第5話
途中、なんちゃって古文があります。あまり意味は気にしなくても話はわかると思います。
パカッパカッ
むぅ、なんだろう、このひどいゆれ。
私は目を開けて周りを見渡します。
何にも見えない・・・
「あら、起きちゃった。」
お母さんの声が頭の上のすぐ近くから聞こえます。
「えっ!起きちゃったの?まずいわよ。私じゃ『ゲプラー』様に声を消してもらうことまでお願いできないわよ。」
もうひとり若い女性の声もします。
「大丈夫よ。この子すごく大人しいもの。お腹空いたときも服を引っ張るぐらいで逆に心配になるくらいなんだから。それよりサラもうちょっと丁寧に馬に乗りなさい。落馬したらそれこそごまかせないわよ」
「はい、はい。わかりましたよ。まったくうるさいんだから。」
どうやら私はお母さんに抱えられてサラさんという人が操る馬に乗っているようです。
サラさんはお母さんの友達でしょうか?すごく仲良さそう。
・・・加那。会いたいなぁ。
あっ、ちょっと涙腺が弛みました。声出しちゃいけないみたいだから我慢しないと。
「周りの様子はどう?」
「ビナー様はこっちを見てる人はいないって仰ってるは。」
「そう。どうやら無事に着きそうねっ、というか着いたわね。」
目の前に大きな塀とそれと不釣り合いな馬が一頭やっと通れるくらいの戸があります。
「裏口から?本当に厳重ね。」
「仕方ないわよ。宮司様ですら、お声を拝聴できない精霊様を宿した子よ。あいつらが知ったら間違いなく狙われるわよ。」
「そう・・・。」
お母さんの抱きしめるが強くなります。
ちょっと苦しいです。私はお母さんの服を引っ張ります。
「あっ、ごめんね。痛かったよね。」
ううん、大丈夫。気にしないで。そんな気持ちを込めてお母さんにぎゅっと抱きつきます。
確かに苦しかったけど、嬉しくもありました。さっきまで私はこのままユリエル様のもとに保護されてもうこの人と一緒にいられないんじゃないかという不安がありました。でもさっきのお母さんから絶対離さないという意思を感じました。
扉を抜けると、そこは神の社でした・・・
へっわからない。あれ?千と○尋のポスターってこんな感じのこと書いてなかったっけ。
伝わらないかぁ。まっいや。私達がやって来たのは神社でした。少し懐かしいです。
この国はもしかして日本と交流があるんでしょうか?
お母さんとサラさんを見ていたら加那のことを思い出してしまってさみしくなりました。
いつか加那に会える?
そんな風に考えてしまいます。
案内された部屋は神主さんがご祈祷をする部屋でした。ただ床に魔方陣のようなが書いてあります。
「ユリエル様、ライラとクララちゃんを連れてきました。」
部屋の中で静かに座っていたユリエル様にサラさんが声をかけます。
「夜分遅くに呼び出してすまんな。」
「いえ、理由はサラに聞きましたので。こちらこそお手数おかけして申し訳ありません。」
「気にするな。さてあまり時間をかけては夜が明けてしまう。さっそく始めるとしよう。」
ユリエル様はそう言ってお母さんから私を受け取ります。部屋の中の真ん中にある白い布と棒で区切られている場所に私を置き陣の外にまでいきます。そしてご祈祷をなさいました。
「世に満ちし精霊に申し奉り候う。このうつくしき子クラウディア、かしこし精霊に祝福をたまはる。されどこの子かくいとけなし。うへまもるると、この子の行く末よにびんなし。しばしおほとのごもられよ。」
・・・
ユリエル様のご祈祷が終わってからどれほどたったでしょう。私の身体、特に左目から熱い何かを感じます。そしてその何かは私の身体の中から外に出ていきました。すると床に書かれた陣が輝き出し、そしてまるで私を包む様に光は陣の中に広がりました。この光は先ほど私の身体の中から出た何かだと感じます。陣に沿って赤や青、白など様々な色に輝くその何かはオーロラの様です。その何かはしばらく輝き続けた後、また私の中に戻った後、消えてしまいました。
「師匠、精霊様は何と仰ってましたか。」
「いや、何も話されなかった。確かにあの子の中からお出になられたが、ただ、我々が信頼に足るか見極めるためだけだった様だ。」
お母さんとユリエル様が何か話しているのが聞こえます。しかし私はさっきの光景が目に焼き付いたままです。
「びえ〜んっ!!」
私は泣き出してしまいました。
お母さんが慌て私のもとにきて私を抱き抱えます。
「よ〜しよ〜し大丈夫よ〜。クララちゃんの中の精霊様はおねんねしただけよ。」
そう言ってお母さんは私をあやします。一生懸命あやすお母さんに私はぎゅっと抱きつきます。
もしかしたらと思っていました。もしかしたらここは地球のどこかなんじゃないかと。でも先ほどの光景がその希望を一蹴しました。ここは地球とは違う世界だと。私の大切な人達がいない世界だと。
ごめんなさい、お父さん。ごめんなさい、お母さん。ごめんなさい、お兄さん。ごめんなさい、加那。先に死んで本当にごめんなさい。大好きだよ。会いたいよ。
私はずっと泣き続けました。




