第17話
急に泣き出した私をユリエル様は抱きしめて、
「よく耐えたのう。遅くなってすまなんだ。」
と頭を撫でてくださいました。
しばらく撫でられているとドグシャッ!と何かが叩きつけられる音がしました。
「ユリエル。」
お祖父様がユリエル様を呼ぶ声がします。
ユリエル様に抱きしめられて周りが見えないのでわかりませんが何かあったのかもしれません。
しかしユリエル様は私の頭をなで続けます。
そんなユリエル様に苛立ってお祖父様が怒鳴りました。
「いつまで撫でている!いい加減私に代われ!治療が出来ないだろうが!」
「まあ、落ち着んかい。男の嫉妬は醜いぞ。」
「何!」
「うらやましいかもしれんが少し落ち着け。そんな殺気を放ちながら近づくんじゃないわい。クララは先程まで怖い思いをしていたんだぞ。」
むっ、とお祖父様の声がした後、深呼吸をする声がします。
どうやらユリエル様は私を宥めるだけでなく私がお祖父様を見て怯えないようにするためにも抱きしめていたのですね。
ユリエル様が私を離してお祖父様の方へ私を差し出します。
お祖父様は痛ましげに私を見た後、私に指先を向け陣を描き始めました。
お祖父様が陣を描いている間手持ちぶさたな私がお祖父様の顔を見ていたら左の頬が腫れていることに気がつきました。
思わずじっと見ていた私の視線に気がついたお祖父様がばつの悪そうな顔をしました。
その態度である推測に至った私はまたでもさっきとは違う意味で泣きだしてしまいました。
「気にするな。」
お祖父様は優しくそう言ってくださいましたが、私の涙は止まりません。
「ごめんなさい、お祖父様。」
おそらくお祖父様は私が誘拐された後お父様にそのことを伝えて殴られたのでしょう。
お父様はお母様の件でお祖父様に反感を持ってました。
それでもお父様がお祖父様を遠ざけようとはしなかったのはお祖父様なりにお父様のことを考えていることがわかっているからでした。
しかし今回の事件でかろうじて繋がっていた二人の縁が切れたかもしれません。
私は泣きながら謝り続けます。
そんな私の様子に困ったような顔をしながらお祖父様は言いました。
「だから、気にしなくていい。それにこんなに辛い思いをした君に言うのは少々複雑だが今回の件はジルベルトと話し合うきっかけにもなった。だからそんな風に泣かないでくれ。」
「・・・そうなのですか?」
「ああ。」
お祖父様のその言葉に私は安堵の息を吐きました。
そんな会話をしているうちにお祖父様が陣を描き終えました。
魔術は込められた魔力の量で上級、中級、下級と分けられます。陣を描く時、指先から放出される魔力はだいたい同じなため級は陣の大きさと複雑さで決まります。
完成した魔方陣は中級魔術〈水薬〉と呼ばれる魔術の陣でした。
陣を描いている魔力が象を変え輝く水になり私の中に染み込み傷ついた私の体を癒します。
その心地よさとお祖父様たちが傍にいるという安堵感についついうとうとしてしまいます。
「クララ、辛いだろうがもう少し頑張ってくれ。まだ敵が残っているんだ。」




