第16話
書き直しました。
ただこのままの状態でいれば殺されるのは間違いないのは確かでしょう。
「お・・・。」
何の打開策も思いつかず、諦めかけた時、記憶の底から声が聞こえてきました。
その声を聞いた瞬間、私は袋の中で必死に暴れだしました。
「ちっ、おとなしくしろ!」
ドゴッ!
私を拐った一人が静かにさせようと蹴飛ばしてきました。
かなり痛いです。
でも私は暴れるのをやめようとはしませんでした。
「・・・て。」
だんだん声がはっきりと聞こえてきます。
「お・・い、・・てて。」
いつも明るく元気だったあの子の弱々しい、でも必死なこの声を聞くたびに心臓が締め付けられるように痛みます。
「お願い、生きてて、くらら。」
・・・本当は覚えていた。体から命がこぼれ落ちるあの感覚も、ただただ私の生存を祈る親友の声も。
でも死んでしまった私にはどうすることも出来ないから心の奥深くに埋めて目をそらし続けてきました。
今頃、みんな心配していると思います。
あの時の加那のように。
だからこそ私は諦める訳にはいきません。
私はひたすら暴れます。
意味なんて無いかもしれません。
でももしかしたら音が洩れるかもしれません。この使徒の魔力の消費を増やせるかもしれません。
何の力も無い私にはみっともなく足掻くしかありません。
今度こそ私は生きて帰るんです。
その思いに突き動かされて私は暴れ続けました。
どれだけ暴れたでしょうか。
静かにさせようと男たちに暴行を受け続けた体の感覚はもうほとんどありませんし、意識を保つのも限界です。
今、意識があるのは先程から感じるようになった左眼が持つ熱のおかげです。
もしかして眼が潰れたのかな?
光が一切通らない袋の中では自分の状態もわかりませんがなんとかまだ暴れることが出来ます。
そうやって暴れていると男たちが慌てているのを感じました。
「これ、見つけられんじゃないか?」
「いやハーミットの力なら問題は無い。が、これ以上目覚められて暴れられてもまずい。少々不安があるが支部に移動するぞ。」
会話の意味はわかりませんが彼らにとって都合の悪いことが起きているようです。
移動ようと私を抱えようとしますが、このチャンスを逃すまいと私も激しく暴れます。
「このっ!」
私があまりにもしつこく暴れたせいか、カチャッと剣を抜く音がしました。
一瞬ビクッと体が硬直しましたが私は暴れるのをやめませんでした。
彼らが私に宿っている精霊様を移すまでは殺されないのはわかっていますし、腕か何かを失ったとしてもこの世界の魔術なら再生可能なこともわかっています。
ただ痛いだけで、耐えられるはずです。
私はこれからくるであろう痛みに耐えるべく目をぎゅっと閉じました。
・・・
あれ?痛みがありません。どうしたんだろうと目をパチクリしていると、誰かに抱えられました。
「っ!」
運ばれてなるものか!と必死に暴れていると抱えている人が宥めるように言いました。
「怖がらんでもええ。儂だ。ユリエルだ。」
あまりに突然のことに私はどうしたらわからず動けなくなりました。
その間に袋を開けようとしているのか頭の上の方で布が擦れる音がします。
そして私の目に光が差し込んできました。
初めは突然の光に何も見えませんでしたがだんだん光に慣れてくると私のすぐそばで心配そうに私を見ているユリエル様、そして背の小さい男とつばぜり合いをしているお祖父様の背中が見えました。
その光景に私は泣きながらユリエル様にしがみつきました。




