、艶かしい肢体を限界まで露出したり…普通ならかすり傷だって見せに来るはずなんだが…
「……」
無言のまま視線をずらすと『物理的』に紫や緑の煙のようなものを口から吐き出し呻いている者達がベットに寝かされている。
コイツらは俺がカズキにけしかけた『経験値』達だ。
思ったよりボコボコにされたらしく、この女医の薬をいただいたらしい。
「レイグルも私の作ったお薬…飲む?」
「も(お)まえの実験薬なんか…も(飲)むふぁ(か)!魔女か!」
通称『魔女』、自分が作り出した薬を患者に飲ませて新薬の実験をしている。
効き目は確かなんだが…
「ヴォォ…」
人が煙りを吐いてるアレ見るとな…因みに既に一度、新薬の実験台は経験済みである。
「そ~お?残念ね…そう言えばレイグル何か変わった?」
「はっ?何が…グモッ!」
唐突に話題が変わったので油断して小瓶の何かを飲まされた。
「貴方の魔力の循環が少し良くなってるように見えたモノだから…なんとなく…ね」
ゴクゴクッっと結局成功品を飲まされてしまった。
そして体に満ちた活力と回復力を感じ目の前が真っ暗になった。気絶していた。
「そのまま寝てなさいな。その魔力が定着しないと、また怪我しちゃうから…ね」
良い医者だった。
レイグルが回復薬の影響で倒れている時、やる事がなくなった俺は一人で街のマッピングをしていた。
ゲームで歩くと空白地帯がパッと消えて建物が浮かぶのが好きでやっていたけど、この世界でも仕組みは変わらなかった。
ただ既に訓練で疲労困憊な状態での歩きは意外と疲れるので鍛冶屋通りの周りを歩いて宿に帰った。
結果はフォルマの店が一番の腕と言うことを理解させられただけだった。
宿に戻ると入り口に人がなんか群がっていた。
野次馬に混じって背伸びをしながら見ていると…
「あの包丁はどこで手にいれたんだ!」
「私もあの包丁が欲しい!」
「ガゼルフィッシュの角が切れるとは!」
うん、ある意味俺のせいだった。
「お待ち下さい!我々ギルドが交渉しますから!」
交渉って、作らないし。作りたい物しか作らないし。
そーっと離れようとしたら…
「おーい旦那!すまねぇ!」
マスターに見つかった。
っていうか新人から旦那に変わったよ!包丁効果すげー…と現実逃避から戻って話を聞いた。
「どうしたんですか?この人垣は大繁盛ですね」
「何かよく分からねぇんだよ…いきなり包丁売ってくれって来てよ…」
マスターが困ってるのはよく分かるけど…オロオロするマスターの横から身なりの整った男が話しかけてきた。
「初めまして私は商業ギルドのログマと申します。実は…」
冒険者が飯を食っていたところ、マスターがガゼルフィッシュの角を落とす所を目撃。依頼に行く途中で包丁の話をして井戸端会議の伯母様方に聞き耳をたてられ、商業ギルドに包丁の問い合わせが殺到?した所「そんなの売ってないよ」偶然商業ギルドに来ていた冒険者に直接聞いて宿の前に野次馬の群れ…
そして調査に駆け付けたときは既に遅かった…
「と…言うわけなのです。」
ステラとレイグルはこの事を言ってたんだなとぼんやり思った。
まぁ冒険者の口を塞ぐわけにもいかないから情報漏れには今後気を付けようと誓った。
「で…どういうご用件でしょうか?」
なんとなく『包丁作って!』だと分かってて言ってるけど拒否権あるだろうし
「ギルドからの依頼で包丁一本につき銀貨5枚で作っていただけないでしょうか?作れる分だけで構わないので…」
アレ?思ったより高圧的じゃない?と思ってちょっと拍子抜けした。
まぁ『ギルドが命令する!作れ!』とかシナリオに起伏を持たせるためだよな~とか考えてると…
「ログマ殿、ソイツは一介の冒険者なのだ!ギルドの命令である。作成せよ!」
キター!やっぱりいるよね!職権濫用するヤツ。冒険者あってのギルドだろうに…商業ギルドの場合は商人か。
ログマの目が変わった。
「貴方はまだ分からないのか?ギルドは持ちつ持たれつだと言うことが…すまない」
発言した者に言ってコチラヘ向き直ると謝罪された。
冒険者が素材をギルドに売り、ギルド間やオークション等で売る。持ってきてくれるのは冒険者なのだ。その冒険者は自由で貴族等に基本的には縛られず、あり気に食わなければ他の町へと流れていってしまう。
それはいずれ街の衰退を招くということだ。先程の発言はそれを理解していないからこそ出来る発言だった。
今で言うと…そう俺が打つ包丁の事だ。自分の事を職人…等言うのは烏滸がましいが職人達は気難しい者が多い。
それは自分が納得した物しか売っていないと言う物だが、例えば武器で言うと分かりやすいだろう。
命を掛ける武器だ。コレが精度が悪く強度も低い、切れず倒せず…と来たら使い手の運命は?
『死』だ
そんな物を売り噂が広まったら鍛治師としては一貫の終わりだ。それに命を預ける冒険者としても、たまったものではない。
「今一度、考えてはみてくれないだろうか?先程いただいた定食も何時もより美味しかったので是非!」
ログマさんに頭を下げられた。少し悩み…耳打ちした
「作っても良いですが条件があります、コレに納得していただけるのなら…」
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読んでいただき誠にありがとうございます。
プライベートが忙しく書くペースが遅いですが読んで楽しんでいただけたら幸いです。
次回もよろしくお願いいたします




