閑話 鍛冶師として
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「お前さん…何やってんだ?」
カーン…カーン…
俺は無心で打っていた所にレイグルが顔を出した。
昨日、あの後に俺の条件を飲んで貰い包丁を打つ事に決めた。
ところが俺が特殊な打ち方をすると…アラ不思議!雑でも魔法剣になってしまう事が分かり…
「師匠助けて~(棒)」
フォウリオの鍛治場に顔を出したのだった。
俺の声に反応してくれ、ひょっこり顔を出したフォウリオは訝しげな表情をし
「この剣を打てるヤツに俺が助けられる事ある気がしないんだが…」
飾られた俺の打った剣をチラリと見てそう言われた。
そして俺の製作状況を一通り説明したのだった。説明が進むうちにフォウリオの顔が悲しげな表情になっていった。
「なんて…贅沢な悩みなんだ…」
ボソッと聞こえたが、聞こえない振りをした。
俺は火と風と水の魔法で作品している為、ふいご、火床等は今の所は必要性がない。
が…見られる心配が出てきた為に鍛治場を借りに来たのだ。
「と言うわけで…貸していただけないでしょうか!」
頭を下げてお願いする。
「…まぁ別にお前なら貸すのは良いけどよ…何作るんだ?」
「商業ギルドの依頼で『ただの』調理用包丁を5本かな、フォウリオは…欲しかったらソレと同じ方法で特別に作るよ?」
以前打ってプレゼントした剣を指差して言ったら呆れられた。
「いや…一本だけ打つの見せてくれ。ここの貸し賃はそれで良い…」
…と此所に来た経緯をレイグルに説明した。が、どことなく不思議な顔で後ろを振り向かず手だけで指し示し聞かれた。
「何でフォウリオ…ふて寝してんだ?」
特別な打ち方の包丁を見せたら、あの姿になったと教えた。
もちろん包丁をプレゼントした事も…。
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「あぁ…アレ見せちまったのか…」
レイグルは苦笑しつつ、フォウリオに同情した。
同業者じゃない俺でも驚いたのだから 、フォウリオは自分の意識が革命を起こしてしまったんじゃないだろうか?。
だから寝込んでしまった、俺にはそう見えた。
大将は本当に迷い人と分かる。何故ならば、この店には『王国認定鍛治師』のレリーフがあるからだ。
コレがあると大抵の鍛治師は、お抱えで城に連れていかれたりする。勿論名誉な事ではあるが中には変わった者もいて、フォウリオはその一人なのだろう。
もし俺の新しい剣を大将じゃなくフォウリオに頼んでも相当な業物が出来るのは店に並ぶ剣を見れば分かる。
まぁカズキ曰く
『いや、並んでるの全部失敗作でしょ、見抜けないヤツに自分の剣は売らない人だと思うよ』
そう聞いて俺は驚いたが本人に直接聞いたら一瞬驚きながらも『そうだ、失敗作…とまでは言わないが会心の出来ではない』と言われ内心でカズキに驚いた。
そう言うこともあり俺は直感で、やはり大将に頼む事を決めたのだった。
そんな事を考えているとフォウリオはショックから立ち直り?魔法を使い始めた。恐らく包丁の作り方を見て自分の技術に昇華させようと考えているらしい。
片手には鉄の塊を握り目を閉じて鍛治のイメージをしているのだろう。
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カズキの鍛治を真似たら恐らく一本の剣を打つだけで、ぶっ倒れるだろう。こう聞けばアイツの鍛治の仕方…魔法を使って打つ事が普通じゃないと理解できるはずだ。
何度か折り曲げているのも気になるが…
そう鍛治師の…俺の勘が働いた。
魔法ってヤツは余程の事がなければ誰にでも使えるものだ。才能の大小はあれ生活に無くてはならない位に使用されている。
が…魔法で火を使うが結局、薪を使うには理由がある。
魔法はある程度の効率化がされていて必要量の魔力《MP》で発動する事が出来る。
だが魔法を『維持』すると徐々に魔力を消費し減り続けるのだ。そしてかなり燃費が悪いので使う人がいないわけだ。
ドワーフ達が作る剣等は素晴らしい武器が多い…しかしドワーフは種族的な特性として魔法があまり得意ではない。
