第6話
「・・・ました。」
私は本を閉じます。今回の本はグ○ンラガンです。銀河をどう表現するかとても悩みましたが、この作品の醍醐味である勢いでなんとかのりきれたと思います。先ほどまで私の隣で大人しく聞いていたエリオ兄様も「おれのどりるはてんをつくどりるだぁ!」とはしゃいでいます。後でギルバードに見せましょう。とりあえず今は、注意しませんと。
「エリオ兄様、その言葉遣いはいけませんよ。」
「えっ、でもシモン達は、」
「あの方々の言葉遣いは対等な仲間達だけだからこそ許されるのです。しかし、ここはお屋敷のお庭。使用人もいます。公爵家の人間としての示しがつきません。」
頭をうつむかせてしょんぼりするエリオ兄様。「ごめんなさい。」と謝ってきます。
「次から気をつければ大丈夫です。」
と慰めるためにぎゅっと抱きしめます。
私がこの世界に転生してから6年が経ちました。地球とは違う世界だと気づいて大泣きしてしまった私ですが、その後泣き疲れて眠ってしまいました。しばらく活力が湧かない日々が続きましたが甲斐甲斐しくお世話するお母様、時間が少しでもあれば顔を出し声をかけて下さるお父様、そして時折やって来て手を握ってくれたエリオ兄様を見て、思いました。
前世に未練はある。でも、今の家族のためにも前に進もうと。
立ち直った私が思い出したのは光り輝くあの魔方陣でした。あれです。「あの日から今さっきまでこれは絶望の象徴だった。だが今はこれが希望に繋がる」というやつです。あの魔方陣を光り輝かせた何かは私の身体から出てきました。つまり魔法が使えるということでは!と思いました。
そう考えると頬が弛むのが押さえきれません。
ただ私はまだ赤ちゃんです。魔法について聞きたくてもしゃべれないから質問ができないし、動けないから本を読みにもいけません。
魔法について学べるのはまだ時間がかかりそうと判断した私はある計画に着手することにしました。
すなわち兄、弟化計画です。
あの時私の手を握るエリオ兄様を見て弟にしたいという思いは絶対に覆らないものになりました。
いや、先に生まれたのが兄だろ!と思うあなた。甘いです。兄と弟の違い、それは小さいときお世話したか、されたかです。小さいときにお世話をすると、この子は守る存在だと刷り込まれます。そして逆にお世話をされると頼りになる存在だと刷り込まれます。つまり兄のお世話をすれば私は頼られる存在、姉になれるはずです。
ではどうやってお世話するかです。ここはやはり知識を教えることでしょう。私にはすでに16年分の下積みがあります。異世界といえど言語が英語とほぼ同じだったので会話はほとんど理解できます。周りの観察を続ければ地球とこの世界のズレは大体修正できるはずです。
なのでとりあえず周りの観察から始めました。観察を始めてすぐに私は貴族の娘に生まれたことがわかり、計画が暗礁にのりかけたり、書斎に魔法関連の本が無かったり、実は私は魔法が使えなかったりといろいろ障害がありました。
魔法については残念でしたがその代わり私には特別な力があるそうなので気にしないことにしました。それよりももう一つの計画です。私は頑張りました。お母様の所作を一生懸命観察して見につけたマナーを教えてあげたり、本を一緒に読んで前世にはなかった知識や道具について二人で勉強したり、いろいろな物語を読み聞かせてあげたりしました。
その結果がこれです。今、私の腕の中で甘えるエリオ兄様です。すごく可愛いです。さすがに呼び方は外聞があるため、変えられませんでしたが、こうやって甘えてくるエリオ兄様を見て私は計画成功と微笑みました。