勿論優れた魔法使いも存在するが魔法の才がある者は鍛治師にはならない。
コレがアイツが打つのを見て分かった魔法剣が出来にくい理由の一つ。
逆にエルフは魔法の適性が高く素晴らしい魔法の使い手が多い。しかし膂力が低めで魔法使いや狩人が多く鍛治師は少ない…と言うよりほぼいない。
そしてドワーフと言う名工が存在した事も、ある意味では災いをしてしまった。
優れた物を『真似』をする方が圧倒的に効率がよい、そして作れないなら買えばいい。
コレが普通だった。
古来よりの鍛治をして良い素材を集め、良い鍛治師が武器を作る。
それを良い冒険者なり騎士が使う。
だがアイツのくれた包丁は魔法剣になっている。打ち方は普通…いや尋常じゃなく早く、打つのは正確だったが環境がオカシイ。
まず火床を使わない。鍛治師と言えば火を作り、それから鉄を打ち始める。
その為にある程度の拠点を持つしかないがアイツは魔法で条件を捩じ伏せている。
非効率な魔法で魔力を素材へ馴染ませながら、更に火や水の魔法を使い魔力を叩き込む。
そして見事なミスリル?製と思われるハンマーにも魔力が籠っているので更に剣に魔力が馴染んでいく。
そして剣の『元』が出来上がった。
この剣として形が出来た所からが鍛冶師の腕の見せ所なのだ、巧く打つ事が出来なかったら折角の素晴らしい『元』がナマクラの剣になってしまう。
鍛冶師である以上は体調や気分で失敗作が出来上がってしまう事だってある。
所が…だ、あいつが作ると良い作品しか出来ていかない…
いや…こう聞くと勘違いする者が出てきそうだから言い直しておこう。
『鍛冶師としての成長途中のために現段階では天井知らず』なのだ。
一本作る度に打ち方を微妙に変える。悪い事のように感じるかもしれないが成長する為には必要不可欠で均一な『商品』を作るなら必要な事はあるのだが…
大抵の安物の剣が鋳造で、溶かした鉄を型に流し込む形で作られる。大量生産には向くがミスリルなどの特殊な素材が混ざると均一に作る事が出来なくなる。
結局は強い剣が欲しいなら俺の様な鍛冶師が剣を打つ。師匠だったドワーフの鍛冶師はこう言っていた。
『もし、お前が打った剣で自分を守れるか?命を預けられるか?妥協が出来るか?そう考えて作れ』
スゴく簡単に言うと
『適当に作ったすぐに壊れる剣をお前は使うか?買うか?使うヤツの気持ちになれ』
分かりにくく言葉が足りない師匠だった。あっ、今も生きてるからね。
でだ、あいつの打ち方を真似して分かった事は『やっぱりマトモじゃない』だった。
まずアイアンインゴットに魔力を流す。インゴット自体に溜まる魔力はそれほどでもないのだが、打ち始めた瞬間に魔力が漏れ出るが、散る花に見えて光が美しい。
漏れ出た魔力を補充するように打つ…打つ…打つ…するとみるみる剣に変わっていく。
思い浮かべた理想の剣に近付いていくのだ。コレは恐らく魔力に俺の想いが乗っている為だと思われる。
ただ…
「なんだコレ!超面白ぇぇぇぇぇえ!」
突如叫んだ俺にレイグルがビクッ!としたが魔力減りすぎや感動と興奮そんな事を気にしていられる状態じゃない。思わず叫ぶほど面白いように鉄だった物が形を変えるのだ。
鍛冶師として、こんなに素晴らしい事はない。
粘土のように…は言いすぎだが本当に面白いように打てる。熟練の鍛冶師が素晴らしい武器を作れるのは無意識にコレをしているのかもしれないと考えられる。
「ただ…魔力欠乏状態が辛すぎるだろコレ…」
マナポーションを置いておいて良かった。飲んで補給しながら打ち続け、やっと一振りの剣が出来上がった。
出来に驚いたと言うと変に聞こえるかもしれないがアイツの剣より出来は良かったのだ。
そして当たり前だがハッとした。鍛冶師としては何倍も打っていて更に技術を覚えることが出来た。王宮御用達なんて俺の鼻っ柱を折ってくれた新たな友に深く感謝したのだった。
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読んでいただきまして、誠にありがとうございます。
m(__)m
書くペースが遅いですが読んで頂けることにいつも感謝しております。




